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部屋割り問題

週一投稿とかしてみたいですよね(不可也)

後片付けを済ませ、僕達は縄で縛っておいた半死半生のミノムシ三つを森に捨ててから部屋へ戻った。崖から突き落としたので上手くいけば川を渡ってくれるかも知れない。


「あいつら帰ってくると思うか?」


「早ければ彼岸にでも」


部屋で彼らの死出の旅に想いを馳せるのを一旦やめて、クーラーの効いた部屋で僕は気になっていたことを聞く。


「ところで、しなのんと天明屋さんはしれっと僕たちの部屋にいるけど、自分の部屋には帰らないの?」


「いや、一人で四人部屋はきつい」


それに味気無すぎだろ、としなのんはため息をつく。


「班で一部屋だから、ウチの部屋はここだぞ?」


何言ってんだお前みたいな目で天明屋さんは僕を見てくる。いや、え?


「しなのんはまあ、いいんだけどさぁ。天明屋さんは女の子だよ?男女七つにして席を同じうせずとか古臭い事は言わないけどさ、さすがに高三にもなってそれはまずくない?」


おおよその人が一般常識として捉えていることを滔々と一席打つ。するといきなりゆっちーが掴みかかってきて、


「馬鹿野郎!折角美少女が無自覚で俺らに風呂上がり寝顔を始めとしたサービスショットをばらまいてくれるというのに貴様はそれをフイにする気か腐れ外道め!」


と、小声で絶叫してきた。そんなこと言われても、と戸惑っていると、「聞こえてんだよイカれド変態」と声がして、ゆっちーが吹き飛んで壁にぶつかりそのまま動かなくなった。ゆっちーがいたはずの場所には天明屋さんの拳がある。


「それにだ、あのアホ担任が男子の班に混じった女子を別の部屋に振り分けるなんて人の機微が分かったことをすると思うか?」


「おっしゃる通りで」


拳に向かって話しかけるような間抜けな絵になるけど返事を返したら、天明屋さんは「そういうことだ」と言って拳を降ろす。


「ちゅーか、もう男子でこの部屋使うて、天明屋さんには悪いんじゃけどしなのんの部屋に移ってもらうんでええんじゃないん?」


カキニーがポツリとこぼした案に、意識の無いゆっちー以外は『それだ!』みたいな顔になる。しかし。僕らのモラルに溢れた案は、天明屋さんが、


「いや、この林間研修中ずっと一人部屋はちょっと……」


と、しなのんみたいなことを言い出したことでボツとなった。


「どうしたものか……」


会議は振り出しに戻り、みんなが自分の中で堂々巡りを繰り返す中、ゆっちーが復活した。


「だから、天明屋さんもしなのんもここに泊まればいいんじゃねえの?」


天明屋さんもそれでいいか?と、自然な感じでゆっちーが聞くと、天明屋さんは頷き、それを見た瞬間またいやらしい顔に戻ったゆっちーを鉄拳で処分した。


「というわけで、この部屋に泊まるから」


まあ、そんな感じで泊まる部屋が決まると、次の問題が出てくる。


「四人部屋だから一人布団で寝られない人が出るね」


僕がそう呟くと、しなのんがすかさず、


「変態は床に寝かせると喜ぶからゆっちーを床で寝かせればいいんじゃないか?」


「採用」


ゆっちーは実際今も床にうつ伏せで寝てるし、よっぽど床が好きなんだろう。流石しなのん、思いやりに溢れてると思いながらベッドの割り振りを決める。

ドアを開けて左右に二段ベッドがあるので、僕は迷わず下の段の左側を取った。ここなら誰か入ってきた時にドアの影になるから逃げたり反撃がしやすくなるからだ。万に一つも無いとは思うけど、森に捨てた三人がリベンジマッチに来た時の備えだ。なお、僕の上の段には天明屋さん、通路を挟んで右下はしなのん、上はカキニー、ゆっちーは床、完璧な布団の割り振りができた。


