第十二話② 契約を結んだ幼馴染(博幸視点)
皆さんお久しぶりです。ブクマが1400突破したみたいですね(今更)
1400名(実際もっといるかもだけど)の読者の皆様に感謝を申し上げます……
深夜テンションで少しずつ書いてたやつなんで矛盾点あるかもです。
──────なんだか最近、あいつが大人しい。非常に喜ばしいことであり、俺以外の人にしてみれば宝くじが当たるのと同じくらいの幸運なのだが、なんだかまるで"嵐の前の静けさ”と言うやつみたいだ。静かで落ち着いているのはいい事のはずなのに、普段とあまりにも変化が大きすぎて逆に不安になる。ココ最近は、角を曲がったら待ち伏せていないか、突然腕を掴まれて引っ張られないかなどと怯えている。俺ってこんな臆病だったっけな……
「竹山くんおはよ〜」
「おはよ」
当初は戸惑っていたが、今では彼女との挨拶もすっかり日課となった。と言っても、挨拶を交わすようになってからまだそんなに経っていないが……
今日も授業はいつも通り退屈だ。わけのわからない数式と睨み合い、古文を訳して漢字を覚える。他言語との壁を感じつつ、昔の知りもしない偉人の功績を頭に詰め込み、紛らわしい物質を区別する。
……現代文と英語はこれから生きていく上で必要不可欠だと思う。古文も仮名遣い程度は知っておいた方がいいとは思う。理科や公民もニュースのことが分かるようになるし、歴史は日本史くらいは大まかに分かっていたらいいと思う。それによって愛国心も芽生えそうだし。知らんけど。
……だが数学、テメーはダメだ。どうにかお前を必死に理解しようとしてもちんぷんかんぷんだし、仮に分かったとしても将来これっぽっちも役立ちそうにない。てことで数学は嫌いです。
数学との和解を諦め、次の授業科目を確認するために前を見ると、何故かやつが気になってしまった。その原因はすぐに分かった。いつもはペンをガリガリ動かして一心不乱に問題を解いている彼女がぼーっとしているのだ。
まさにガリ勉と呼ぶにふさわしかったあの様子はどこに行ったのやら……俺と同じように前を向いて、時々思い出したかのようにペンを取るが、それが文字を綴ることはなく、机にゆっくりと置かれる。どうやら周りの何人かもこの様子に驚きを隠せていない。だが、俺はあんなやつの観察に費やす時間がもったいないと気づき、速攻で数式との睨めっこに戻る。あー、最後の授業が体育とかだる……食事の直後じゃないだけまだマシだけどさ……
「……さて、最後にこの前の試験の結果返却するぞー」
うっそマジかよ……うちの教師陣仕事熱心過ぎませんか?
「藍沢ー、今川ー、内坂ー、江野ー、大川ー、黒岩ー」
「おい練太郎、起きろ。テスト返却だ」
「マジかよだりーな」
「てか呼ばれてるからはよ行け」
「おう」
しばらくすると俺も呼ばれた。結果を受け取ると、急に心臓が高鳴り始める。そういや忘れてたけどこれからの生活がこの成績にかかってるんだよな……
結果を見てみると、なんと100番以内に入れていた。やったぜ。これで俺のゲームライフは守られた……!
──────それからなんやかんやあって、最後の授業である体育の時間が終わり、教室に戻ろうとしたその時……誰だっけこいつ……とりあえず体育教師Aでいいや……に呼び止められた。
「竹山と大川は用具の片付けだ。他の生徒は教室に戻ってていいぞ」
「え?どうしてですか?」
「この役割が当番制だからだ。もうお前ら以外皆やってるぞ」
マジかよ(絶望) しかもなんでよりによってあいつと一緒なんだ……
とりあえずあいつがやってきたんで不満をぶつける。
「何でお前と……」
「当番制なんだから仕方ないじゃない」
正論で返してきやがったよこいつ……つかこいつ正面から見たら死にかけてる金魚みたいだな。昨日までは顔面だけは美少女……と言えなくもない感じだったが、今では連帯保証人になったせいで多額の借金を背負って絶望してる人にしか見えない……
「とっとと終わらせるか」
「もう今日は授業ないんだしゆっくりでもいいでしょ」
正直言うと、狭くてこいつと同じ空間に長居したくはなかったが、俺も疲れていたし、渋々提案に乗ることにした。
「まぁそっか。お前疲れてるみたいだし」
おっとついいつもの癖が……
「……そんなことないよ」
「じゃあそのクマは? 今日の授業もぼーっとしててお前らしくもない……倒れられたら俺が保健室まで運ばなきゃいけなくて面倒くさいから休んでろ」
まぁ貧血だと長い間立ってると倒れるからね。うん。(経験者)夜更かしも度を過ぎると危険だ。二人しかいないこの状況だと必然的に俺が運ぶことになってしまう……それだけはどうしても避けたい。
「……ありがと」
