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第十二話 契約を結んだ幼馴染(涼香視点)

今回は先に涼香視点を投稿します。何故かって? なんとなくだ。(`・ω・´)キリッ

──────最近、博幸に対する亜理沙の様子がなんだかおかしい。

前まではまるで別次元に生きてるみたいに、互いに一切干渉していなかった。だけどここ一週間は朝の挨拶を交わすようになった。深読みしすぎだと思われるかもしれないが、時期的にも同じ係になったことがトリガーになったのは間違いない。休み時間に彼女を取り巻くパリピの集団に変化はないし、彼女がトイレに行く時などに少しだけ見せる疲れたような顔も変わらない。


……けど、最近彼女の視線が博幸に向いていることがよくある。その時の横顔は、ほんのり頬が赤く染まっていて、口元が若干だけど緩んでいて…………普通に生活してる分には誰にも気づかれないほどの小さな変化。しかし、彼女の中では確実に何かが変わった。彼女が博幸に対して向けているあの視線を見る度、不安と焦りが私の鼓動を加速させる。彼女が博幸にアピールし始めたらどうしよう。彼女は同性の私から見ても可愛い。なので、そんな彼女を異性として見ている男子からしたら、まさしく天使も同然なのだと思う。博幸も普通の男子高校生だ。とても可愛くて、その上性格もいい……そんな文句のつけ所のないような完璧な子からアピールされてしまったら、恐らく即落ちだろう……


私もそこそこ可愛い方の部類には入っていると思うし、頑張ってキープしているこのスタイルにも自信がある。ただ、過去の過ちが猛烈に足を引っ張っているせいで一切相手にされていない。そんな彼女との好感度の差は言うまでもなく開きに開きまくっているし、いきなり告白せず、まずは友達から関係性を始め、それから段々と距離を詰めていくという方法も普通によく聞く。そろそろ何か手を打たなければいけないのは明白だし、このまま何も謝らずに終わるのも嫌だ。ただ、博幸が私と付き合って幸せになれるかどうかはまた別の問題だ。最近亜理紗の存在を意識し始めてから気づいたが、亜理紗と付き合った方が博幸は幸せになれるのでは無いかと思う。私は嫉妬深いし、まだ彼に依存しすぎていると自覚している。もし仮に付き合うことになったとしても、迷惑ばかりかけるのが目に見える。


友達と自分の想い人の幸せを願うか、自分と想い人で幸せになろうと努力するか、または彼が他の誰かを見つけるのを待つか……高校生活が人生の全てじゃない。就職先で彼が運命の人に出会うかもしれないし、ひょっとしたらもう既に出会っているのかもしれない。彼の幸せを願うのならば、私のような人間はここらで勝負を降りるのが賢明な選択なのだろう……だが、彼を諦めきれる自信が無い。まだきっぱりと断られたわけではないし、ひょっとしたらワンチャン……みたいな希望をどうしても抱いてしまうのだ。こういう自分に嫌気がさすし、諦めなきゃいけないのも頭では分かっている。ただ、ドキドキとうるさいこの心臓は、博幸への好意を嫌でも自覚させてくる。この想いは肥大化しすぎてもう自分では抑えきれない……だから、もうきっぱりと断ってもらおう。彼に面と向かって拒絶されれば、流石の私でも諦めがつくだろうし、彼には私なんか忘れて自由に生きて欲しい……私には遠くから眺めることしか出来ないけど、それだけでも十分だ。何年も経ったいつの日かは、彼を思い出して『初恋のほろ苦い思い出だ』と笑い飛ばすことも出来るようになるかもしれない……


……さっきから何度もそう言ってるじゃない! どうして……どうしてこんなに胸が苦しいの……? どうしてさっきから涙が止まらないの……? どうして……どうして……!!!


──────その日、私は泣き疲れて寝た。

翌日、珍しく食欲がなく朝ご飯を抜いた。そのせいで当然授業も集中出来なかった。麗奈やお母さんからクマがあると言われた。でもそんなのどうでもよかった。テストの結果が返ってきた。前より順位が上がっていたが、大して嬉しくなかった。

いつもは楽しいはずの体育もそこまで楽しくなかった。また、終わり際に体育の先生から体育倉庫の片付けを頼まれた。どうやら当番制だったようで、たまたま博幸との共同作業だった。もうやる気が失せていたが、博幸との共同作業なら頑張らなきゃと思い、ぼーっとしていた頭を覚醒させる。


