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2回目の出会いはロマンチックどころか、グロテスクちっくだったよ。

―― 僕は、


「すみません!自分、チート仕様あるかなと思って、大口叩いてすみません!だから許して!」


「そんなことはどーだっていいんだよ。お前の肉さえ貰えればなぁあ!」


「ひィいいいいい!すみませんーーーー!!!!」


―― 何故、彼女らの終わりの始まりをみるのだろう。


「あの、ほんとに勘弁してください!初期装備パーカーなんですよ?!リセマラしたいぐらいなんです!」


「ごちゃごちゃぬかすな!もういい!此処で食事としよう」


―― だれかに呼ばれたわけでもなく、使命があったわけでもなく。


「ぐほぉっ...!ガハッ...」


「これが内臓か。なかなかいい。これは...?」


―― だが、僕が何もしなくても、彼女らは再生のために滅び、その後には何も残らない。


「まだ息があるな。新鮮なうちに完食してしまおうか...」


―― ただ、何故僕なのかというのは、偶然にすぎない。


パアン...

「ぐはぁっ!誰だ!俺の食事を邪魔しやがっ―― がぁああああ!!!!!!」


カツン...コツン...

「あーあ、無様だねェ。もーちょっとなんとかならんかなぁ。死に際。」


―― たまたま、通りかかった少女がワケありだったのは、偶然でしかないのだ。


「...おやおや、仲間もいるのかい?そぉかそぉか。なら、」


―― だが、彼女と会うのは二度目であり、それでさえも、"偶然"なのだから。


カチャ...

少女の背中から、まるで翼のように斧や剱が飛び出した。


「一気に殺るには、斧がいいかな?」


その中から、斧を抜き取って、自分を囲っている半人半獣にむかって突き出した。


「ほんっとに、どいつもこいつも、」


少女は、その銀と赤のオッドアイを細めて嗤った。


「腐る程面倒臭いねェ。」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ピッピッピという電子音で目が覚めた。全身が何かで固定されているようだ。ピクリとも動けない。


どうやら、透明なカプセルの中のようだった。透明だから、外が見えるのだが、何処かはわからない。

青いライトに包まれた部屋は、不安な気持ちを余計に煽った。

医療機器なのか、ディスプレイに波線が映る。


息苦しい。

ふと、横腹に激痛が走る。混乱する脳内を整理すべく、もう一度目を閉じた。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


僕の名前は、九条くじょう 碧斗あおと一応高校生。


たしか、行きつけの書店(立ち読みしても怒られない)でいつものように立ち読みをしていた。最後、主人公が言ったセリフが未だに頭の中で渦巻いている。


「人は、いつのときも自分のために生きることを忘れている。」


そして、本を閉じ、歩き出した――


と、思ったら、スクランブル交差点そっくりな交差点で佇んでいた。

そこで、若いに~ちゃんに声をかけられた(僕よりは年上だけど)。

そしたらなんとまあ、ライオン(?)に変身して、僕を襲ったんだ。


死にかけだった僕は、民間人に助けられ、に~ちゃんはツインテールの少女がやっつけてくれた。(に~ちゃんその他)


Q. 何故僕はいきなり交差点に放り込まれたのでしょう。

A. 誰かが召喚したからです。


ていうことになるのは(異世界召喚モノでは)必然的だ。

僕を召喚した美少女は何処に?


おーい、勇者碧斗のお出ましだぞー。出てこーい。



だが、勇者がガッチガチに固定されていると来れば、向こうから出向いてもらうほかない。

街中で困っている少女を助けるという夢は、儚く散ったわけである。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ガチャ...


「あ、ルーシェ!お疲れ様。」


誰かが部屋に入ってきたようだ。返事をしたのは、もともとこの部屋にいた人物だろう。


「まったく、雑魚しかいなかったんだが。」

「いいじゃない。平和がいっちばん!ね?」

「しかもよ、雑魚のクセに魔術使いやがってさ、抵抗するから血がすっげぇ飛んだわけよ。見ろよ、これ」


カチャ...


