16.依頼
「ふぅー」
「ねぇセイル?私にはスバルが変に見え始めて来たのだけれど?」
「奇遇ですね。私もちょうどそう思っていました」
「だから化け物扱いすんなっていってんだろうがこの戦闘狂どもめ!」
「はぁ?清廉されたレディーにそんなこと言うなんてあまりにも酷ではありませんか?」
吸血鬼の王を倒した俺らは迷宮主がいた部屋の中に、サンポート内に入れない理由があるのではないかとくまなく探していた。
「うーん…迷宮主を倒してもあの街に入れないとなると…」
「とりあえず吸血鬼の王の魔石を持って、一度戻りましょう。」
「そういえばさ、さっきのところにあった壁の変な模様ってさスバル君がたまに使う魔法陣に似てなかった?」
「はぁ?セイルあんたあれのどこがスバルの魔法陣と似ているって言うのよ?」
まぁ確かに確認する価値はあるかもしれないからそこまで戻ってみるか…
数分後。例の場所にやってきた俺たちは揃って驚愕とした。
「…なんだこれ…」
その魔法陣の形は俺の転送魔法と転移魔法の魔法陣が重なったような魔法陣があった。
「二つの特徴を持ってるってこと?」
「多分これは転送魔法陣が元からここにあって、それを使って転移魔法陣を動かしているんだと思う」
「そうとしか考えられませんね…人が通った時にだけ発動するのでしょうか?」
「そもそも何でスバルの転送魔法陣がここにあるのよ?あれってスバルオリジナルの魔法じゃないの?」
「多分そのはずだけど…同じ原理で考えた人が他にいるとしか…」
「でもとりあえずこれを壊せばサンポート市内に入れんでしょ?じゃあ早く壊そうよ」
戦闘狂さんは考えが過激ですなぁ
「そういえばスバル。あなたさっきも変なこと考えていたわよね?」
なぜバレる?なぜバレるんだ?!
「…というか魔法陣を壊すのは結構大変だぞ?」
「え?なんで?」
コレだから魔竜剣ばっか振り回している戦闘狂は…
「早く言いなさい。スバル」
「………魔法陣っていうものはな、結構複雑な術式が施されていてお前らは俺と一緒にいるからわからんだろうが相当貴重なんだぞ?魔法陣作れる人って。それで、その魔法陣を壊すためには術式の穴を見つけてそれを広げることで壊すしかないんだ。…それか魔法陣そのものをぶっ飛ばすかだな」
「ならぶっ飛ばしましょうよ!スバルの火力ならなんてことないでしょ?」
「だからお前は……いいか?今ここで俺が魔法陣を壊すレベルの爆発魔法を使ってみろ。遺跡ごと俺らはぺちゃんこだぜ?だから少なくとも時間が結構かかるってことなんだよ。」
「はぁ仕方ないわ。さっさと終わらせてね!」
…なんで俺は召使みたいになってるんだ?
あの時助けたのは俺だった気がするんだが…
もしかして戦闘狂だから脳筋になって来たとかか?!
「……スバル。早くやりなさい」
冷ややかなマーチェリット様からのコメントをいただきました。
頑張ってみます……
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「やっっと終わったーってあれ二人とも寝てる?」
俺が終わったことに誰も返事がせず、逆にいびきが聞こえたので俺は二人が寝ていると思った。
果たして振り返ると、そこには可愛らしい寝顔をした二人の可憐な少女がいた。
(今更だけどこの世界じゃまだ12歳だからなぁ。二人には無理をさせて来たかなぁ?)
今度労わってやらないとな。もしかしたら久しぶりに魔竜剣で襲われるかもしれないし。
「…むぅスバルぅ変なこと考えてんじゃないわよぅ」
寝言でも俺を罵るって逆にすごいな!尊敬に値するわ!
…さて俺も疲れたから防御魔法:エリアを使って寝ますか。
明日にはサンポート市内に入れたらいいな……
そう思って俺は眠りに落ちた。
「………ス……!はや…………バ…!」
「早くお………………ス…ル……!」
「早く起きてスバル!」
「ふぇ?」
俺はマーチェとセイルに叩き起こされた。
「ったく。人がいい夢を見てるってのに……」
「それどころじゃないわよスバル!周りをみて!」
「なんだ……って、は?」
ガンガンガンガンッ
防御魔法をひしめく魔物たちが叩いている。
…コレは非常にやばい。
「マーチェ!セイル!その場から動くな!今から転移魔法で移動する!」
「ええ!そうしてもらわないと私たちが死ぬからね!」
ガンガンガンガンッ
防御魔法の耐久値がどんどん減っていく。
なんだ?確か20000ぐらいに設定したはずで、魔物の攻撃力はあの狼の王でさえ100もないんだぞ?
「今すぐ飛ぶ!気をつけろよ!もしかしたらバリアが壊れるかもしれん!」
ヒュンッ
最後にバリアが割れる音がしたのを後に俺たちは遺跡の外へ出た。
「危なかったねぇ」
「そうですねぇでもあんなところで瞬時に転移魔法ができるなんてスバル君ぐらいじゃないですか?」
おやおや。セイルさんそんなに褒めてもらえると嬉しいですなぁ
こちらのやりがいも感じるもんですわ。
戦闘狂で脳筋の誰かさんとは違ってね。
「……スバル。殺すわよ」
やばい。これはマジギレだ。
本当に殺されるかもしれない。
「だから!二人ともやめてっていってるでしょ!」
おお。これぞ神の救いか…
セイルさん。そんなに施しを受けると僕惚れちゃうよ?