「何でお前と……」

「当番制なんだから仕方ないじゃない」

「とっとと終わらせるか」

「もう今日は授業ないんだしゆっくりでもいいでしょ」

一緒にいる時間を少しでも延ばしたくて、つい無意識に言葉が出た。

「まぁそっか。お前疲れてるみたいだし」

「……そんなことないよ」

「じゃあそのクマは? 今日の授業もぼーっとしててお前らしくもない……倒れられたら俺が保健室まで運ばなきゃいけなくて面倒くさいから休んでろ」

……そういうとこだよ。


私みたいにどれだけ嫌っている相手でも、たとえ初対面の人だったとしても、本当にその人が困っている時とかなら優しく出来るとこ……前に手を握ってくれた時も嫌々ながら私が落ち着くまでああしてくれてたし、亜理紗が彼に心を開いたのも多分それが理由。 ……やっぱり、昔から変わってないそういうとこが大好き。

「……ありがと」

「俺もありがとな」

「え?」

……私、博幸が感謝するようなことなんて一つもしてないよ? それどころかむしろ迷惑ばかりかけて……

「……テストの特訓。お前がいなきゃ100番以内なんて取れなかっただろうし、俺が"あんな男”とか言われた時に怒ってくれたろ?」

「別にそんなの感謝されるような事じゃ……!!」


「……まぁ、それとこれとは話が別だが」

「……」

今この場で絶縁宣言されても仕方ない。全ては自分のせいなのだから……

「……なかなか聞けなかったが……中一の"あの事”覚えてるか?」

「……うん」

「……何であんなこと言った?」

「……ごめんなさい! こんなの……ただの下手な言い訳にしか聞こえないだろうけど…………私、博幸が好きだったの……それで……照れ隠し……で……」

「はぁ? お前は一体何言ってんだ?」

「……理解されなくて当然だよね……でも、これは嘘でもなんでもない、私の本当の気持ち。 ……どんな制裁でも受けます。いくら殴ってくれても構わないし、博幸が本当に望んでることだって言うんなら……死ぬ」

「……嘘じゃないな?」

「勿論です」

「じゃ、俺のどんなとこが好きなんだよ。本当なら言えるはずだろ?」

「昔から良い所も悪い所も沢山見てきたから分かる。 ……誰にでも優しいとこ。一緒にいると安心するとこ。たとえ誰であっても、本当に困ってる時なら手を差し伸べてあげられるとこ。失敗しても、傷ついても、博幸と一緒に居れば立ち直れた。大きな手も、高い身長も、楽しそうな笑顔も、全部……全部大好き」


「…………そうか。でも、お前の気持ちがどうだろうとお前のもたらしたあの結果が変わるわけじゃない。 ……本来あったはずの俺の三年間……それに値する物をお前は何か用意できるのか?」

「……それは……」

……博幸の中学校生活三年間に値する物、か……これから三年間博幸の成績を保証する……のは私が博幸と勉強したいだけって思われるし………………そうだ! これから三年間の博幸の高校生活を充実させることは……?

そうすれば中学の埋め合わせも出来るし、きっと博幸に彼女でk…………………………仕方……ないよね……これは罪滅ぼしなんだから……博幸は私と違っていい人なんだから……だから……仕方ないよね……うん……そもそも私なんかが夢見ちゃいけなかったんだ……

「じゃあさ……これからの高校生活……充実させるってのはどう……?」

私は必死に涙を(こら)えながら言った。

「…………」

博幸はしばらく考え込んだ後、こう言った。

「ま、それならいいかもな………………で、俺のこと好きって言ったよな?」

「…………はい」

「んじゃ……特別ボーナスだ。今後三年間で更正した様子が見られて、かつ三年後もお前の気持ちが変わらないってんならお前と付き合ってやる」

「……え?」

「チャンスをやるって言ってんだよ。お前が普通に告白してきても俺は絶対断る。だから、契約の対価としてお前にチャンスをやる」

「それって……本当……?」

まるで天に昇るような気持ちだった。

「ただし、あくまでそれは"お前が更正した”と認められた場合だ。それと、俺に相手が出来たとしたら大人しく諦めろ。あ、それとこの契約の内容は誰にも言うなよ」

「……分かった」

つまりこの契約は、 ①三年間私が心変わりしない ②三年間博幸に彼女が出来ない

③私が更正する の三つの条件の上に成り立っているのね……いや結構厳しいな……まぁでもチャンスを貰えただけでも奇跡みたいなものだし………………えっへへ〜♡ 三年間頑張るぞ〜♪


──────帰宅後、私は具体的な作戦を考えていた。

「とはいえ、充実させると言っても何をすればいいのか分からないしなぁ……あのパリピの集団に博幸を放り込むのは嫌だし、そもそも博幸とあいつらじゃウマが合わないだろうし……うーん……それに亜理紗がアタックし始めるのもいつか分からないしな……いやでも博幸はだいぶ鈍感な方だから気づかない……わけないか……うーん……私は手を出せないし……どうすればいいのかなぁ……」

─────結局小一時間考えても答えは出なかったので、さっさと寝ることにした。明日もいい日になりますように……


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