第七話② 果てしなく一途な幼馴染(涼香視点)
過去編を別の枠に投稿し直すか考え中なので、良ければどちらが良いか感想でお知らせ下さい……
やっぱり涼香さんは博幸君以外には微塵も興味が無いようです。
『大川さん、駅前に最近できたこのカフェ、今度行ってみない?』
突然見覚えのない男が話しかけてきた。えーっと……確か……サッカー部のキャプテンの…………誰だっけ……前に告白して来たような気がしなくもないけど……確か断ったよね?
「ごめんなさい。とっても残念だけど今日も明日も明後日も明明後日もずーーーーっと大事な予定があるから行けそうにないわ! それじゃあさよなら!!」
こんな感じで強く断れば流石に諦めるでしょ。それよりも移動教室あるのに……いやー、教室よりも博幸に近い席になれるから楽しみなのよね〜♪
『それじゃあテスト終わったら行こうか。土曜と日曜どっちがいい?』
あの〜、話聞いてました? 今断りましたよね? うーん……でもこの人女子から人気だし、そんな雑に扱えないのよね……ここはしっかりと彼氏がいるアピールをしとこう。深く聞かれたら博幸と付き合ってることに……あれ待って? それじゃあ周りにそう認知されるから、博幸も周りからの圧力で彼氏のフリをするしかない……そうなれば雰囲気でキスくらいできるかも……!
「ごめんなさい。無理です。あなたからいくら誘いを受けたとしても私は行くつもりはありませんし、第一私には彼氏がいるので。あなたもいい人を見つけて下さい。それじゃあさよなら」
──────『彼氏ね……そっか、じゃあ、その人と俺、どっちのが好m……』
「彼氏です」
決まってるでしょ。当然博幸ね。
『……その人に俺が勝ってる所h……』
「申し訳ないですが一つもありません」
頭おかしいの? こいつ程度が博幸にたった一つだとしても勝てるわけないじゃない!!
『……そこまでの人だったら是非見てみたいな……』
「……はぁ、分かりました。そこまで言うなら…………ってあれ? おかしいな……さっきまでこの辺に気配を感じたのに……」
『そうですか。それならまた今度お願いします。ついでにそのタイミングを知りたいので良ければ連絡先k……』
「無理です。あと正直に言うとキモいです。次の授業があるのでさようなら」
はぁ……諦めの悪い人だなぁ……全く……早く博幸のそばに行きたいなぁ……あんなのじゃなくて博幸が寄ってきてくれればいいのに……まぁ、あの事については全部私の自業自得なんだけど……
その後、移動先の教室に着いたけど、博幸はいなかった。授業が始まって少ししたら慌てて走ってきたみたいだけど、先生が罰として提出する課題のプリントを一枚増やしていた。あれのお陰で博幸と勉強する時間が三十分位は増やせるかな? 先生グッジョブ!
その後は特に何もなく、いつも通り先生の話を聞いていた。先生から見えにくい位置にいたから見逃されてたけど、博幸が眠そうにしてた。眠そうにしてる姿もいいな……と、改めて想い人への好意を自覚した。
その後昼食を食べて、余った時間は図書室で本を読む。本当は博幸と一緒に食べたり勉強したりしてたかったけど、ご飯は黒岩くんと談笑しながら食べていて入り込みづらかったし、食べ終わったらいつの間にか二人ともどこかに行ってたから、あの二人と一番遭遇する可能性が高そうなここに滞在する事にした。
しかし、気になっていたシリーズの新刊が置いてあることに気づき、最初は博幸達が来るまでにしようと思っていたけど、そのうちどっぷりと本の世界に浸ってしまっていた。予鈴の音で現実に引き戻されると、慌てて借りる手続きを済ませて教室へ戻る。
週に何度かある一日七時間授業の日。みんな眠気で集中力が落ちる中、恐らく眠くなる教科の中でも特に辛い古典で、また博幸が眠そうにしていた。先生が黒板に長文を書くタイミングを狙ってちらりと後ろを盗み見ていると、最後の十分くらいで博幸が完全に眠っているのが分かった。後ろの席の黒岩くんも同じ体勢で寝ていて、まるで仲のいい兄弟みたいだと思った。
そんな微笑ましい光景を糧に眠気を耐えきると、チャイムの音で起こされたらしい博幸に話しかける。
「博幸、あんた最後の古典で寝てたでしょ……」
『何でそんな事言えるんだ? お前の席は俺よりも前のはずだろ? 後頭部に目でもついてんのかよ』
しまった! 確かに本来授業中に後ろを振り返る事なんて無いはず! とりあえず関係ない話題で少し意識をそらそう!
