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Locus Episode2 Ⅰ〜Ⅷ  作者: K-9b
Ⅰ巻 第漆章 第三幕
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第漆章 第三幕 9P

立ち上がり、ランディの隣までルーが行き、肩を叩き、気にするなと諭す。


「今更、言っても仕様がないことだ。それにこれからは三人それぞれに仕事が待っている。今はそれだけを見ていれば良い。で話を戻すけど、武器はランディとルーが剣とナイフ、俺はそれに小銃を追加していると考えて良いかな? ナイフはその為に用意したんだろ?」


「です、です」


「それと町側の見張りはどうやって黙らせるんだい?」


「俺は多分、これがなければノアさんでなく他の人を引きこんでいた自信がありますな。医者であるノアさんにしか頼めないことです。期待していますからね」


ノアは最後にと個々の武装と『Chanter』側の見張りに関して触れた。ランディは意味深長な言葉を残して目に掛かった髪をはらいながら不敵な笑いを浮かべる。


「他に確認することがあれば今、答えられる分で答えますけど何かありますか?」


「いや、後は地図で敵の配置と町の現状を確認するのと此方の配置決め、下手な行動をさせない為に町の住人の見張りをどうにかする算段と、下準備だけだ」


「まあ、今までと同じように急いでやれば……十分、間に合うでしょう。僕以外の役立たず二人が働いてくれるのならば、だけどなあ――――」


「まだ、言うかい……」


「悪かったって! ルー、俺も頑張るから」


二人を叱咤し、これからの行動は真面目にやるようにと釘を刺すルー。そしてランディがルーの用意した道具を背負いつつ。「それじゃあ、これから地図で確認して行きますか……たまたま俺が地図を持っているので先ずは『Pissenlit』へ向かいましょう。役場に行くと目立ちますしね。宜しいですか?」とルーとノアに声を掛ける。二人もバラバラに返事を返し、同じようにランディの下へ行き、荷物を背負う。

「でもそう言えば、確認した後……ちょっと寄りたい所があるのだけど。良いかな? 時間も少し掛かると思う」とルーが言った。


「……あまり時間がないから気軽に返事が出来ない。何処へ寄るんだい?」


「午後に彼ら、つまりは盗賊団と町で最終の交渉の場を開くんだけど、それに皆で出席しようかと思ってね。勿論、ブランさんに了解は取り付けておいた。ただし、『重ね重ね言うけど、昨日のあれはなしだよ?』と伝言を頼まれた」


ランディの頭をぽんぽんと叩きつつ、ルーは時間が欲しい訳を話す。


「ほう、君も考えるね……敵の動向を少しでも探ることが出来るならそれにこしたことはない。それに俺たちが動くきっかけが掴めるかも。幾ら、推論があっても実証には到底、敵わない。ギリギリまでは踏み止まれる理由を模索しても間違いじゃあない」とノアは提案に賛同する。


「分かった、その話し合いを予定に入れよう。でも俺たちは積極的に話へは介入しない。俺が話に入れば、荒れる可能性もあるし……それにブランさんの言う通り、何か問題が発生するのは良くないから受け身の姿勢を徹頭徹尾通さないと」


荷物を担いだランディが手を叩き、二人に活を入れると軽快な足音を立てて部屋を出た。


続いて二人も同じように部屋を出る。


戦いは遂に架橋へ進んだ。


                    *


 ランディ一行は地図を見ながらの細かな打ち合わせと準備をある程度整えた後、その足で町役場まで向かった。


勿論、最後の話し合いを聞きに行く為だ。もう始まっている時間だが、途中参加でも問題ないと言うルーの言葉で三人は準備を優先したのだ。町役場に入ると穏やかな空気ではなかった。肌が痛いほどの緊張感が小さな会議室から洩れていたから。薄暗い廊下で足音を立てながら三人は目的の部屋を目指す。とある部屋の前で止まると、ルーが扉をノックし、中に居る者へ入室の合図をする。少しの間が空いてから誰かが扉を開けた。レザンだった。レザンは三人を視認すると無言で入って来るよう、手で合図する。参院は手招きを受けて静かに部屋へ入った。


