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再集合と昼食、抗争。

ブックマーク増えてて嬉しくなっちゃったので本日二話目を投稿します。こんなふうに煽てられるとすぐ木に登るので是非応援していただけると幸いです。

 部屋に戻ると得意そうな顔をしたカキニーがいた。話しかけてほしそうにしているので無視して冷蔵庫に取ってきたものを入れようとすると、そこには大量の魚が鎮座していた。


「うっわすご」


 思わず声を出してしまう。カキニーの得意そうな顔はさらに鼻高々となっていた。まあこれは誇れると僕も思うし、多分僕が魚釣ってきてこの成果だったら同じ顔をするだろうな。


「まあ僕たちも負けてないけどね」


 そうぼやきながら僕はきのこや野草、格安の野菜を空きスペースに詰め込んだ。


「ところでカキニー何釣ったの?」


「ハヤとアマゴじゃね」


 ハヤは南蛮漬けがいいとのことなのでそうすることにする。玉ねぎとにんじんが残り少ないがまあなんとかなるだろう。

 お互いの戦利品を称え合っていると、買い出し組からの電話が来た。


「なあ、そういえば何買えばいいのか聞いてなかったわ」


「言ってなかったからね」


 僕は連絡の不備を思い出し、謝りながらお酢と油揚げ、後買えれば味噌が欲しいことを伝え、余った金があれば肉を買うよう頼んだ。

 わかったと短い返事があり電話が切れた。待っている間暇な僕たちは持ち寄ったジュースとスナックをつまみながらダラダラと待っていた。

 しばらくして買い出し組が帰ってきた。


「お金もうほとんど残ってないぞ」


 マジで食いもんが外で取れなかったらおしまいだぜみたいな緊張感のある顔をしている二人とは対照的に、僕らは呑気なもんだった。ゆっちーは親指で冷蔵庫を指し、まあ見てみろよと余裕綽々である。でも君が一番収穫量しょぼいんだよ?まあいいけど。

 そんな僕らの余裕が伝わったのか、付き合いの長いしなのんは笑顔になり、天明屋さんはついに頭のネジが外れたかと言った目で僕たちを見てきた。しなのんはそんな天明屋さんに目もくれず、冷蔵庫を開けて満面の笑顔となった。


「おい天明屋、ちょっと見てみな」


「なんだよ……ってすげぇ!」


 魚と植物に満ち溢れた冷蔵庫に思わず感嘆の声をあげる天明屋さんを見て僕たちはさらにご機嫌になった。ご機嫌だからお昼ご飯と晩ご飯の準備しようかな。


「じゃあみんな、食材持って炊事場に行こうか」


 みんなもテンションが上がってたらしく、めいめい好きな奇声を発しながら炊事場へと百鬼夜行の列を作った。


「じゃあまずお昼ご飯から」


僕はカキニーに指示を出した。


「カキニー、アマゴの塩焼き作っといて」


「わかった」


 カキニーは手際よく塩焼きを火のそばに並べていく。ゆっちーには米炊きを命じて、しなのんと天明屋さんには晩ご飯分の薪拾いをお願いした。


「僕も作業しなきゃ」


 時間のかかるものから片付けたい僕は、フキを塩茹でしてアク抜きし、表面の皮を剥いて一口大に切りそろえた。

 横の鍋で昆布出汁をとっておく。取れたら一部は醤油と砂糖、調味料セットの酒を入れて油揚げと一緒にフキを煮る。これで一品完成。

 続いて僕はオクラのヘタを取り板摺りして、そしてナスを乱切りにした。あとはさっきの昆布出汁の残りでナスを煮て、煮えたら火から下ろし味噌を溶かしオクラを余熱で温める。これで味噌汁の完成だ。

 最後にトマトをくし切りにして塩を振った。これで最後の一品完成。

 諸々の作業を済ませている間に米も炊け、アマゴも焼けたらしい。僕らはテーブルの真ん中にそれらの完成品を並べて、好き勝手よそい、みんなバラバラのタイミングでいただきますをした。

 僕はまずは味噌汁を飲む。なんだろ、普通の味噌汁で特に言うことはないなあ。強いて言うなら暑いから塩気強めにしたのとオクラの滑りが汁に出て飲みやすくなってるくらいかなあ、オーソドックスでおいしい。

 次はフキの煮物だ。


「おっ」


 思わず声が出る。強いフキの香りが油揚げのこってり感と強めに効かせた砂糖の甘味ととてもよく合う。やっぱ山菜はお上品な味付けより粗野な田舎飯っぽい味にした方がおいしいね。

 一方でアマゴの塩焼きは上品さの代名詞みたいな味がする。塩だけで深いのに淡いという不思議な味がするのは、いい水で育ったアマゴ特有のものだと思う。僕はこれ以上にこの魚の繊細な風味を引き出せる調理法を知らない。焼き加減も良く、身はホクホクなのに皮はパリパリでとても楽しい。一人二匹あったので食べ応えも十分だ。

