十四話② イチャイチャを期待する幼馴染(涼香視点)
何ヶ月ぶりだろこれ……いや……ほんとすいません……(次をいつ投稿するとは言っていない)
──────今朝のニュースの天気予報では、今日の天気は晴れだった。そう、"今朝の”ニュースではそうだったのだ。本日最後の授業が終わり、部活のない生徒はみんな帰るぞー、となった時、突然土砂降りの雨が降り出し、大半が昇降口で立ち尽くすことになった。私は偶然置き傘をしていたので数少ない生存者側に回れたけど、博幸絶対傘持ってないよな…………そうだ! 私の傘に入れて、博幸の家まで送っていけば良いんだ! 決して相合傘という限られた空間で、2人の距離(物理)を自然に縮めたいとか、濡れちゃったから家でシャワー浴びてくとか、そんなのに期待してるわけじゃ……あれ? 後者はともかく、前者は割と期待してるか……?
「何でこんな急に土砂降りになるかなぁ……」
と、と彼のことを考えていたら、まさかの本人登場って感じのイベント発生だ。
「天気予報だとバリバリ晴れだったのにな……」
……って黒岩くん!?!? 思わず二度見しちゃった……えっ……いつからいたの……? 逆にちょっと怖い……
「いたのか練太郎!」
普通ならそういう反応するよね……
「いやいるわ。思いっきりいるわ。どれくらいいたかと言うとだな…………ごめんいい例えがなかったわ」
「冗談だから安心しろって」
えっ……まさかあれを感知してた……? 博幸……一体何者……? もしや私と同じような機能を持っているとでも言うの!?
「なんだびっくりした………………悪いちょっと着信。 ……へいもしもし……え? 今からかよ……やだよ……今から帰るとこなんだしさ……寝てたんだから義務? うーん……なぁ博幸、なんか呼ばれてるんだけど行っていいか?」
義務……? ちょっとだけ聞こえたけど、一体何だろう……
「おう。行ってら。楽しんでこいよー」
「いや仕事なんだけど……」
「お前仕事なんてやってたか?」
「寝てたら日直押し付けられた」
黒岩くんが日直……あっ! そういえばそんなこと言われてたっけ……というか黒岩くん電話こなかったらスルーして帰るつもりだったの……?
「あ、そういやそんなこともあったな……すっかり忘れてた……」
「てことで行ってくる」
「了解」
さて、そろそろ行くか……
「博幸、もしかして傘ないの?」
私は意を決して博幸に話しかけた。
「……はぁ……」
この溜息は何の意図があって……? いつもの感じだと「近寄るな」みたいなアピールだろうけど……それとも単に本心が漏れただけ……? もしくは雨に対して……? てかこの感じだと三分の二で嫌われていることを自覚してることになるけど……
「良かったら……その……入ってく……?」
「大丈夫」
断られた……いやでも博幸にメリットしかない選択なのに……あ、もしかしてゲリラ豪雨だと思ってるのかな……それなら……
「えっ……? で、でも……ほら、この雨だし、2時間くらい降るらしいよ?」
はいドーン! この天気予報アプリによると、まだまだしばらく雨は降り続けるらしいし……二時間だよ? いくら嫌だとしても、流石にそんな待つわけないよね……? よし、勝っt……
「走って帰る」
……………………え?
「えっ……ちょ……待っt……」
私が全てを言い終わる前に、博幸は豪雨の中に飛び込んでいった。
──────つまんな……まさか博幸が一日いないだけでこんなにも退屈になるとは……
「……どうしたの? 朝からいつもの三十分の一くらいしか元気ないみたいだけど……」
「あれ? 普段の私ってそんな元気だっけ? ていうか麗奈ぁ……あのね……昨日突然大雨が降ったでしょ?」
「あぁ、降ったわね……折りたたみ傘だと普通の傘に比べて小さいからちょっと濡れちゃった……」
「博幸が傘持ってなくて困ってたから一緒に傘入っていこうとしたんだけど、なんか突然走っていっちゃって……今日来てないし……これ絶対私のせいで風邪ひいたじゃん……」
「うーん…………」
麗奈は何やら考え込んでいた。
「ま、まぁ……自分が悪いと思ってるならお見舞いに行ったらいいんじゃない? あー、でももし行くとしたら、相手が病人ってこと忘れないでよ? 変に騒いだらもっと嫌われちゃうからね?」
「……うん。ありがと……」
──────そんなこんなで、私は麗奈の助言を胸に、博幸の家に侵ny……じゃなくて……お邪魔することにした。ちゃんとお義母さんに許可はとっているので大丈夫……かな?
「博幸ー、入っていいー?」
もう入ってるけど一応聞いておく。
「もう入ってんだろ不法侵入者。とっとと帰れ」
つ、冷たい……風邪ひいてるから普通なら少しは警戒解かない? いや、逆に風邪ひいてるからこそか……?