「なんか昔話でそんな話を聞いたことがあるような……」
『それは口だろ……で、なんで俺より前に席があるはずのお前が、俺が寝ていたと言えるんだ?』
効かないかぁ……こうなったら万能な言い訳"隣の席の人”を使う!
『そ、それは……あなたの隣の子に聞いたのよ』
『出席番号の関係で、俺の隣の席のやつは両方男なんだけど……男子のことをそう言うのは違和感ないか?』
ダメだ完全に読まれてる! 今度から博幸の周りもちゃんと確認しておかなきゃな……
「隣じゃなかったわねー……確か左斜め後ろだったかな?」
『俺の席の左斜め後ろのやつは昨日から風邪で休んでるけど……』
「へっ!? じ……じゃあ……右斜め後ろだったかな〜? 席が離れてるから分かんないなぁ〜」
お願い! これで何とか誤魔化せますように!
『はいはいわかったわかった。そういうことにしといてやるよ……』
ふぅ……助かった……
「はい、それじゃあ早速図書室行ってテスト勉強しましょ」
『……あー……だる……』
「つべこべ言わないで早く始めるよ! はい、じゃあまず今日の授業で分からなかったところから!」
『勘弁してくれ……』
──────こんな感じで一時間くらいは勉強したかな? そろそろ休憩を挟もうと思っていたら、時計の短針は思っていたよりも数字二つ分程ズレていた。博幸のそばにいるとこんなに時間の流れが早まるんだ……
『死ぬ……もう無理……』
「はいじゃあ今日はここまで。お疲れ様でした」
三時間も休憩無しで勉強させ続けた博幸に申し訳ないと思いつつ、この時間内で終わらせた課題の量を見てみると、一人でやるより随分多く終わっていた。それなのに全然手の疲れや辛さを感じない。それどころか、このまま隣に博幸が居れば、あともう三時間程はぶっ続けで行けそうな気がする。
『あ、大川さん。こんなところで会うなんて奇遇だね!』
そんな時、見覚えのあるような無いような微妙な感じの男子が、偶然を装って話しかけてきた。目が泳いでいたり、左手をキツく握りしめていることから緊張しているのは一目瞭然だ。
『どうやらお前の彼氏が来たみたいだな! 俺はゲームしたいからこれで! いやー、美男美女同士お似合いのカップルだな!! それじゃ後は二人でお幸せにー!!』
「あっちょま……」
博幸が何を勘違いしたのか、飛ぶように走り去って行った。呼び止めようとした時には既に手遅れで、私は閉室間際の人が少ない図書室に男子と共に取り残された。こんな時間まで残って勉強しているタイプの人間は、大抵周りの出来事に興味が無いタイプのガリ勉(偏見)だと思うので、周りからの援軍に期待するのは難しそうだ。
『……どこ行こうか、大川さん』
「……最悪」
散々断り続けたのに何かと理由をつけて粘着してくる。友達に呼び出されたフリをして何とか撒くことが出来たので、なるべく遠回りをして家に帰った。
「あーあ……アイツのせいで全部台無し……この後は博幸と帰る予定だったのに…… 」
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