「俺もありがとな」
そういや礼を言ってなかったと思い出した。過去のこともあるが、それとこれとは話が別だ。
「え?」
「……テストの特訓。お前がいなきゃ100番以内なんて取れなかっただろうし、俺が"あんな男”とか言われた時に怒ってくれたろ?」
「別にそんなの感謝されるような事じゃ……!!」
さて、そろそろ本題に入るか……
「……まぁ、それとこれとは話が別だが」
「……」
「……なかなか聞けなかったが……中一の"あの事”覚えてるか?」
「……うん」
「……何であんなこと言った?」
「……ごめんなさい! こんなの……ただの下手な言い訳にしか聞こえないだろうけど…………私、博幸が好きだったの……それで……照れ隠し……で……」
……は? え? ちょっ……えぇ? え? いきなりあれ? これが俗に言う逆告白ってやつ? まさか初めて告られる相手がこいつとはな……いや待て、嘘告のパターンを忘れるな! いやなんでそんなに頬を赤らめてモジモジしてるんだよ可愛いかよ……演技力たけーなこいつ……演劇部じゃなかったよな? てかさっきまであったクマどこいったお前……
「はぁ? お前は一体何言ってんだ?」
「……理解されなくて当然だよね……でも、これは嘘でもなんでもない、私の本当の気持ち。 ……どんな制裁でも受けます。いくら殴ってくれても構わないし、博幸が本当に望んでることだって言うんなら……死ぬ」
「……嘘じゃないな?」
「勿論です」
わーおメンタル強い……真面目な顔で堂々と嘘つきやがったよこいつ……
「じゃ、俺のどんなとこが好きなんだよ。本当なら言えるはずだろ?」
「昔から良い所も悪い所も沢山見てきたから分かる。 ……誰にでも優しいとこ。一緒にいると安心するとこ。たとえ誰であっても、本当に困ってる時なら手を差し伸べてあげられるとこ。失敗しても、傷ついても、博幸と一緒に居れば立ち直れた。大きな手も、高い身長も、楽しそうな笑顔も、全部……全部大好き」
……これ本当に演技か……? だとしたら今まで何人も手玉にとってきたってことかよ許せねーなこいつ……男子のピュアなハートを弄びやがって……
「…………そうか。でも、お前の気持ちがどうだろうとお前のもたらしたあの結果が変わるわけじゃない。 ……本来あったはずの俺の三年間……それに値する物をお前は何か用意できるのか?」
「……それは……」
何やら考え込んでいる。予想外の事態に対応しきれなかったのか?
「じゃあさ……これからの高校生活……充実させるってのはどう……?」
「…………」
ふーむなるほど……細かい内容が具体的に決められてない分三年間縛りなしでこいつを好き勝手に使い回せそうだな……
「ま、それならいいかもな………………で、俺のこと好きって言ったよな?」
「…………はい」
ここで騙されたフリでもしとくか……被害者として上から目線的な感じで……
「んじゃ……特別ボーナスだ。今後三年間で更生した様子が見られて、かつ三年後もお前の気持ちが変わらないってんならお前と付き合ってやる」
「……え?」
すっかり呆気に取られてるな……まぁそりゃこんな見事に引っかかってくれれば愉悦を通り越して驚くだろうな……
「チャンスをやるって言ってんだよ。お前が普通に告白してきても俺は絶対断る。だから、契約の対価としてお前にチャンスをやる」
「それって……本当……?」
よし、ここで調子に乗ってる風にダメ押し!
「ただし、あくまでそれは"お前が更生した”と認められた場合だ。それと、俺に相手が出来たとしたら大人しく諦めろ。あ、それとこの契約の内容は誰にも言うなよ」
まぁでもこいつが更生するのはどう考えても有り得ないだろ。いくら話のネタにする為とはいえそこまでするのは……
「……分かった」
……あっれれ〜? おっかしいぞ〜? 何であんた恋する乙女の表情してるんですかね〜? ……ほら、上手く言えないけどアニメとかでたまに見るアレだ。口元が緩んでるのが隠し切れてなくて、自分めっちゃ幸せですオーラが溢れ出てる感じ。 ……待て待て! これは罠だ! ……多分。
──────あの後、あいつからは終始幸せオーラが溢れ出てる感じがした。
……と言うか、今思えば俺は結構盛大にやらかしてしまったのかもしれない。あくまで口約束。あいつがどの女子に喋ろうが俺には分からないし、隠れて録音していた可能性もある。帰るふりをして女子がこっそりスタンバってた可能性もある。うわー、やらかしたぁ……何故か途中から何だか楽しくなっちゃってたよ……取らぬ狸の皮算用って奴だね。調子に乗りすぎたなこりゃ……
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