カードゲーム の向き不向き。
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天明屋さんに戦の終わりを告げ、僕たちは室内へと戻った。ゆっちーとカキニーは頭に鍋を被り防御の準備を整えていたようだが、そもそも防御になってないし、おまけに見た目が間抜けだ。
「戦いは終わりだよ」
とっとと鍋を洗ってこいと二人を部屋から追い出したタイミングで、入れ替わるように担任が入ってきた。
「なあお前ら、外に死体が落ちてたんだけどなんか知らねえか?」
「同士討ちで滅びました、いやー食糧難って怖いですね」
「あー」
なんか一人で合点がいったようだ。それならいいや、説教はあいつらにすると言い残し、担任はゆっくりと去って行った。そしてしばらくして怒声と何かを殴りつけるような音、それと悲鳴が遠くから聞こえてきた。一体どんな方法で教えを説いているのか僕には見当もつかないが、晩ご飯には邪魔が入る余地もなさそうだ。
「……まあもう敵襲への心配はいらないね」
僕は意識を切り替え、冷蔵庫に押し込められていた残りの食材を全て持って炊事場へと再び向かった。
「じゃあやりますか」
残りの食材はノビル、きゅうり、鶏肉、タマゴタケ、ナス、玉ねぎとにんじんが少しずつ、あとは沢山のハヤとアマゴか……。よし決めた。
献立が確定したので、まずはにんじんと玉ねぎを細い千切りにする。次に、お酢、醤油、砂糖を混ぜて、やや甘めの南蛮漬けのタレを作り、そこに昆布の切れ端を入れ旨味を補強する。それが終わったら鍋に油を入れ、持ち込んだ片栗粉を軽く付けたハヤを熱した油に入れて揚げる。揚がったハヤは油を切りタッパーに移して、野菜と一緒にタレに漬け込む。これであとは冷蔵庫で冷やしておけば南蛮漬けの出来上がりだ。
次に鶏肉ときゅうり、それとナスを一口大に切りそろえておく。鶏肉だけ塩、酒、胡椒に漬けておく。これらはあとで味噌炒めにする予定なので、これは夕飯の直前にでも火を通す。下ごしらえは完了。
アマゴは三枚に下ろしておく。身に薄く塩を振り、キッチンペーパーとラップで包んでおく。
あとは空きペットボトルに昆布を入れ水を注いで出汁の準備をしたら、下ごしらえや時間のかかる調理は全て完成だ。残りは夕飯時に済ませよう。
僕は下準備を終えた食材を再び室内の冷蔵庫に入れ、夕飯時まで時間を潰すことにした。
「ところでさあ、僕たちまだ林間研修とか修学旅行でありがちなこと何もしてないと思うんだよね」
「急になんだ?」
僕は冷蔵庫にものをしまい終え、みんなに向き直りこう言うと、ゆっちーはてんで何がなんだかわかっていない顔をしていた。
「いやだからさ、トランプとかそういう感じのあるあるをまだ一つもやってないなあって」
「なるほどな」
誰かトランプ持ってるか?とゆっちーが聞くが、生憎誰一人としてそのような気の利く人間はいないようだ。かなしい。まあそんな気はしてたよ。
「じゃあ誰かみんなで遊べるもの持ってる人いる?」
「あ、俺持ってるぞ」
そういうとしなのんはゲーム機を一つ取り出した。だいぶ昔に音速の会社から発売された携帯型ゲーム機だ。
「いくつある?」
「一つ」
「どうやってみんなで遊ぶの?」
しなのんは黙り込み、それを鞄へしまった。
「私なんにも持ってきてないわ……」
まさかこんなに仲良くなるとは思ってなくてさ、と悲しいことを言う天明屋さんから僕は思わず目を背けた。思わずしんみりしてしまった空気に対して僕はなす術が無く、誰かなんとかしてくれよと他力本願なことを考えていた。
しばしの沈黙。それは突然闖入してきた担任によって妨げられた。
「おーい、お前らしか生きてねえからお前らが暇つぶしの相手になれよ」
そう言って粗暴な担任は僕らの空気感など微塵も気にせず、大量のカードゲーム をぶちまけた。
「ウノにトランプ、他にも色々あるぞ、ほら遊ぶぞ」
そう言って担任はトランプを猛然とシャッフルしてカードを配り、ババ抜きの開催を宣言した。
「友達のいねえお前らのために一応聞くけどババ抜きのルールはわかるよな?」
「失礼な、それくらいわかりますよ」
それは上等と担任は言い、俺から時計回りだと告げ横に座っていた僕からカードを引き、そして重なったカードを捨てた。
次は僕の番なので天明屋さんからカードを引く。やたらと真ん中のカードを押し出していたので左から二番目を引き、重なったカードを捨てると天明屋さんはわかりやすく舌打ちをした。
この子ゲーム向いてない気がする。そんなことを思いながら順番は進んでいき、分かり易すぎる天明屋さんがドベになってババ抜きは幕を閉じた。
「ちくしょー!なんで誰もババ取らないんだよ!」
そりゃ誰も引かないよ、分かり易すぎるもん。
「もう一回だもう一回!」
それから何度繰り返しても天明屋さんがドベになり、彼女がふてくされ始めたあたりでゲームを切り上げウノをすることにしたが、やはり天明屋さんがスキップやリバースの被害に遭いまくり、華麗なドベを決めていた。かわいそうに。まあ僕も負けなくないから天明屋さんにヒントを上げたりはしないんだけどね。
天明屋さんは叫ぶ、されど上がれず。見てて飽きないなと思いながら僕はいつ晩ご飯にしようと時計を見ていた。
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