14.遺跡
「っ!イテッ」
「あれ?スバル?」
どうやら遺跡内の転移魔法陣が作動したみたいだ。
そして俺は上から降ってきた。
上を見ると天井が見えないくらい高いところだ。
「仕方ない。転移魔法と転送魔法でさっきのところに戻るか」
「うん。それが一番いいと思う。」
「よし。それじゃあーー」
「キャアアァァァァ!」
「「?!」」
空からセイルが降ってきた。
きっと一人になったあと追いかけようとして俺たちのところに来たんだろう。
でももし罠とかだったら全員ここで死ぬところだったんだぞ?
結構危なかったな…
「あ…ああセイル大丈夫か?」
「え?ああ、スバル君ありがとう。大丈夫だよ」
「それにしても全員こっちにきちゃったか…」
「あれ?なんかダメだった?」
「いや、ダメじゃないさ。ちょうどさっきのところに戻ろうとしていたしね。もしもうちょっとだけ俺の魔法の発動が早かったらセイルは一人でここに取り残されていたんだよ」
それにしても…
こんな罠があるなんて迷宮みたいだな!
「これは「迷宮」でしょうか?」
うおい?!今さらっと変な言葉が聞こえたぞ?!
「そうね。これだけの罠があるなら「迷宮」でもおかしくわないわね」
まじか?!そんな概念あったのかよ?!
学ばなきゃいけないことはたくさんあるなぁ…
というかそんな場合じゃなくて。
「それで?どうする?」
「どうするって何を?」
「さっきのところに戻ってみるか、ここからさらに奥に行くかの話だよ。幸いあっちには道があるようだし」
そう言って指差した方には人が一人通れるような狭い通路があった。
「そうねぇ」
「私はどっちでもいいけどどうする?セイル。」
「わ…私はスバル君が行きたいところでいいです…!」
「そっか。じゃあこっちの狭い通路通ることになるけどいい?」
「んー…ま、いいんじゃない?」
「わかった。じゃあこっちについて来て」
そうって俺たちは細い通路に入っていった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
「はえー」
数分後。狭い通路から抜け出た俺たちは、先ほどの通路より少し大きい通路を歩いていた。
「なんかたくさん模様あるねぇ」
「そうだね」
通路の壁には、たくさんの模様が描かれていた。
「!おーい二人とも。来たぞ」
「本当にいるんだね…」
暗闇の中から顔を出したのは狼の魔物だった。
「なんでこんなところにいるんだろうね」
「奥に魔族がいるとかか?」
そんな会話をしながら狼に近づいていく。
狼は自分を恐れずに近づいてくることに恐怖を覚え後退りし始めた。
「自分で喧嘩売っときながら逃げるってどうなのよ…」
マーチェがため息をつく。
仕方ないだろう?!目の前にいるのはかの戦闘狂で有名なマーチェさんだぞ?!
「……スバル。あとで覚えておきなさい」
気づかれただと?!なぜ気づく?!
「あ、あはは……」
「ふんっ」
ヒュンッ
はは……また一撃か。これからは逆らわないようにしようかな…
「ところでコレどこまでいくの?」
「うーん…まぁ一応行き止まりがあるところまで行こうか。どうせ街には入れなさそうだし」
「…え……ちょっと二人とも」
目の前には大きな扉があった。
「なんだこれ?」
「これもしかして「迷宮主」の場所ですか?」
へぇ。そんな設定もあったのか。にしても迷宮主というとゴーレムとか火を吹く鳥とかか?
とりあえず入ってみるか。
ギギギギギギギギギギギギーッ
重い音がしてゆっくりと扉があく。
「「「!」」」
俺たちは驚愕の顔になっていたと思う。
だって、誰も押していなかったから。
「私の大切な睡眠時間を削るとはいい度胸ですね」
中から女の人の声が聞こえる。
いや、女の人の声ではない。
女の人の声をした何かだ。
「意思疎通が図れそうな迷宮主でよかったよ」
「ちょスバル?!今そんな悠長なこと考えてる暇じゃないでしょ?!」
「え?なんでだ?」
「今思い出したけどここは確か「帰らずの森」でしょ?!そこの迷宮って言ったらSランク依頼じゃない!!」
「そうか?そこまで強そうには見えないけどなコレ。それに俺たち魔物の狩りすぎで確かこの前AランクからSランクにならないかって誘われた気がするんだけど」
「はぁ…コレだから戦闘狂は…」
いやいや!!勘違いしてもらっちゃ困るんだけど戦闘狂なのは君たちだからね?!
「じゃあ私たちは今回傍観するわ。安心して、死体ぐらいは引き取ってあげるから」
「は?なんで俺が死ぬ前提なんだ?」
「そりゃ迷宮王と言ったら今まで数々のベテラン冒険者を殺してきたって言われてるじゃん。ほらそこにも」
そう言ってマーチェが指差したそこには死体が四つ転がっていた。
「あの服から予想するに多分この人たちは王国で一番有名だったSランクパーティー「スターリード」でしょうね」
歴代最強の強さを誇るって言っていたけど、普通に弱そうじゃね?
「わかったよ。じゃあ俺だけで倒す。マーチェもセイルも手ぇ出すなよ?」
「はいはい。どうせ手出したところだって足引っ張りになるし最悪全滅するからね。頑張って来てちょうだい」
さて。それじゃあ中に入るか。
「あら。何を相談していたのかしらねぇ?」
「別に。相談していただけだよ……お前を倒す方法をね」
「結構自信があるみたいだけど勝てるかしらね?」
そう言って女の声を発している何かと対峙した。
「な…お前…吸血鬼だったのか…」
「あら。そんな下等劣種と比べないでもらえます?」
「じゃあお前は…」
「「吸血鬼の王」ですわ」
へぇ、なんちゃらロードってのと戦うのは久しぶりだが…
どう考えても男の格好をしている人…吸血鬼が女の声を出しているとか違和感しかないんだけど…
「「吸血鬼の王」か。………気持ち悪いな」
「なんですって?!アナタその言葉を発したことを後悔なさい!」
そう言って自作の魔剣を構える。
その時、突然自分のことが重く感じた。
上から圧力がかかっているみたいだ…
「ぐっ」
「おほほほ!重力魔法で苦しめられなさいな!」
重力魔法?そうだったのか!
「なるほど…重力魔法だったか…」
「な?!なんで立ち上がれるのよ?!」
理由は簡単。俺が自分自身に対して反重力魔法をかけたからだ。
「吸血鬼の王」の重力魔法を俺の反重力魔法で相殺し、今は普通に動けるようになった。
「さて、お遊びはコレぐらいにしようかな?」
こうして俺と吸血鬼の王との戦いが始まった。
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