「うっわぁー、斧の色変わってるじゃん。最近メンテナンスしたばっかじゃない?」

「ほんとだよ、まったく...」


―― いっこうにきずいてもらえない。

僕は手を固定しているテープを剥がすと、カプセルを叩いた。


コンコンコン


「あっ、起きた?」


カプセルが開けられた。僕の顔を、金髪の女性が覗き込む。


金髪をお団子にし、大ぶりのピアスをつけている。


「起き上がらなくていいからね。はらわたが真っ二つだったもんだから、手術大変でさー。」

「生身の人間なんて初めてなもんで、結構時間かかったんだが。」

耳下ツインテールの少女が、女性の隣に並んで言う。「心臓って本当にあるんだな。」


銀と黒のメッシュ。ぼやけた霧のような記憶には、その髪色に覚えがあった。


―― 何を言ってるんだ?


「でも、医学部もよくわかったわよね。生身の人間だって。」

「生存者がいたらしいぞ。」

「へェ、さっすが」

女性はカプセルの隣にある電子機器をピッピッピといわせている。

「あたしなんて、生の臓器見たら気絶するかも。」

「同感だ。」


――話についていけない。


「あ、あの!」

二人が振り向く。

「なに?」

「えっと...」


―― ちゃんと言わなきゃ!


「さっきから、生身の人間って言ってますけど、一体...その」

言葉が見つからない。


ふと、金髪の女性が口を開いた。

「やっぱりかぁ。首領が言ってた、"異常"って。」

「なんだ、今回は生身の人間なのか?」

「前と比べりゃ、まだマシじゃない?前なんて、交差点にシロナガスクジラだっけ?」


―― ますます分からない。


「あの...」


ガチャ...

部屋に男が入ってきた。黒い外套をはおり、シルクハットを被っている。

すると、女性と耳下ツインテールの少女は男の前にひざまずいた。

「お久しぶりです、首領。」


―― この人が、首領...?


「例の少年は何処かね?」

「こちらです。」

首領が僕の顔を覗き込む。


「初めまして、"異常"の少年。」

「あ、お初にお目にかかります...」

首領はにこりと微笑んだ。優しそうなおじいちゃんという印象を受ける。


「君は、この世界の子ではないね?」

「そうです...多分。」

「多分とはなんだね...おい、ルーシェくん。」

首領が、後ろに立っていたツインテールの少女―ルーシェに声をかけた。


「なんでしょう。」

「ちゃんと説明したのかね?彼はこの世界のことをまったく知らないそうじゃないか。」

呆れたとばかりに首を振る。

「申し訳ございません。」

ルーシェは何の感情もなくこたえた。


――だいたい察しはついてますけど。異世界でしょう?


「じゃあ、ちょっと昔話でもしてやろう。」

ルーシェはカプセルの前の椅子に腰をおろして話し始めた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


―― 此処は、東東京國という国だ。

17世紀ほど前、人類が謎のウイルスによって大量に死体が上がっていたころ、突如、海から島が姿を現した。

驚いたことに、その島は特殊なバリアで護られており、ウイルスの被害をまったく受けないということがわかった。


すぐさま、人々は移住を始めた。


しかし、そこに適応するためには、人体を改造しなくてはならなかった。

当初、機械を体に埋め込む予定だったが、人体がそれに耐えきれず、壊れてしまった。

仕方なく、機械に皮膚を貼り付け、ロボットにせざるを得なかった。


そこに、魔術によって、獣と人体を合成させようとした組織が現れた。

もちろん、皆そこへ行った。人体を壊される心配もないからねえ。


だが、生まれたのは悪夢だった。まず、肉しか食えない体になってしまった。草食動物と合成させても、だ。

次に、魔術を使える。これは絶望的だった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「―― この国はな、魔術で作られたバリアで護られている。獣と人間の合成―半人半獣は、この国に眠る魔力が欲しいがために、たまに不正に入国してくる奴らがいるんだ。今回、お前がやられたのはその集団だ。」


――はぁ、なんかすげぇ。想像してた異世界とはちょっと違うのか。あんまりファンタジーファンタジーしてないな。


「此処―東東京國保安隊は、そんな奴らからこの国を守るために存在する。」


―― でも、それは警察がすることじゃないのか?