 トマトはきちんと完熟だったのでめちゃくちゃ甘くて美味しかった。普段は青臭さが気になる場合が多いが、このトマトはその青臭さをねじ伏せるほどの強烈な甘みと旨味を宿していたらしく、なんの問題もなかった。


「いやー、どれもこれもおいしいな」


「ほんまになあ」


 一通り食べ終わってもまだ食材は残っている。僕は晩ご飯の仕込みも済ませておこうと思い洗い物を始めた。

 洗い物が終わるか終わらないかくらいの時、遠方に人影が見えた。それは一つではなく、それなりの人数が存在している。なんだか不気味な感じがした僕はその群れをしばらく眺めていた。すると奴らはこちら側へ向かってきたのだ。面食らった僕は食後の雑談をしていた面々を呼び出し、警戒態勢に入ることにした。


「なあ、あいつら一体なんなんだ?気味悪いな」


 ゆっちーはそう言ってゆっくりとこちらに向かってくる連中を眺めていた。


「まあ気にしすぎやろ、あいつらも飯の支度しにきただけじゃろ?」


「カキニーよく見て、あいつら手ぶらなんだよ」


 僕の指摘に比較的呑気に構えていたカキニーもいよいよなんかおかしいぞと思い始めたようだ。


「なあ、お昼時に手ぶらでこっち、つまりおいしい匂いのする方に来たってことはつまり」


「そうだよしなのん、多分あいつら略奪しに来たんだと思う」


 僕はしなのんの言葉を継いで予想を話した。昨日予算を使い果たし、かつあの森の争奪戦で脱落ないしは全く野草の知識がないものはこうやって略奪で食料を手に入れるほかないのだ。そして、それを裏付けるように先頭の方にいたやつが大声で「飯寄越せ!」と叫び始めた。あーあ、やっぱり。


「カキニー!ここにある残りの食材の避難!ゆっちーもついて行って!部屋の鍵閉めて冷蔵庫守りきってね!」


「「おう!」」

 

 二人はいい返事で今から仕込もうとしていた南蛮漬けの材料や調味料などを抱えて敵の死角を縫うようにして逃げて行った。あの二人はあんまり戦闘能力がないんだけど足は速いんだよね。


「天明屋さんは部屋のドアの前で最終防衛ラインとして立っておいて!」


「任せろ、晩飯に一品ハンバーグが増えるぜ」


 そう言って彼女もカキニーたちが通ったコースで部屋の防衛へ回った。


「ほんでしなのん」


「なんだ?」


「僕と一緒にここで相手の数削ろう、囮兼遊撃だよ」


「一番損耗率の激しい部隊じゃんやだー」


「冗談言う元気があるならいけるよね」


「しゃーねーな」


 この人数が雪崩こんだら流石の天明屋さんでもきつかろう、というわけで僕たちはここで囮をすることにした。


「じゃあいくよ」


 僕はそう言って一匹だけとっておいたハヤを熱したフライパンに入れて焼き始めた。あたりにごま油の匂いが立ち込める。そこに僕は醤油を垂らし、香りの暴力装置を制作した。


「お……おぉ……」


 空腹の略奪者集団はその匂いに釣られるようにゾロゾロとこっちへ向かってきた。我先にと勝手に押し合いへし合いしながらこちらへ来るのを見て、僕は一ついいことを思いついた。


「おーい!分けてやってもいいがこの人数に分けるとなると天かすみたいな量しか食えないぞ!少し減らしてくれ!」


 すると面白いように殴り合いが起きた。残り少ない体力を必死に振り絞って近くの人を蹴落とすために何振り構わないその姿はまさに獣であり、人の本性を見せつけてくるかのようだった。

 鈍い音と怒号はしばらくして止み、十人ほどボロボロの人間が立ち残っていた。激しい戦いだったのか息も絶え絶えな様子だ。


「じゃあしなのん、あれを倒そうか」


「鬼なの?」


 僕は小声でしなのんに指示を出す。あまり褒められた指示ではないからか、しなのんが難色を示したけど、じゃああの人数が元気なままで相手できるのかと聞いたら、まあそれよかマシかみたいな顔になった。

 しなのんは手近な鍋を掴むと死に体の相手へ向かって歩いて行った。相手は鍋=食事の簡潔なイメージに支配されているのか、街灯に集まる虫のようにふらふらとしなのんの方へと向かって行った。


「じゃあたっぷり食らえや」


 そう言ってしなのんは鍋をフルスイングした。ぐわんと大きな音が鳴る。それが開戦の合図だった。

 突然の事態に処理が追いついていない他の人に近づいては沈めていくしなのんを見て、何人かはフリーズからの復活を果たしたが、残念なことに体力が既に切れている。しなのんの拳を避けるだけの余力は残っていないだろう。案の定数分で全員が地面に沈んだ。


「ふう」


「おつかれ、ご褒美に焼いたハヤあげるよ」


 僕はそう言ってからりと揚げ焼きになったハヤをしなのんの口に放り込んでから、意気揚々と部屋へと引き上げた。

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