「遅れて申し訳ありません」


「大丈夫、僕も想定していたからね」


「いーや、どうにも二人のお腹の調子が悪くて……手洗い場で醜い争いをしていたらこんな時間に。全く二人共、まだまだ子供で困ったものですよ。ねぇ?」


一歩前に出てルーがありもしない馬鹿げた理由をつけて親しみを持たせつつもさり気なく、この会議の参加者であることを室内の全員に印象付ける。


「ちっ……やっぱり来やがったか」


「もうDが後腐れなくと言って終わらせたのだから止めるべきだよH」


「そうですよ。H」


盗賊の中で動揺が走るも直ぐにそれぞれで補い、何もなかったかのように振る舞う。


「うっ、うん。いや、はい……どうにもお腹の調子が朝から悪くて三人で落ち合ってから一緒に行こうと決めていたんです。でも途中、俺とノアさんが同時に腹痛で……おそらく昨日、お腹を出して寝たのでそれが原因かなと……」


なるようになれなランディは冷や汗を掻いてあははと笑い、首肯する。


「はははっ! 全く、仲が良いのかな? お腹を壊すタイミングまで一緒なんて……なあ? ランディ」

「痛っ! そっ、そうですね。ノアさん」


「ごほっ、ごほっ! 覚えていろよ? ランディ」


「何のことやら」


ノアはランディの足を踏んで苛立ちを発散しつつ、同調し。ランディはノアの脇腹に肘を入れてやった。


「ほう……まだ参加者がいたのか。私としては予想外であったが」


「すまないねぇー。僕としては少しでも多く的確な意見が聞きたいからと考えて呼ばせて貰った。何か問題があるのならば、席を外させるけど、そちら側に異論はあるかい?」


室内では長机を横に二つ、縦に四つほど、繋げた状態で窓側には盗賊団の頭領格が五人、出口側には町長のブラン、オウル、席が一つ空いて町の運営に携わっている者が席を連ねていた。


空いていた席はレザンの席だろう。その中でランディ、ルー、ノアの三人が乱入したことで場の空気が微妙に崩れたのだ。乱れた空気を取り繕おうとブランが積極的に働き掛ける。


「いやはや、それはそれで構わない。我々の話すべき議題は前回とあまり変わらない……まあ、そちらにもう少し身を入れて貰おうとちょっとした情報はあるもそれくらいだ」


「―― なるほど。では異論がないと言うことで話を続けようか。君たち三人はそうだな……席も用意すると時間が掛かるから立ったままでも良いかい? 大体、段取りの話はもう終わったからね。大きな山を越えたから後は小さな点のすり合わせだけなんだよ」


「はい、大丈夫です」


ブランが今までの流れを簡潔に説明し、三人はその内容を承知した上で立ったままでいることを同意した。ランディとルー、ノアは町側の後ろの壁に寄り掛かって交渉の推移を見守る。これまでの大きな枠組みに関してはもう聞いてもあまり進展がないから問題ない。


小さな点の方が重要だ。


「さてと、そうなると後は細かな点について幾つか、此方で確認したいことがあるんだ。例えば、人質と金の交換場所とかなんだけど。其方での要望はあるのか、それとも此方で決めても良いのかな?」


「いや、それは私がもう決めている。広場で身代金と物資の受け渡しと行い、人質は我が今アジトとして使っているあそこからだ。これは譲れない」


「ふむ、再度確認するけども人質は今も全員健在でそして明日の正午には傷一つなく返して貰えるのだろうね?」


「それは町長含め、町がキチンと要件をみたせば、当然の話だ」


Dが今にも笑いだしそうな声で答える。


ブランは内心、心穏やかではないも目を瞑り、「なるほどな……了解したよ」と眼前で手を組んだ。

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