窓から見える景色には、KOBANと書かれた建物がある。


「それと、もう一つ。」


ルーシェはその長い指を一本伸ばした。


「この国の魔力は全て、"アリス"という人物によって護られている。――今は眠っているが。

そして――」


「アリスは、この地球を守っている。彼女の死は、再生世界の死を意味している。私たち東東京國保安隊は、アリスを守るためにも存在しているの。」

最後の方は、女性が引き取った。


「アリスを目覚めさせることで、また、世界は動き出す。この孤島から解放されるんだ。」


ルーシェがボソッと呟いた。その憂いを帯びた横顔に、ドキッとしてしまう。


――でも、なんで僕がこんなところに...


「そして、"異常"というのは...」


ルーシェはここであくびを一つ。説明めんどい感がまるだしだ。


「異世界転生なんか、よく聞くだろう?転生してきたやつは、そこで悠々自適ライフを送ってくれて構わないのだが、たまに何らかの事情で無理やり連れてこられる場合があるんだ。そいつはたまにすっごい能力を転生早々に発揮するんだが...」


僕を羽虫を見るような目で見る。なんだか僕が悪いことをしたみたいだ。


「なんの事情で連れてこられたのか分からないやつを、この世界では"異常"と呼んでいる。異世界によって違うがな。」


詳しくはWebでなどと言い出しそうな雰囲気だ。

ルーシェは立ち上がると、僕を固定していたテープを剥がしていく。


鼻と鼻がぶつかりそうな距離に、ドキッとする。彼女はすっごいかわいい。街を歩いたら、絶対に振り向くタイプだ。

銀と黒のメッシュの髪に、銀と赤のオッドアイ。

殺された半人半獣も本望だなと呑気に思う。


銀と赤のオッドアイの中に、何かが見えた気がした。


そのときだった。

頭を電撃のようなものが走り、体を貫いた。脳内が、紅く赤く染まる。


「...はっ...!」


幼女の嘲笑う声が聞こえる。


時限装置銀と赤のオッドアイ革命の朝引き裂かれた命運命始まりは終わりを告げ終わりの始まりが始まる終わりない螺旋階段醜い運命さよなら悪魔さよなら妹さよなら天使


「うぐぐ...がぁっ!」


電撃は痺れを増し、耐え難い痛みが体を襲う。カプセルを何度も何度も蹴る。


わたしのために生きる愚かな姉さよならを認めない愚かな姉時限装置と銀と赤のオッドアイ


―― 誰の記憶だ?あぁ、赤い、赤い、これは血?誰かが叫んでいる。あぁ、誰の記憶だ?誰の?だれの?ダレノ?



「少年っ!」


パシンッ...


頬に平手打ちをくらう。ハッと我に返ると、皆の視線を感じる。


――うわぁぁ...取り乱すとか恥ずい...


ふと、手のひらの熱さに気づく。手のひらを見ると、魔法陣のようなものが浮き出ていた。

それは微かに動いているようだった。気味が悪い。


「少年、大丈夫か?...なんだこの魔法陣は――」

ルーシェがのぞき込む。

反射的に手のひらを隠した。「これは...その」

「見られたくないのならいい。」

一瞬怪しむような目つきで僕を見つめたが、その視線を首領に向ける。


―― なぜだろう、"見られたくない"と感じた...


誰かの操り人形になったかのような気分だ。腕を見たら、細いピアノ線でもついてそうで怖い。


「首領、やはり、この少年は...」


「うむ、そうだな。」


首領が頷く。それを見たルーシェと女性は、一瞬ハッとしたが、うつむいてしまった。


―― ど、どういう状況?


「わかりました。」

ルーシェが重い口調で、僕に接続されていたコードを抜いた。「行くぞ、少年。」

「ど、どこにですか...」

「...」


―― 何か言ってよ。こわいわ。


「どこに連れていくのかね?」


僕の手を引いて部屋を出ていこうとするルーシェを首領が呼び止める。

ルーシェは振り向くと、

「はい?」

間の抜けた声を出した。わけがわからないというように首を傾げる。


「処刑じゃないんですか?彼はこの世界に悪影響を及ぼす可能性が...」


「さっきから何を言ってるんだね?」


「「?」」


女性とルーシェの頭の上ははてなのオンパレードである。僕もだ。さっきからこの人たちは何を言ってるんだ?


「彼には、此処―東東京國保安隊戦闘部隊に入隊してもらう。」


「「はい?」」


僕と女性とルーシェが同時に聞き返した。




お読みいただきありがとうございました。

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