第八話 背後から忍び寄る幼馴染
この長ったらしい文章を読んでくださっている皆さん、いかがお過ごしでしょうか……私は最近、スマホが友達になってきています(ちゃんと他にも友達はいるので安心してください)。あと最近眠いです。お休みなさい……
テストの前日となる次の日は、いつも通り登校し、いつも通り授業を受ける。そんな感じのいつもと変わらない平穏な日々になる……はずだった。
『それじゃ、朝のホームルーム始めるぞー。いよいよ中間テスト前日だ。各々が最善を尽くすように。提出物関連は明日と明後日の二回に分けて係に提出だ。』
大丈夫。ちゃんとやってる。というかあいつにやらされた……このテストが終わったらようやくあいつと関わらなくなる! やったぜ。
後は……母さんの言ってた『100番以内に入らなかったら入れるようになるまでゲーム禁止』という制限だな……母さんが一度ゲーム禁止と言うと、マジでその期間はゲーム出来なくなる。中学時代にありとあらゆる手段を使ってどうにかゲームしようとしたけど、家中どこを探しても隠されたゲーム機は見つからないし、ゲーセンにでも行こうと思ったら財布が没収されてる(返して貰った後に中身を確認したけどちゃんと±0だった)し、友達の家でやろうと思って遊ぶ約束をしたのに、相手の親には「息子と俺が一緒に勉強する話」として伝わってるせいでゲーム機が片付けられてたし、最後の手段として友達にこっそりゲーム機を借りようとしたら、これまた相手の親に話が伝わっててダメだったし……いや母さん親のこと好き過ぎかよ…………いや、改めて思い返してみると結構な親バカだったわ……まぁ無視されたりするよりはいいけどね? それにあんなんでも一応ちゃんと約束は守ってくれたり、文句言わずにここまで育ててくれた良い母親だから……
『あの……ちょっといいかな……竹山君と黒岩君……でいいんだよね? ちょっと話があるんだけど』
そこまで考えていた所で、恐らく女子であろう高くて綺麗な声が俺を現実に引き戻した。
「ん? 一体何の話d……」
振り向きながら返事をしようとしたが、その姿を見た瞬間、つい言葉に詰まってしまった。背中くらいまでの長い金髪、高い鼻に、ぱっちりと開いた碧眼。そんな絵に書いたようなハーフ美少女がそこにいた。そんな彼女に見蕩れてしまっていたせいで働きが鈍った脳のバグのせいで、ついこんな間の抜けた一言を発してしまった。
「……それって地毛?」
『あっはい。たまに言われます』
「……あっ! ごめんごめん! ぼーっとしてたから変なこと言っちゃったね。うん。おーい、練太郎、なんか呼ばれてるから起きろ〜」
軽く誤魔化しつつ、眠気に身を任せてた練太郎を揺り起こす。
『…………誰?』
『あ、同じ係の白澤亜理沙です。そういえば同じ係なのに2人に挨拶してなかったね……』
『なぁ博幸、そもそも同じ係って何だ?』
「お前が係決めの時に寝てたから余ってた係に2人で入ったんだよ。確かもう1枠余ってたから、それに入ったのがこの人なんじゃないの?」
『なるほど理解した。で、白澤さん……だっけ? その係って何すんの?』
『たまに放課後に残って掲示物を貼ったり回収したりするのと、校内新聞の掲示を当番制でやってたりする感じだったような……確かそんな感じ』
「で、白澤さん、今日はどっちなの?」
『今日は前者。てことで放課後しばらく残っててね〜』
「了解」
『んじゃまた放課後』
「……すげー美少女だったな」
周りに聞こえないように、小声でこっそりと練太郎に告げる。
『あんな可愛い子が実在するのかぁ……アニメの中だけかと思ってた』
同じく練太郎も小声で返す。
「つーか同じクラスにあんなのいたか? あんな凄いのがいたら嫌でも分かるだろ」
『ほら、あれじゃね? なんか俺たちがこのクラスになってから三日くらいで、休み時間には陽キャの塊が出来上がるようになってたじゃん。ワンチャンあれの中心にいる人だったりしない?』
「確かにそれなら知らなくても無理ないな。だってそもそも席が遠いし、その仮説が正しいなら人が多くて見えないし……」
『話変わるんだけどさ……やっぱ金髪も良いな〜。でもどこまで行っても結局黒髪ロングが最強だけど』
「分かる」
『おっ! 黒髪ロングの良さが分かr……ひっ……!!』
「どした急に。いきなりそんなに青ざめて……腹でも痛いのか?」
『お、おう……ちょっと朝に食いすぎたかな……悪いけどトイレ行ってくるわ』
「いってら」
何か朝から様子がおかしいと思ったら腹痛か……いやでも腹痛であんな声が出るか? それに、あの時まるで何かに怯えていたような…………まぁいっか。
──────しばらくして、練太郎が戻ってきた。トイレに行ったらすっかり落ち着いたみたいで良かった。
『で、話を戻すけど、お前も黒髪ロングの良さが分かるのか?』
「勿論。まず黒髪ロングってだけで日本人女子って感じがする。まぁ厳密に言うとアジア人は大体黒髪だと思うけど……それと、黒髪ロングだと清楚な感じがするな。うん。加えて、制服×黒髪ロング×美少女=異常に可愛くなるって方程式が既に成立してるからね! 個人的にツンデレだと更に加点(美少女に限る)」
『ツンデレが可愛いのはアニメの中の美少女に限るんだよなぁ……』
「確かにそれはあってるけど夢見たいじゃん」
『これがいわゆる現実逃避ってやつか……』
「うるさい。で、話を戻すけど、そっちはどうして黒髪ロングが好きなんだ?」
『理由なんて山ほどあるだろ!? まず、丁寧に手入れされた黒髪はそのままの状態を保つのにも相当な労力がかかる。陰ながらそんな努力を続けてるだなんてとてつもなく可愛いじゃないか! 加えて、そういう綺麗な髪の人は大抵染めたことや脱色したことがない生まれた時のままの髪色なのがほとんどだ。(俺調べ)そんなまだ何色にも染まっていない女の子を自分好みに作り変えていく……それって最高に嬉しいことじゃん!!』
「いや、俺はそこまで分かりません。頼むから落ち着け練太郎」
『他にも………………べらべらべらべら……』
この後、休み時間が終わるまで練太郎の黒髪ロング愛が炸裂したのは言うまでもあるまい。正直ちょっと眠かった。俺も黒髪ロングは一番好きな髪の種類だが、生憎俺はそこまで熱狂的なファンというわけではない。
いつものようにあっという間に放課後が来て、練太郎と共に白澤さんの係の仕事を手伝い終えた俺は、さっさと家に帰……るつもりだったが、背後から忍び寄る怪しい影に気づかなかった。
突然腕を掴まれ、いきなり後ろに引っ張られたと思ったら、"あいつ”が、鬼の様な形相でこちらを睨んでいた。
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