プロローグ 出会い
今回、初めて書いてみたのですが、なかなか次の言葉が出てこず、苦戦を強いられました。
これでも、考え抜いて書いたので、最後まで見ていただけると幸いです。
夏。日差しが刺さるように痛い。
蝉が煩く鳴いている公園で、僕はただ、ぼうっとベンチに座っていた。
自己紹介が遅れるとアレなのでしておくと、僕は不知火 隼人という名前で、現在大学2年生の平凡な人間だ。
「そろそろ帰ってイベント周回しないと…」
そんな気持ちとは裏腹に、その重い腰を上げられない。
理由は明白だ。昨日、彼女に振られた。
「貴方とこの先一生なんて無理、別れましょう」と。
ここまではっきり言われてしまうと何も言い返せない。彼女はポニーテールに赤い花の飾り物がついた髪留めをしていた。とても美しかった。(コミュ障の)僕と釣り合わないほどに。
彼女と出会ったのは大学に入学した頃だった。とても綺麗だったのを覚えている。一目惚れだった。それから僕は彼女のことが気になり、講義にも集中できず、彼女を見かけると無意識に視線が彼女を追っていた。
そんな日々を送っていた僕はある決断をする。
そう、告白をするのだ。
告白は人生の、大きな一つのイベントである。
実際、学生時代に付き合ってそれからゴールインという例は山程ある。
僕は彼女を、放課後の教室にメールで呼び出した。彼女が不思議そうに教室に入ってきた。
鼓動の音が聞こえそうなぐらい緊張してきた。
「あ、あの…」
僕は勇気を振り絞り、
「貴方が…好きです。僕と…付き合って…ください」
ありきたりな言葉で彼女に愛を伝えた。
「え…」
絵に描いたように困っていた。
それはそうだ。全く話したことないのだから。
「その…少し、考えさせてください…」
終わった。
僕はその時そう思った。
次の日、彼女から返事を聞いた。意外だった。
OKしたのだ。
理由は、今の大学に特に気になる人はいないから、とのことだった。
あの時の嬉しさを超えることはこの先無いと誓える。
だからこそ悲しい。彼女と離れるのが。
アニメやゲーム、二次元の沼にはまっていた僕にとっては希望といっても過言ではなかった、むしろ足りないぐらいだった。
そんな辛い過去を忘れるため、気晴らしで公園に来ていたのだが、思いのほか時間を食ってしまった。
「そろそろ帰らないと…」
そう思い、やっとのことでその腰を上げると、一つ、風がヒューと吹いた。
心地良かった。僕にまとわりついた昨日の出来事を忘れさせてくれるほどに。
風の吹く先には一つの道が―――
「こんなのさっきあったか?」
そう思いつつも興味を惹かれた。まるで子供の頃、夏休みに未知の場所へ探検しに行くような。
木々や草花が生い茂る道を歩いて行くと、開けた場所にたどり着いた。
そこには小さな図書館らしきものがあった。レンガ造りの少し古い建物だった。
そしてなによりも、幻想的な面影を持っており、入らずにはいられなかった。
「お邪魔します」
そう言うと、少し錆びついた取っ手に、手を出した。
扉を開けるとそこには図書館とは思えない光景が広がっていた。ところどころ、天井から蔓が降りており、小鳥がさえずっている。中央には西欧の噴水があり、その上にある天窓は薄汚れている。
美しい。
これ以外の言葉が見つからない。
見とれていると背後から、
「どちら様ですか?利用者様ですか?」
見ると、そこには女性が立っていた。
その女性の髪は天窓から差してきた光に照らされて黄金に輝いていた。ただでさえ金髪なのに、だ。
その女性の碧い瞳に見つめられ、
「えっ…ええ、そうです。本を…借りに来ました…」
なんておどおどしながら答えると、
「まあ、利用者様なんて珍しい。ご案内致しましょうか?」
と言われたが、生憎、人との会話が苦手な僕は、
「け、結構です…」
と断った。
「そうですか…」
と、その女性は残念がる。
流石に、せっかくの好意を無下にしてしまったのは罪悪感を感じざるを得なかった。
僕は勇気を振り絞り一言、
「ここの司書さんですか…?」と。
するとその女性は、
「そうですよ、そう見えませんか?」
と返してきた。
似ていた。彼女の言葉遣いに。
「可笑しなことを聞きますね」
と、その女性はにっこりと笑ってみせた。
「す、すいません…」
謝ることしかできなかった。僕はそんな自分が情けなくて仕方なかった。
「そんな、謝る程のことでもありませんよ…
そうだ!自己紹介がまだでしたね。
私はアルノード・コルレオーネ。こう見えてもしっかりハーフなんですよ」
ほう、この女性はコルレオーネさんというのか。
金髪碧眼で「こう見えてもしっかりハーフ」
というのは少し理解し難いが、あえて流そう。
「僕は不知火 隼人です」
早口でそう言うと、
「あら、不知火なんて珍しい名前をお持ちなんですね」
確かに、家族以外で不知火という名前を聞いたことがない。というか、関心さえなかった。
「そ、そうですね。他に聞いたことありませんね…」
「あの…」
とコルレオーネさんが不思議そうに、
「先程から言葉が詰まっておられるのですが、これが俗に言う"コミュ障"ですか?」
