第十話 決意を固めた幼馴染
おはようございます。お仕事や学業に励む皆様、お疲れ様です。疲れた時は、ゆっくり休んでゲームでもやりましょう。何事も健康が一番です。
──────ようやくテストが終わった。どの教科もあいつが熱心に教えてくれたため、なかなか良い成績を残せたのではないだろうか……結果はまだ返ってきていないが、いつも通り結果の返却に怯えて過ごす事にはならなそうだ。それに関しては一応感謝はしているが、正直言って『あいつを許せるか』と聞かれたら、きっと俺はまだ許せないと答えると思う。
俺の三年間に値する何かを捧げてくれた上で、誠意を感じられる謝り方をされたんならまだ検討しようと思うが、今のあいつの態度からしてそれは望めなさそうだ。 ……つーかあいつの成績で何でこの学校に来たんだ? あいつなら県内トップ高校だろうが間違いなく受かっているだろうし、指定校推薦狙うにしてももう少し上の学校があったよな……? それに最近滅茶苦茶ベタベタしてくるし……いや、待て。そんなはずはない。あいつに限ってそんなことは絶対にない!!(大事な事なので二回言いました)中学の頃のあの態度を思い出せ!
中一で俺がハブられるきっかけを作り、中二で週一ペースで謎の手紙を俺の下駄箱に何度も何度も入れ、(あいつは気づいてなかったみたいだけど、実は三週間に一回くらいは現場を目撃してた。)中三で卒業式の日に校舎裏に呼び出された。
中二の頃のあれは恐らく嘘告の為に用意したのだろう。開いたら呪われそうだったから、全部未開封で捨てた。
中三の頃のあれは……どうせ取り巻きを連れて財布でも奪おうとしたんだろ。てことで行かなかった。それに財布持ってってなかったし。
ちなみにクラスのお別れパーティーにも勿論招待されなかった。その後あいつの家に何故か招待されたが、どうせ罠なので行かなかった。
みんな大嫌いなバレンタインには、家のポストに『ごめんね』と書かれた差出人不明の手紙が毎年チョコと一緒に投函されていた。きっと周りの同調圧力に流された大人しい女子辺りがお詫びの印に義理チョコとしてくれたんだろう。世の中には救いがあるもんだなぁ……というかそれを支えに頑張って中学行ってたまである。
そんな苦い過去を振り返りながら、帰りのHRをぼーっと聞いていた。チャイムが鳴って先生が終わりを告げると、ほとんどの生徒は一斉に部活へ向かう。その流れに乗らず、帰路につく者が若干。そいつらが部活が休みor帰宅部の人達だ。ちなみに俺は今年で四年目となるスーパーベテラン帰宅部。なんか偉そうだな。実際は一ミリも偉くないけど。
……いつもなら大体ここら辺でそんな俺の生活を問答無用でぶち壊す"あいつ”が出現するはずだったが、今日は出現しなかった。超絶ラッキーだ。どれくらいラッキーかと言うと、ソシャゲのガチャで、いい強化を貰った超大当たりキャラを一発で引き当てるくらいだ。 ……分かりづらかったかな? まぁそれはともかく、あいつが居ないに越したことはないので、練太郎を誘ってとっとと帰る。テストも終わったので一緒にゲームしてると、突然練太郎が質問してきた。
『なぁ、博幸……最近大川さんと何かあった?』
色々あり過ぎて困るくらいだよこんちくしょう。
「どしたよいきなり」
『気になった』
「その経緯を説明してくれ」
『お前と話してる時に何故か睨まれた。あのひと目が大きいから迫力凄かった』
「えぇ……」
『まぁ何があったかは知らんけど、ラストに刺されないように気をつけろよ〜』
「伊○誠じゃないから大丈夫だ」
『なら大丈夫か』
「自分が恨まれてるケースは想像しないのな」
『当たり前だろ。俺はあの人と何の関わりもないし。ついでに言うなら一ヶ月以上話してないから大丈夫だ』
「触らぬ神に祟りなしって奴だ。あいつには関わんない方が良いぜー」
『そう言われると益々気になるな……何? 嘘告でもされたか?』
「そういうんじゃないぞ」
『……ま、これ以上の詮索は止めとく。もし辛くなったりしたらいつでも連絡してこいよ。確実に反応してやるからな』
「確かにお前ならいつでも確認出来そうだな」
『だろ?』
「なー」
『ん?』
「夏休みどうする?」
『家に籠ってニート三昧で良いだろ。つーかその前に期末もあるぞ……』
「あーやだ……考えたくもない……」
『まぁテスト終わったばかりだし……』
「んじゃ次のステージ行くぞー」
『了解』
──────それから約三時間が経った。
『あー、ようやくクリア出来た……』
「製作者側のミスだろこれ……中盤の隠しステージでこんな鬼畜なのかよ……」
『まぁレビューにも難易度地獄級って書いてあったしな』
「それなら先に言ってくれよ……もう数え切れないほど死んでるから……」
『悪い悪い……てかお前時間大丈夫か?』
「……普通にそろそろアウトだな……それじゃ帰るわ」
『また明日なー』
「おう」
───────家に着く。なんかこういう展開が前にあったような気がするけどもうないよね? ……鍵が空いてる……!! あーもうやだ!
そうして俺は、覚悟を決めて自宅へ突入したのだが……
『おかえり〜。あんたいつもこんな時間まで遊んでたの?』
良かった母さんだ……
「何で居んの? テスト終わったから調子乗ってただけだって……」
『早めに終わったから早めに帰ってきただけ。はぁ……ご飯温め直すからその間に着替えてなさい』
「へいへい」
『……ごゆっくり♪』
「なんか言った?」
『独り言よ』
「何だ……」
何だかとてつもなく嫌な予感がしたから部屋には行かず、部屋着の予備が置いてある来客用の部屋で着替えた。
『……もう帰ってきたの?』
「何の話だ?」
『……涼香ちゃんドンマイ……』
「今度は何?」
『独り言よ』
「それ前も言ったよね……」
『はい、ご飯出来たわよ』
「露骨に話題を変えようとするのやめてくんない?」
『……バレた?』
「何年息子やってきてると思うんだよ……」
『それもそっか』
──────久々の母さんの料理は美味しかった。何だか味付けが少し違ったような気がするけど……
「……母さん、味噌汁の出汁変えた?」
『気のせいじゃない?』
「うーん……なんか引っかかるな……」
こうして俺は、何だかモヤモヤとした気持ちで眠りについた。
食事中にドアを開ける音が聞こえたような気がしたが、きっと気のせいだろう。
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