12.旅の始まり
「スバル。次の街まであとどれくらい?」
馬車に揺られながら俺たちは話す。
旅を始めてからかれこれ一ヶ月近く経つ。
もうすでにこれまで幾つかの街に滞在し転移魔法の印をつけていた。
最も、この旅の目的は俺の呪力の解明なんだがな…
「そうだな…多分あと三日ってとこだな。」
「そっか」
ポトポト…
「やば...雨が降り始めたよ。どうする?」
「そうだな…どっかに洞窟があれば良いんだが」
「ねえマーチェ、スバル君。あっちに洞窟があるよ」
「「本当?!」」
「わわ…うん。受動探索魔法の地形版であっちに洞窟があることがわかったから」
「よし。じゃあ今日はそこで野宿だな」
「わかった。」
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「ふぅこんなところに洞窟があってよかったねぇ」
「そうだな。って言うかよく見つけられたなこんな洞窟」
俺たちは乾いた木を使って焚き火をしながら話していた。
これからの事と行き先だ。
「もしかしたらセイルの受動探索魔法の範囲は俺よりも広いかもな」
「そ…そんなことないよ」
「そうだよスバル。あんたは規格外すぎるんだからセイルを比べちゃダメだよ。」
「いやマーチェ。それはそれで困るんだけど…」
下手なフォローは逆に傷つくってな!
「さてこれからどうするか?」
「そうだね…この国は島国だから別の国に行くには海を渡る必要があるからね…」
「じゃあ港町に行くか。一番隣国との国境に近い港ってどこだ?」
「んーと、ここだねセットポートってとこ」
「そこまでは何日かかるかな?」
「まぁ道中の街に泊まるとしたら二ヶ月ぐらいかな…」
「意外と遠いんだねセットポート…」
二ヶ月か…短縮する方法とかないかな?
「そうそう。ここのサンポートっていう港からなら確か高速船が出ていたはずだよ」
この世界でいう高速船とは、海上を走るものではなく、地上を走るいわば新幹線みたいなものだ。
風魔法と雷魔法の混合によって高速で移動できるらしい。
「ちなみにサンポートまではどれくらい?」
「サンポートまでだったらここから一週間ぐらいだね。そこから高速船に乗って行けば二週間でセットポートに行けるはず」
「…よし。じゃあそのプランで行こう!」
「…でもこれだと交通費がばかにならないよ?高速船で片道切符金貨一枚だからね」
「あれ?セイルさん。君は僕たちのお金の残高を知らないんですか?」
「え?でも今は持ってないよね?」
「もうセイルったら。冒険者ギルドに預けたお金は別の冒険者ギルドから引き出せるんだよ?」
「はっ!うっかり忘れてた!」
「ははっ。そういうところがマーチェと違って可愛いよなセイルって」
「……スバル。表へ出なさい。」
ヒェッ マーチェリット様の逆鱗に触れたようだ。おっかねえ
「そういうところが可愛くないんだよなぁ」
ブチっ
「ス・バ・ル・く・ん?表に出ようね?」
やばい。口は笑ってるけど目が笑ってない!
こういう時が一番やばい!
「ヒイィィィすみませんでしたぁぁ!!」
「許しませんよ?ス・バ・ル・く・ん?」
ああ終わった。今までありがとうじいちゃん、ばあちゃん、セイル………
「ほら二人とも。喧嘩しないで計画を立てるよ!」
セイルに一喝されて俺たちはしゅんとなっている。
「セイルがいいなら別にいいけど…」
おおおっーありがとうセイル!このご恩は絶対に…
「でもスバル君も変なことしちゃダメだよ?マーチェだって女の子なんだから」
あの戦闘狂がか?ありえんありえん
「……スバル変なこと考えてるね…」
流石に何年も一緒にいるとわかるか。
というか結構前からこいつこんな感じだった気がするんだけど…
「で。じゃあこのままサンポートまで直行でいいの?」
「うんいいよ。サンポートって結構大きな街だよね?」
「うん。国の玄関であるセットポートよりかじゃないけど結構賑わってるし大きい街だよ。」
「じゃあ俺の呪力も何かわかるのかな?」
「うん?スバル君。呪力って何?」
「あれ?セイルには話してなかったっけ?」
「呪力はねぇーー」
俺はまだ何も言ってないのに俺の話を聞いたことがあるマーチェが喋り始めた。
もちろん、「呪力暴走」のこともしっかりと言っておく。
「へぇそんなことが。でも確かにスバル君ならあり得そうな話ですね」
うおい?!それってどういう意味だセイル?!
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その頃サンムーン市内では…
「そうかいそうかい。もう行ったか。なら追いかけないよ」
「にしても勘がいいのか、たまたまなのか、全部わかっての行動なのかわからないな」
「そうだねぇ、じゃあまた戻ってきた時に厳しく鍛えてやるとでもするかねえ」
「もし帰ってくる時に彼女がいたりしたらどうするんじゃ?」
「な?!彼女?そんなものスバルにはいらないね!」
「まぁそういうと思ってたんじゃが…」
おかしな会話を繰り広げる有名人の姿があった。
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