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二日目の晩ご飯。

週間ランキングにも乗れました!応援ありがとうございます!嬉しいから今日も更新します!

 かなりの時間が経過して、晩ご飯の準備をするべき時間になった。担任は「ラーメンを食べに行く」と言い残し、特大の排気音と共に去っていった。

 僕はみんなを引き連れて炊事場へと向かう前に、迷惑をかけてきた連中の部屋の冷蔵庫を勝手に開けて、残りのバターを頂いた。おまけにとある部屋には未成年飲酒をしていたのか白ワインが少し残っていた。全くもってけしからんので僕が押収する。まあ迷惑料ということでここは一つ。

 炊事場に到着するとそこには木に縛り付けられた元襲撃者たちの姿があった。


「……」


 僕は何も見なかったことにして淡々とご飯の支度をすることにした。多分蜃気楼かなんかだよね。


「カキニー米研いでおいて」


 僕はおかず仕上げるからと言い、気を取り直してまずは昆布出汁を鍋に取り温める。沸騰する直前でノビルの根っこを入れて火から下ろす。これであとはノビルの葉と味噌を入れればいつでも味噌汁になる。

 次に炒め物だ。味噌をみりんで伸ばして砂糖を入れたタレをまず作る。ピリ辛にしたいので唐辛子も少し入れよう。タレができたら油を引いた鍋を熱して、鶏肉、ナス、きゅうりの順で手早く炒め、タレを絡めて水分を飛ばすように炒める。きゅうりがごくわずかに透明になってくれば出来上がりだ。


「あとはアマゴだね」


 アマゴとタマゴタケは……面倒臭いし炒め物にしちゃえばいいか。僕はタマゴタケの汚れを洗い流した。流派によっては「きのこを洗うなどとんでもない!」って言うかもしれないけど、僕は付着してる土とか葉っぱまで食べたくないからさっくり洗い流す。

 綺麗になったタマゴタケは大きめにちぎる。アマゴは半身を半分くらいの大きさに切って炒め物用にした。中骨と頭は……軽く焼いて味噌汁の鍋に入れておこう。

 本調理だけど、やることはとにかくシンプルだ。タマゴタケは馬鹿みたいに旨味が強いので、それを邪魔しないように少しの味付けで旨味を引き出すだけでいい。

 まずは鍋にバターを落とす。有塩バターだったし、アマゴの切り身も塩してあるから追塩はほとんどいらないだろう。ちなみにここでバターの量をケチるときのこが脂を吸い、全体に対して脂が不足してしまうので豪快に沢山入れる。きのこの色がツヤツヤしてきたらアマゴの切り身を入れ、白ワインを少し入れたら蓋をして少しだけ蒸し焼きにする。最後に蓋を開けて水分飛ばしつつ炒めれば完成だ。


「おーい、こんなん見つけたんだけどなんかできるか?」


 完成間際にゆっちーとしなのんがアホみたいな量のクレソンを持ってきた。話を聞くとどうやらやることなくて暇だったから川辺まで散歩しに行ってて、そこで見つけたらしい。

 ため息を吐いて、山のようなクレソンを受け取った僕は、仕上げ段階のきのことアマゴの炒め物にクレソンを鬼のように投下、バターと塩胡椒をドカドカ追加して炒めなおした。クレソンがしんなりすれば完成。


「おーい、そろそろ米炊けるぞー」


 一息ついていると天明屋さんから声がかかった。僕は味噌汁の出汁を再沸騰させ少し煮込み、ノビルの葉を適当に切って投下した。火から下ろし味噌を溶かして完成だ。


「じゃあご飯にしよっか」


 今日のメニューはきゅうりとナスと鶏肉の味噌炒め、クレソンに埋められたきのことアマゴのバター焼き、ノビルの味噌汁、米、それと


「じゃーん、ハヤの南蛮漬けかなりいい感じだよ」


 おお、とどよめきが起こる。ゆっちーに至っては両手で箸を持っている。他の面々も獣のような目をしていたので、争奪戦になる前に僕は自分の分を取り分けてから音頭を取った。


