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Locus Episode2 Ⅰ〜Ⅷ  作者: K-9b
Ⅰ巻 第捌章 第四幕
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第捌章 第四幕 3P

今回の場合は純粋な戦闘能力と情報を集め、時間帯と地の利を使った戦略。数で押し切ることが出来ないランディの戦闘能力とノアと言う伏線。ルーと言う更なる次の一手。


既に、名もなき盗賊団は術中にどっぷりと嵌っていると言っても過言ではない。


「あの時も相当手を抜かれていたと思うと、悔しくはあるけども……これを見て俺が何とか出来るかと言えば、出来ない」


『Pissenlit』でランディから受け取った布袋を握りしめるノア。悔しいが、ランディの言ったことは真実であり、本物であった。


ランディが、言葉通り、行動で示している。ならば、同じく粋がった自分も動くべきだろう。


「さてと、お客さんも揃ったことだし。俺も動くか」とノアは言うと、手元にある布袋を開け始めた。


ノアが袋口の結び紐をとき、手を突っ込む。


中の物がゆっくりと外気に晒された。


「試作型番号『K-9B』。『K-9』の改良型……これまでの欠点を取り除いた王国最強の小銃」


出て来たのは、剣よりも長い、黒光りした一丁の小銃。銃口には、歪な四角い照星がついており、銃身はすらりとしていて被筒と銃床は木製。排莢口は右側に付いている。管状弾奏で八発までは装置可能。


今、王国内での技術を全て集めた銃である。


「うへぇ……昨日も見たけど。ほんとに本物なんだなあ、これ」


美術品でも愛でるように全体の刑姿を撫でて銃の状態を確かめる。木製の部品は光沢を出すのと劣化を防ぐ為に丁寧に削られ、松脂を水蒸気蒸留して作る精油が塗ってあり、銃身は丁寧に研磨された鋳型を使っているのか、撫で心地が良い。重さもしっかりとしていて照準もぶれにくい。特に目立った装飾もない。シンプルな形状であった。


「勿論、施錠あり、弾層は管状弾層……命中率に関しては、弾倉が軽くなって行くにつれて感覚がずれるって聞いたけど、そのことが頭にはいっていてランディに貰った弾があれば大丈夫だ。それにしても本当にえげつないね。見た目は綺麗でも中身はどっかの誰かさんと同じで酷い武器だ」


ランディの補足を復唱しながら満足の行くまで点検をした後、渡されている銃弾入りの布袋を服のポケットから取り出す。銃弾は、小さめで尖頭型の新型弾。


発砲の仕組みは、ボルトハンドルを引いて引き金を弾き、銃用の雷管を叩いて実包を打ち出す仕組みで旧来の銃と変りはない。これまでの説明ならば、命中率を上げただけと言う話になってしまうのだが、まだこの銃には隠し玉があった。


「無煙火薬―――― か。『k-9』よりも命中力を上げたことでこの火薬の力が更に鋭くなった」

そう、この銃の系列『K-9』の強みは無煙火薬である。


「真面目な話。設計上では、黒色火薬よりも威力を上げつつ、硝煙が目立たないって所がミソ。後は使う側の練度とセンスが問題だけれども―― これを使えるのか、俺は」


情けない声で泣き言を言うのも仕方がない。本来ならば、軍が厳重に管理し、情報が洩れないよう、細心の注意を払って運用をしているのだ。こんな所に一丁あるなど言う話が知れれば、大事。騎士団やもしかすると、軍の精鋭部隊が派遣され、下手をすればランディに関わった者が殺されかねない。勿論、ノアも例外ではない。それだけ、凄まじい兵器なのである。


従来の銃火器とは一線を置く最新兵器。しかしながらまだまだ、改良の途中でもあるのだ。


もう少し時間が経てば、もっと優秀な兵器も登場するだろう。だがまだ見ぬ兵器は所詮、空想の中でしか人を殺すことは出来ない。


ノアは唇を舐めながら一発、一発丁寧に装鎮する。詰め込んだ後は、右手持ちで構える。銃弾の重さを確かめる為だ。そして予め、用意していた照準のズレがないかを見た後、窓から銃口を突き出して敵の接近に備える。