図星だった。
「え、あ、はい…」
コミュ障全開だった。恥ずかしい。今この場から消えることができるのならそうしたいと思うほどに。
「ああ、そうですか…
それはとても弄りがいがありますね」
ん?彼女は何を言っているのだろう。というか初対面の僕にこんなにグイグイ話しかけることができるなんてすごいな、と感動までしている。
「い、イジるんですか?」
「ああ、気にしないでください。というかこの図書館、普段人目につかないから話し相手がいなくて暇してたんです。少しぐらい付き合ってください」
何故か怒られた感じがするが、まあ置いておこう。それよりも気になるのは普段この図書館が人目につかないというところだ。
「人目につかないんなら…どうして僕は見えたんですか…?」
「あれ、コミュ障なのにしっかりと話せるんですね」
コルレオーネさんはクスクスしながらそう言った。
なんだろう、初対面なのにこんなイジられたことは初めてだ。
「あ、あまりイジらないでください…」
「すいません、あまりにも楽しかったもので」
僕は全く楽しくない。
はあ、とため息を吐くと、彼女は
「あ、そうだ、さっきは断られましたが、今度こそご案内致しましょうか?」
もうどうにでもなれという気持ちで、
「じゃあ…お願いします…」
と小さな声でそう答えた。
「ふふっ、じゃあご案内致しますね」
彼女は僕の先頭につき、
「ついてきてください」
そう言うと、歩き出した。
館内をよく見てみると、薄汚れていた外観とは違い、しっかりと手が施されていた。
赤色のカーペット。アンティークな本棚。
中央には少し大きめなシャンデリア、だろうか。
すると、先を歩いていた彼女が、
「ここの本は、不知火さんが知っている本とは、
一味も二味も違うんですよ」
なんてことを言ってきた。
どういうことか、理解はできなかったが、とにかく、ここの本は珍しいものばかりだと分かった。
「どんな本があるんですか?」
段々と、流暢に話せるようになってきた僕。
「そうですね……
初めての方には理解し難いことでしょうけれど…」
彼女はそういうと、少しの時間悩んでいた。
なにか不都合なことでもあるのだろうか、などと考えていると、
「タイムトラベルって分かります?あの、過去に遡るやつです。」
知っているもなにも、SF系のラノベでよくあるものじゃないか。僕はそういうの、好きです。
「知っていますが、何か関係でも?」
「ええ、というか大アリなんですがね…」
「どういうことですか?」
「えと…」
彼女が言葉を詰まらせる。
そんなに難しいのか?
「あのですね…?」
僕は彼女が次に放った言葉を、その時信じることができなかった。
「ここにある本、全て伝記なんですが…
ここは、その本の時代に遡ることができるんです」
…は?
彼女はなにを言っているんだ。
全くと言っていいほど理解が出来ない。
すると彼女がさっきまで困った顔をしていたのに、パッと明るくなって、
「あの、よければ一緒に行きません?過去に!」
なんてことを言い始めた。
ヤバい。なにやら面倒臭いことに巻き込まれそうな予感がした。
「結構です」
「な、なんでですかぁ、絶対楽しいですって。
どうせ暇でしょう?」
「いえ、帰って溜まったアニメを消化しないといけないので…」
「暇じゃないですか!行きましょうよ〜」
と、駄々をこねる彼女。さっきのお淑やかな彼女はどこへ行ったのか。
「分かりました。なら、これでどうですか?
私が望んだ本一冊の歴史に対して、貴方のアニメ消化に付き合う、というのは」
この人はどうやら交渉が下手なようだ。
アニメなんて一人で見れるし、というか一人で見たい。
「結構です」
そういうと彼女は、
「そうですか……すいません、
一人ではしゃいでいた私が愚かでした……」
彼女はいきなりしゅんとしてそう言った。
僕は女性のこういう状態が嫌いだ。相手が悪くてもあたかも自分が悪いように思えてくる。
「わ、分かりましたよ…付き合いますよ…
ただし、一冊だけですよ…?」
そう言うと彼女は曇らせていた顔をパッと明るくし、
「本当ですか?二言はありませんね?」
と聞いてくるので、
「二言もなにも、もう決めたことですし…」
「そうですか…貴方、思っていたよりも男ですね!」
「僕を男として見てなかったんですか…?」
「いえ、コミュ障として…」
「分かりました。後は任せます」
「ああ、すいません!冗談ですって、冗談!」
なんて戯れていると彼女が
「あの、貴方と言うのもなんなので、名前で呼んでもいいですか?」
「え、ええ。別にいいですよ」
「それでは、不知火さん――」
彼女は一呼吸して、
「コルレオーネ図書館へ、ようこそ!」
満面の笑みでそう答えた。
どうだったでしょうか。初めてだったので、表現の乏しさや語彙力のなさなどがあったと思います。そのような時はご指摘のほど、どうぞよろしくお願いします。次回の反省にもなりますし、なによりも、見てくださったという励みにもなります。最後に、この度は読んでいただき、誠にありがとうございます。