魔法の言葉は「出ろ出ろポン!」
せっかく神様からもらった武器だが、俺は一生この剣を使えないらしい。
「……」
「……」
使えない剣だけ渡されて、魔法やらなんやらが飛び交う世界を、一般人の俺が孤軍奮闘で戦うのは中々無理がある話である。
気まずい沈黙が俺たちの周りを支配する。
「ちょ、ちょーっとだけ待っててね!なんとかならないか上に相談してみるから!」
頼んだメルティ…。
メルティは携帯を取り出すと(携帯あるの!?)
ピ、ポ、パと誰かに電話した。
「…あ、もしもしー。はい。お疲れ様です総務部のメルティです。
勇者召喚の件についてなんですがちょっとトラブルがありましてー。」
♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪
「はい了解しました〜。失礼しますー」
長電話を終えると、メルティはニンマリしながら俺に振り返る。
「なんとかなったよ!」
「や、やったー!」
世の中案外なんとかなるもんだ!
「で、なにがどう、なんとかなったんだ?」
「うん。えくすかりばーとは別にもう1つ、神の力を授けることになりました!」
ということはこの剣も貰えるんだ。やったー。
部屋の額縁に飾っとこー。どうせ使えないしー。
「それでもう1つの力、ってのは?」
「キミには神のスキルを授けます!
スキル名は……『召喚術《神》』です!」
「召喚術…」
「はい、召喚術です!」
自慢げにフンと胸を張るメルティ。
「召喚術《神》は本来相当な魔力がないと使えないスキルなんだけど、
キミの異常なくらい高い魔力であれば難なく扱えるはず!」
その後のメルティの説明によれば、
召喚術のは契約した生命体を使役し呼び出すスキルらしい。
自分の魔力を上乗せして強化したり、好きな場所に召喚させたりと色々できるそうだ。
「ものは試しです。早速使ってみよう!」
「よしきた!で、どうやって使うんだ?」
「……さぁ?」
さぁ、て。
「出ろ出ろ〜ポン!とか念じれば出るんじゃないですか?」
適当にもほどがあるだろ……
……まぁ、言われた通りにやってみるけど。
「出ろ出ろ〜〜〜……ぽーーーん!!!」
右腕を水平に伸ばして俺は叫んだ!いでよ!召喚獣!
「で、出たか??何が出た??」
何が出ても怖くないように、俺はガッチリと目を瞑る。
「いや、何も出てませんね。」
なにも出てこなかった。