第八話② 背後から忍び寄る幼馴染(涼香視点)
今回、涼香の会話が異常に少ないです。あと過去編を別のとこに移しました。
テストの前日の次の日は、いつも通り登校して、いつも通り博幸を眺めて、ついでに授業を受ける。そんな感じのいつもと変わらない平穏な日々になる……はずでした。
『それじゃ、朝のホームルーム始めるぞー。いよいよ中間テスト前日だ。各々が最善を尽くすように。提出物関連は明日と明後日の二回に分けて係に提出だ。』
大丈夫。ちゃんとやってる。博幸のももう終わらせてあるから準備は万端ね。テストで高順位取れたら博幸褒めてくれるかな……えへへ……そんなこんなで色々妄想してたら、先生の話が終わってた。いつもは呆れ返るほど長いのに……さーて、今日の博幸は……え? 何で? どうして亜理沙が博幸に話しかけてるの……? ……ダメよ。亜理紗は大切な友達だもん。それにそんなことで嫉妬してたら博幸が困るじゃない……でもとりあえず会話だけは聞いておこう……
『あの……ちょっといいかな……竹山君と黒岩君……でいいんだよね? ちょっと話があるんだけど』
『ん? 一体何の話d……』
振り向きながら答えてた博幸の言葉が止まった。まるで、彼女に見蕩れているかのような目をしてて……私にはあの一瞬(図書室で初めて会った時)しか向けてくれなかったあの視線……
『……それって地毛?』
……間違いない。博幸は彼女に見蕩れてる……普段なら博幸が女子にそんなことを言うはずないし……それになんかぼーっとしてる感じがする。
『あっはい。たまに言われます』
冷静に返したな……
『……あっ! ごめんごめん! ぼーっとしてたから変なこと言っちゃったね。うん。おーい、練太郎、なんか呼ばれてるから起きろ〜』
『…………誰?』
黒岩君、寝ぼけてるわね……
『あ、同じ係の白澤亜理沙です。そういえば同じ係なのに2人に挨拶してなかったね……』
『なぁ博幸、そもそも同じ係って何だ?』
そういえば黒岩君、確かあの時寝ていたような……
「お前が係決めの時に寝てたから余ってた係に2人で入ったんだよ。確かもう1枠余ってたから、それに入ったのがこの人なんじゃないの?」
なるほどそういうことだったのね……
『なるほど理解した。で、白澤さん……だっけ? その係って何すんの?』
『たまに放課後に残って掲示物を貼ったり回収したりするのと、校内新聞の掲示を当番制でやってたりする感じだったような……確かそんな感じ』
放課後に三人きり!? 私も立候補するべきだった!!! でも、私がいると立候補しないだろうから博幸が来るまで待ってたのに、まさか黒岩君も連れてくるとは思ってなかったのよね……
『で、白澤さん、今日はどっちなの?』
『今日は前者。てことで放課後しばらく残っててね〜』
『了解』
『んじゃまた放課後』
『……すげー美少女だったな』
……嘘……博幸の目がうっとりしてる……小さい声だったけどあれは確実にやられてる……
『あんな可愛い子が実在するのかぁ……アニメの中だけかと思ってた』
あぁ、ダメだ……黒岩君も亜理沙の魅力にやられてる……というか合法的に金髪にできるのはいいなぁ……
「つーか同じクラスにあんなのいたか? あんな凄いのがいたら嫌でも分かるだろ」
え? まさか気づいてなかったの……?
『ほら、あれじゃね? なんか俺たちがこのクラスになってから三日くらいで、休み時間には陽キャの塊が出来上がるようになってたじゃん。ワンチャンあれの中心にいる人だったりしない?』
なるほど、確かに初日で凄い数の取り巻きを従えてたわね……あれなら見えなくても仕方ないか……
『確かにそれなら知らなくても無理ないな。だってそもそも席が遠いし、その仮説が正しいなら人が多くて見えないし……』
『話変わるんだけどさ……やっぱ金髪も良いな〜。でもどこまで行っても結局黒髪ロングが最強だけど』
ふっふっふ……博幸は小学校の頃、"ショートが好き"と断言しているのよ! 私もそれに合わせてショートにしたわけだし、きっとショートの良さを語ってくれるはz……
『分かる』
えっ……!? 黒髪ロング!?!? 博幸昔はショートが好きって言ってなかった!?!? ……腰まで伸ばすかぁ……
黒岩君……お願い、博幸を止めて…………力を込めて見つめてたら伝わるかな?
『おっ! 黒髪ロングの良さが分かr……ひっ……!!』
『どした急に。いきなりそんなに青ざめて……腹でも痛いのか?』
『お、おう……ちょっと朝に食いすぎたかな……悪いけどトイレ行ってくるわ』
『いってら』
まるで何かに怯えてたような……えっ? まさか……ね……
──────しばらくして、黒岩くんが戻ってきた。トイレに行ったらすっかり落ち着いたみたいで良かった。
『で、話を戻すけど、お前も黒髪ロングの良さが分かるのか?』
『勿論。まず黒髪ロングってだけで日本人女子って感じがする。まぁ厳密に言うとアジア人は大体黒髪だと思うけど……それと、黒髪ロングだと清楚な感じがするな。うん。加えて、制服×黒髪ロング×美少女=異常に可愛くなるって方程式が既に成立してるからね! 個人的にツンデレだと更に加点』
デレデレするだけじゃダメなのかな……保健室の先生もデレデレしとけば良いって言ってたし……
『ツンデレが可愛いのはアニメの中の美少女に限るんだよなぁ……』
そうなの!? いやまぁでも私もどっちかと言えば美少女に入る部類だしワンチャン……
『確かにそれはあってるけど夢見たいじゃん』
『これがいわゆる現実逃避ってやつか……』
『うるさい。で、話を戻すけど、そっちはどうして黒髪ロングが好きなんだ?』
『理由なんて山ほどあるだろ!? まず、丁寧に手入れされた黒髪はそのままの状態を保つのにも相当な労力がかかる。陰ながらそんな努力を続けてるだなんてとてつもなく可愛いじゃないか! 加えて、そういう綺麗な髪の人は大抵染めたことや脱色したことがない生まれた時のままの髪色なのがほとんどだ。(俺調べ)そんなまだ何色にも染まっていない女の子を自分好みに作り変えていく……それって最高に嬉しいことじゃん!!』
途中何個かアウトな発言をしてたような気がするけど女子の苦労は分かってるみたいだし聞き逃そう……
『いや、俺はそこまで分かりません。頼むから落ち着け練太郎』
『他にも………………べらべらべらべら……』
この後、休み時間が終わるまで黒岩君は黒髪ロングについて語っていた……黒岩君、いい人を見つけてね……世界のどこかにはあなたの好みへの愛に正面から向き合える素敵な子がきっといるはずだから……
そして、いつものようにすぐ放課後になった。
『あ、それはそこにお願い。黒岩君はその大きいの貼っといて』
『あいよ』
『了解』
……作業がスムーズだなぁ……指示出すのが上手いのかな?
それに、渡す時に二人の手がちょっと手が触れ合ってるように見えるし…………こういう時は深呼吸。
「すー……はー……すー……はー……」
よし、落ち着……かない。あー、なんかイライラする……
『これで作業終わり!』
『んじゃ帰るか……』
『また明日ね』
『おう』
『さよならー』
……博幸、私じゃダメなの? 確かに白澤さんのが可愛いと思うけど……私も博幸への気持ちじゃ負けてないよ?
……アピールしなきゃ。
──────気づいたら、博幸を引っ張って両手を掴んでいた。
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