「準備は完了。いつでも来い」


今度は敵も大所帯で来るだろう。ノアもきちんとフォローしなければならない。緊張で嫌でも手が震える。必要最低限の動き以外は動かない為、早朝特有の寒さも身に堪える。


「はあーはあーはあー」


一度、銃を立て掛けて上手く動かせるようにと、口元の覆いを取り、手に息を吐きかけてその時を待つノア。この騒ぎは、まだ町全体に広まってはいないだろう。周りの住民は避難している上、見張りも全員、撤退している。それは三人で確認したから絶対だ。


先の声は、敵側には聞こえているのだろうが、相手は此方の戦力を知らない。どう言った戦略で来るのか、戦力はどれほどのものか、全く情報がないのでランディたちにとっては大きなアドバンテージになる。何故なら相手側が効果的な行動を取れないからだ。


伏兵や罠を想定し、常に中央へ兵を固めつつ、情報を集めることから始めなければならない。


全てが後手後手の対応になってしまうのだ。その点、ランディたちには、二日の余裕があり、情報を集めるだけ集めた結果の作戦である。


相手は確かに、ランディ、ノア、ルーの三人にはないチームワークがあるのだけれどもそれが今回は仇となったのだ。ただ、三人に弱点があるとすれば、それは町民たちの介入だ。なんとしても彼らが本格的に動き出すまでには片を付けたい。もし町民達の介入があれば、敵に情報を与える上、戦闘も長期戦や乱戦になり、人質を引っ張り出されれば、此方側の分が悪くなり、事態はもっと悪い方へ向かってしまう。被害を最小限に抑える為には、仕方がないのだ。


「俺がやる、俺がやらなきゃ誰がやるって言うんだよ」


幸い、まだ殆どの住人が寝静まっているので目立った動きはない。此処から役場は遠いのだ。


注意深く音を聞かれなければ、人の声は届くことはあり得ない。役場内に最低限の人員が集中していることも助長しているし、町中が入り組んで音が共鳴するため、最低でも例の境界線以内で聞かなければ、内容が分からないだろう。


気付かれるとすれば、これからだ。ノアが銃を使えば、確実に気付かれる。だからこそ、ノアは今、此処にいる俺が頑張らないといけないんだ、此処からは本当に迅速な対応が求められると自身を追い込む。心の中に巣食う怯えと戦い、ただ待ち続ける。


「畜生……ランディのアドバイスでも聞いとけば良かったか?」


銃を構え直し、静かにその時を待つ。自分の鼓動と息遣いを嫌と言うほど感じる。今になってランディの助言の意味が分かって来て作戦の緊張よりも後悔に悩まされて始めた最中、状況が動いた。遂に待ち人のお目見えらしい。


棒立ちしているランディの前に敵が六人ほど、現れた。それぞれが剣を構えているもランディは泰然自若。人数に動じることなく、目の前の敵を見据えていた。盗賊側と言えば、ランディの後ろにある二つの死体を見ていきり立っている。それでもこれ以上の被害を出したくはないのか、焦って行動を起こすことはなく、何やら話を始めた。内容はどうせ、敵側がランディに対して降伏の要求だの、人質を殺すと言った所だろうか。


感情よりも理性を取る考え方は、流石だ。失った物はもう戻って来ない。だから復讐よりもこれ以上何も失わないことを選べる思考が出来る盗賊団にノアは、驚いた。しかし、相手はランディである。


ランディが答えることは何もない。言葉に耳は傾けているも盗賊団のアジトの方角へ視線を投げ、無関心だ。何故名なら自分が何かを失うかなど、端からランディの頭にはない。何人か出るかもしれない必要最低限の犠牲は、仕方がないと切り捨てている。ランディの目的はただ名もなき盗賊団を排除するだけ。救出に関することは全てノアとルーに任せているからだ。

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