「じゃあ食べようか、いただきます」


 みんなは自分が狙ってたおかずに飛びついた。ゆっちーは味噌の香りが暴力的な炒め物、バターの匂いにやられたカキニーと天明屋さんはバター焼きの前で地獄の争奪戦を繰り広げている。その横でしなのんはどの品もちょっとずつ、南蛮漬けを心持ち多めに取って静かに食べ始めた。


「バカばっかだね」


「そうだな、これは酷い」


 二人でため息を吐いて、僕らはそれぞれ箸を進めた。


「まずは味噌汁から」


 一口飲めば分かる、強烈なネギの香り。それを上品な昆布とアマゴの出汁が下支えして、味噌が全てをまとめている。僕は味噌汁を飲み干して、いったんおかわりを注ぐことにした。幸いなことに奴らはまだ味噌汁に目をつけていないようなので、これは最悪僕が独占しても怒られないだろう。

 次に味噌炒めの方を食べる。ナスと鶏肉は言わずもがな美味しいが、意外なことにきゅうりもすごく良いのだ。噛むとポキュポキュとした、生と加熱後のちょうど間にある心地良い食感があり、炒めたことでほどよく抜けた水気のおかげできゅうり本来の旨さがより強く楽しめる。もろきゅうなどきゅうりと味噌が合うことは周知の事実なので、タレとのマッチングも完璧だ。

 続いて南蛮漬けを食べてみる。うん、きちんと揚がったみたいで骨まで食べられるし、お酢で柔らかくなってるからさらに食べやすい。身の味は淡白だけど川魚の風味はきちんと残ってて、そこに油と野菜とお酢が重なりとても良い。

 かなりたくさんあったけどこれはすぐなくなっちゃうだろうなと思い顔を上げてみると、南蛮漬けだけではなくその他の皿もほぼ空になっていた。しかもしなのんまで争奪戦に加わってしまって収拾のつけようがない展開へと突入しつつある。南蛮漬けは鷲掴みにして食べるもんじゃないんだけどなあ。

 見ていて疲れてきた僕は自分の皿に目を戻し、最後の一品であるアマゴとタマゴタケとクレソンのバター焼きに取り掛かることにした。


「まずはタマゴタケから」


 火を通しても何しても頼りない食感であることに変わりはないけど、相変わらず旨味の凄まじいきのこだ。舌にべったり張り付くというかなんというか、とにかく食べてみないとわからないが、味の暴力を振るっていることは確かだ。味の素もなんも入れてないのにこれはすごい。


「次にアマゴ」


 やはりサケの仲間はサケみたいな調理法にすれば美味しい。足りない脂をバターで補い、淡白な旨味と濃厚なきのこの旨味が重なり、凄く良い味に仕上がっている。身の塩気もちょうどよく、単品でもご飯と一緒でも美味しい。


「最後はクレソンかあ」


 闖入者であるこいつはよくハンバーグの横の添え物扱いをされているが、バターで炒めるとクセのない風味と食感があり、多分人によってはほうれん草より旨いと言うかもしれないステキ食品なのだ。僕の家の近所にはないが、なんかこうやってたくさん取れた時は必ずと言っていいほどバター炒めにする。

 さてそんなクレソンをベーコン以外と炒めるのは初めてなんだけど味の方は……


「おっ」


 思わず声が漏れた。きのこの旨味とアマゴの風味が溶け込んだバターを絡め取り、それを爽やかな食感と香りでうまくまとめている。たしかにきのこもアマゴも旨い、だけどクレソンがないと完成していないような気すらする圧倒的な包括力。一流の画家と最高の絵具を用意しても描くカンバスがなければ全て無駄になる。まさにそのカンバスこそがクレソンなんだ。

 アマゴとクレソン、きのことクレソン、全部一緒になど、様々な食べ合わせを楽しんでいると、僕の目の前から料理は全てなくなっていた。


「ご馳走様でした」


 一人静かに手を合わせ、食器を下げる。食卓では色々なものの最後の一口を巡って未だに熾烈な争いが続いていた。

 

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