「ふ……不法侵入者……? ちゃんとお義母さんに許可とったわよ……? え? 連絡いってないの……?
「看病は別にいい。もう治った。(大嘘)だからお前に用はない。とっとと帰れ。あと合鍵返せ」
「……治ったんならいいけど……あ、あと……」
もしもの時の為に風邪薬とスポーツドリンクを買ってきたのだ。少しは喜んで貰えるかな……
「はい、良かったらどうぞ」
私はそれを手渡した。若干嫌そうな目はしてたけど、まぁ…………貰ってくれたのでOKだ。
「お義母さんから聞いたけど、風邪薬切らしてるらしいから買ってきたわ。あと、風邪の時は汗をかいてるからスポーツドリンク飲んだ方がいいって聞いて……」
「はいはいどうもどうも。で、合鍵は?」
あ、やっぱそれが目的なのね……でも一応貰ってくれるあたりやっぱ優しい……
「……はい」
「んじゃとっとと帰れ。ご苦労さん」
「……分かった」
まだできることはあったんじゃないか……そう思いながら、私はゆっくりと外に出た。やっぱりもう少し様子を見ようと思った時、すぐ後ろで鍵のかかる音がした。
「……やっぱ、ダメか……」
───────次の日も博幸は休みだった。やっぱり、「治った」って言ってたのは嘘だったんだな……結局、私はあの契約を結んだとはいえ、彼に信用して貰えていないのには変わりないのだ。
他人に嘘をつく目的としては、①真実を知られたくない何かがある ②その場しのぎ ③サプライズ ④相手への遠回しな攻撃……大体の場合、これらが挙げられる。今回の場合は間違いなく②だろう。まぁ恐らく「付きまとってくる私がウザくて仕方ないから『治った』とでも言わないと帰らないだろう」と考えたからそういうことを言ったんだろうな…………よし、最後にお見舞いに行って、これからはもう距離を置こう。
───────これで博幸と会うのはやめにする。だからこそ、最後くらい……ちょっとでも恋人っぽいことをしたい。
「博幸! 治ったって言ってたじゃん!」
数秒前までの想定とは全く違った展開になって……いや、してしまった…………辛そうにしている彼の姿を見て、無意識に一番最初に出てきた言葉がこれだった。うるさくしてはいけないと分かっていたはずなのに、自分でも何故叫んでしまったのか分からない。
「うるっせーな……病人の傍で騒ぐなよアホ」
彼は心底イラついたような表情でこう告げた。辛くて寝ているところなのに、いきなり大声で叫ばれたのだ。そう言われても仕方ない。
「あ、ご、ごめん……」
「……何だよ、さっきからジロジロ見てきてるけど。言いたいことあるんならとっとと言って帰れ」
あ、やっぱり優しい……ちゃんと話聞いてくれるんだ……
「その……おかゆとか食べる?」
勇気を出して聞いてみた。一応台所と少々の食材の使用許可は得ている。
「いらねーよ。お前の手料r……」
話を遮るように彼のお腹が鳴った。どうやらお腹は空いているらしい。
「ちょっと待ってて。すぐ何か作るから」
よし、腕によりをかけて作らなきゃ……あわよくば気に入ってくれれば……って、もう会わないから関係ないか……
──────できた! とりあえず病人にはおかゆって言うし……あとリンゴも剥いておこう。消化がいいらしいけどどうなんだろ……
少し待たせちゃったかな……
「毒とか入ってねーだろうな……」
えぇ……何でそんなの聞くの……
「入ってないわよ! はい、あーん」
勢いに任せて行けたりしないk……
「自分で食える」
すごいキッパリと拒絶された……
「…………」
スプーンを口に入れた瞬間、何種類かの感情が入り混じったような複雑な表情をされた。
「え、もしかして……美味しくなかった……?」
「うま……いわけねーだろ普通だよ」
よかった……少なくとも"まずい”とは言われなかったし……うん……
「そ、そう……ねぇ、お風呂って入った?」
聞いた話によると入った方がいいらしいけど……まぁ本人の体調次第かな……
「入ったよ」
……すごい汗かいてる。体温高くなってるとどうしてもそうなるのかな? 放っておくと冷えちゃうから拭かないとな……
「そ、そう……まぁでも汗すごいし体拭いたら……?」
「自分でやる」
……強いな。まぁそれなら少し雑用でも……
「お湯とか持ってくるよ……」
「自分でやる」
いや強いな……
「あんまり無理はしない方が……」
「してない。大丈夫だって言ってんだろ」
「他に何かできることは……」
「ない。帰れ」
「……課題のプリント、ここに置いとくね」
「……はいはいどうもどうも」
───────博幸……さよなら。いい人見つけてね……
良いなー、と感じたら、コメントや星での評価よろしくお願いします。




