第壹章 新しい朝 14P
ランディの興奮冷めあらぬ様子からレザンは町散策が大成功に終わったことが分かった。興奮がある程度落ち着き、ランディが椅子に座りながらテーブルを見ると料理があることに気付く。
「あっ、済みません。お世話になっているので夕食、俺が作ろうと思っていたのですけど」
「君は何度言ったら分かる。もっと図々しくしていなさいと言っているだろう?」
「どうもそう言うのは苦手で……」
ランディの誤魔化しに呆れるレザン。今日の献立は焼いた羊肉とパン、サラダ。羊肉はわざわざ買ってきたのだろう。
「どうだ、上手いだろう。今日、町長の所に行った時の帰りに安かったから買ってきたんだ」
出来るだけ脂を取り除き、その上レザンの特性ソースがかかっているので羊特有の臭みはなく美味しく食べることが出来た。
「いや、本当に美味しいですよ。是非、教えてください!」
口いっぱいに食べ物を頬張りつつ、レシピを聞くランディ。
「ああ、後でな。それで今日はどんなことをして来た?」
レザンはランディに今日、この町で何をしたのかを問うた。
「分かりました、約束ですよ? まず、俺たちが行ったのは……」
ランディは回った所と其処で出会った人、物全てを一つ、一つ丁寧に話した。
「そうか、そうか。それはさぞ楽しかったろう」
手振り、身振りを加えての話に笑い、聞き入ったレザン。
楽しい会話も終わり、話はいよいよランディの命運を分ける話題へ移る。
「そう言えば明日。朝も言ったと思うが、町長と話をすることになった」
明るく楽しい空気は消え、真面目な雰囲気に変わった。
「私も着いて行くから大丈夫だとは思うがあいつは少し変わっていて面倒臭いことを君に押しつけてくるかもしれない」
町長と相対する時の心得を教えるレザン。心得があるほど恐ろしいのかと不安になるランディ。
「それ、フルールにも言われました。変わった方なのですか? 町長さんって」
「いや、仕事をしている時はマトモなのだが、一端面白いものを見つけると手がつけられん」
「はあ、なるほど」
良くあることでレザンも相当、手を焼いているようだ。経験者は語るとは正にこのことだろう。
「うげぇ……段々、不安になってきました」
「今日は余計なことを考えず、寝なさい。明日は忙しいし、遊び疲れてもうくたくただろう」
レザンは食事も終わった事だしとランディに早く寝るよう勧めた。
ランディもそれが良いだろうと素直に従う。
「そうします。じゃあ、お休みなさい」
「ああ、お休み」
ランディは湯とタオルで体を拭いた後、レザンに借りた寝間着に着替えて眠りにつく。
どうやら明日は嵐のような一日になりそうだ。