「はいはい。それじゃあサンポートの街に入れるかどうか試してみましょう。」
「そうだな。じゃああれを召喚するぞ」
俺のいうアレとは馬車のことである。
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「ほわー!本当に通れたよ!マーチェ!」
「そうだね。やっぱりあの魔法陣が関係していたのかしら」
「それにしてもなんでセイルはあそこで気づいたんだ?」
俺らはいつもループしていたところを抜け出し、サンポート市内へと歩を進めた。
「身分証明書の提示をお願いしまーす」
「ああ、はいこれです」
「ありがとうございまーす」
「お勤めご苦労様です」
市内へ入るための守衛さんに身分証明書を出しながら進んでいった。
「そういえばさ、この馬車どうする?一応どこにおいても召喚魔法と転送魔法でなんとかなるけど」
「普通に馬車小屋にでもあづけたらどうですか?」
「馬車小屋?なんだそれ」
「え?スバル君知らないんですか?」
「馬車小屋っていうのは大体大きい街にはよくあるやつで、貴族とか商人とかのお金持ちが一旦馬車を預けておく場所よ」
「そうか…なら普通に放置でいいかな」
「そうね…お金も嵩張るし海の向こうに渡ったら召喚魔法で呼び出すってのもあると思うし。」
「それじゃあ……元気にしてろよ」
ヒヒィィンと鳴き声で返事をしてくれる。
俺は転送魔法で遠くの森の中へ馬車を飛ばした。
「さて、とりあえず冒険者ギルドにでもいってみるか?」
「そうだね。そうしよう」
「一応これはスバル君の呪術のためだしね」
そういって俺たちは冒険者ギルドへと向かった。
当然まだ成人にもなっていない12かそこらの子供が冒険者ギルドに入ると稀有な目でみられる。
「おいおい、坊っちゃんたちここは子供が来るとこじゃあないぜ」
「そうだそうだ。家であったかく勉強でもしてな」
そんな野次を飛ばしてくる人たちを無視し、俺たちはギルドの受付のところまで来た。
「すみません。僕たちのパーティーSランクに昇格したいんですけど」
「はいはい。パーティーの昇格ですね。ってSランク?!」
「はい。そうですけど?」
「あ…あのね子供達。Sランクっていうのはどうすればなれるか知ってる?」
「えっと…」
「AランクのパーティーがSランク相当の依頼をこなすと昇格でしょ。それぐらい覚えときなさいスバル」
はい…覚えときます……
「そう。そこのお嬢ちゃんの言うとおりSランク相当の依頼をこなす必要があるし、そもそも君たちはAランクなのかい?」
「そりゃAランクですよほら。マーチェ、セイル。君たちも出してみろよ」
「ええ、それでは拝見します…って本当に?!」
「本当にAランクなのか…」少しだけ周りのざわめきが大きくなる。
「それでSランク相当の依頼をこなしたと言う証拠は?」
「ああ、これですよ。「帰らずの森」の迷宮の迷宮主の魔石です」
「え?!帰らずの森の迷宮の迷宮主の魔石?!」
まじか…とざわめきが起きる。
イタズラじゃねぇの?と疑いの目をかけられる。
まぁ12かそこらの子供がたった三人でここら辺一帯の一番難しい迷宮から生きて帰り、さらにベテランSランクパーティでも倒せなかった迷宮主を倒したのだ。疑いの目をかけらることは普通だろう。
「ち…ちょっと待ってくださいね。鑑定して来ますので」
「ねぇスバル今やるのは不味かったんじゃないの?」
「うん。俺もそう思う」
「「はぁ…」」
「自覚症状ありなら救いようがないね」
「そうね。少しは助けてやろうと思ったけど…」
こいつら人のことをなんだと思ってるんだ
「すいません。確かにこれは「帰らずの森」の遺跡の迷宮主の魔石ですね…しかし…」
まだ何かと疑ってくる。
そんなにおかしいことか?迷宮主とはいえ魔物だぞ?
「……スバル。あんたは普通におかしいから」
あれぇ?なんでマーチェのことを考えてないのに思考が読めるんですか?
「それなら姉さん!あの依頼をやってもらいましょうよ!」
「あの依頼ですか…確かにこの子達と技量を測るにはちょうどいいですね」
ギルド内にいたおじさんたちから声がかかる。
「あの依頼?それを受ければSランクになれるんですか?」
「…えぇ、まぁ一応ね。ただSランクの依頼よ?」
「ならやります。それをやれば昇格できるんでしょ?その依頼見せてくださいよ」
「ち…ちょっとスバル。何考えてんのよ…」
戦闘狂さんにはちょうどいいんじゃないか?
魔物討伐とかだったらマーチェは嬉しそうだな。
「はい。これですね」
「ふーん」
「なるほどねぇ」
Sランクの依頼とはやはり魔物の討伐依頼だった。
2話を連結しました。
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モチベにつながります。