「じゃあ、次はお風呂の時間だね」


時計を見るに今は七時。僕たちの班はこの十分後からお風呂だ。だらだら準備してから移動したら丁度それくらい経つだろう。

気絶しているゆっちーを起こすような優しさは誰も持ち合わせていないので、ゆっちーを除く面子で風呂に到着すると、丁度一つ前のグループが続々と上がってくる頃合いだった。僕たちはある程度全員が出るのを待ってから脱衣所に入った。天明屋さんは逆方向の女湯へ向かって行った。


「のう、瀬戸くんや」


風呂場に入るなりカキニーがいい笑顔を浮かべてこっちを向いてきた。


「シャンプー貸してくれ」


「お馬鹿」


僕が使ってからね、と言い、頭が洗い終わり次第彼にシャンプーの旅行用の小型ボトルを投げて渡す。


「わしはヴィダル●スーン派なんじゃが……まあええか」


「文句があるなら使わなくて結構」


「使わないとは言っとらん」


ガシャガシャと頭を洗うカキニーの脇腹をつついて嫌がらせをしていると、脱衣所から勢いよく誰かが走りこんできて、


「ステラァァァァァァア!」


と叫びながら風呂に頭から突っ込んでいった。風呂はそこまで深くはなく、ドボォンという着水音の後にすぐゴスッとかガツンッとかそんな感じの音が聞こえて、風呂に飛び込んだ男は土左衛門になった。水の色もどんどん赤くなっていく。

呆気にとられているとまた脱衣所の戸が開き、別の人が駆け込んできて、


「故に!エヌマ・エリ●ュ!」


と叫びながら、土左衛門の上に足から落ちた。土左衛門の背骨が曲がらない方向に曲がり、とんでもなく大きい水柱が上がった。

飛沫が収まるとそこには、より赤くなった色の水と、土左衛門を担いだドロップキック男がいて、ドロップキック男はそのまま風呂から出ていった。


「なんだったんだろ……」


毎年恒例の黒光りな年末特番の茶番を彷彿させる展開に、少しげんなりした。おまけに、今茶番を繰り広げたアホには見覚えが全くない。うちの学年にあんなものすごいのいたかなぁ…….。


「それに、お湯が……」


食紅を打ち込んだみたいに赤い。とてもじゃないけど入る気にはなれない。もう今日はシャワーだけでいいや。

僕がシャワーを浴び終えて出ようとすると、頭を洗い終えたらしいカキニーが風呂に入らんのかと聞いてくるけど君、あの茶番を見てなかったの?

カキニーが風呂に浸かるのを内心で嘲笑いつつ体を拭きパジャマのスポーツウェアに着替える。脱衣所の出口まで点々と赤い痕跡があったのは丁重に無視した。しなのんはどうやらあの短時間でのぼせたらしくて、脱衣所で派手にぶっ倒れていた。後で白のチョークで周りを囲もうと思った。

脱衣所を出て夕涼みの中自動販売機を探してさまよっていると、湯上がりの天明屋さんがどうやらいつの間にか目覚めてしまっていたゆっちーを殴りつけていた。混ぜてもらおうと思って近づくと、天明屋さんの罵声が聞こえてきた。


「おいごらぁ!テメエ、正々堂々と覗きに来んならまだしも下着泥棒たあどういう了見だ!あぁ!?」


「違う!俺はただ転売目的でぶっ」


余計タチが悪いわ!という魂の咆哮と共に放たれた新日式ニードロップがゆっちーの顔に炸裂し、ゆっちーは物言わぬ骸となった。


「……もう寝よ」


混ぜてもらおうとしたはいいけど、想像以上にクソな展開の上に、ド派手な流血を伴うシーンを連続して見続けた僕の心はすでに限界を迎えていた。ぐっすり寝てSAN値を回復させたい。

部屋に戻る途中でトランプなどのカードゲームを持って他の部屋に遊びに行く人とすれ違うたびに、普通にこういう事がしたかったんだけどなぁ、と諦めと現状へのやるせない気持ちが募って、八つ当たり的に楽しそうな人の近くで般若心経を読んでそいつらの気分を盛り下げて溜飲を少し下げた。

部屋は冷房の音しかしない。自分のベッドに倒れこむようにして横になり、明日はいい日になりますようにと願って眼を閉じる。



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