怨念
こちら恐ろしいお話ですよ、覚悟してお聞きなさいね。
ええと、私の家系にはですね、男子がいないんですよ。
聞くところによりますと、男子が生まれてもすぐに命を終えてしまうのだそうです。
実際、ひいおばあさんの代から見ても、女子しかおりません。
江戸時代に、武士をしていた祖先がいるそうなんですけれども、その代から男子が生まれないのだそうで。
人斬り腹切りのあった時代、もしや怨念のようなものがあったりするかもなのですよ。
いわゆる男子直系に、男子がいないのでございます。
養子をもらうことが多かった時代でございました。
養子を入れて、家系をつないでまいりました。
そして現代、女系は苗字を継ぎませんから、武士の家系は途絶えてしまったのです。
途絶えてしまったのですけれども。
どうなんでしょう、最初に呪った武士の人がいたのだとしますとね。
現代の感じをどう思っていらっしゃるのでしょうかね。
男子が家を継ぐ時代は終り、男子が女子を目指すことも珍しくなくなり。
女子が軽視されていた時代だから許された、女子のみが生きながらえるシステム?
価値観は時代の流れと共に変わるものだと、怨念の皆さんはお分かりいただけてるのでしょうか?
いやはや、恐ろしいお話ですよ。
男の娘はセーフなのか、アウトなのか。
雄んなの子はどうなのか。
呪った本人は今何を思っていらっしゃることでしょうか。
そんなことを思って生きてまいりましたけれどもね。
娘がね、ぽろっと一言、漏らしたんですよねえ。
「ばあちゃんの背中にくっついてる武士がさあ。なんか花魁の衣装着てるんだけど、なんなん?」
案外この世の中を楽しんでいらっしゃるのかもしれませんねえ。
呪うほどのお怒りのほとぼり、冷めましたかねえ・・・?