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変態、高校生にたかる。

本日二本目の投稿です。こちらもKarl様の『やしお!』とのコラボ作品となっております。


注意:今回のお話は主人公の瀬戸くん目線ではなく、『やしお!』の主人公の一人、○○さんの目線となっております。

あ、○○の中身は作中に出てきますのでご安心を。


長くなりました、どうぞ。

 美味しそうな匂いで目を覚ました。腹が鳴っている。……待て、ここはどこだ?記憶がはっきりしない。


「チュパカブラ」


 とりあえずUMAの名前を口に出して落ち着くことにする。うん、大丈夫。この山田はいたっていつも通りだ。山田たるもの、いつでも冷静でないとな。

 意識が明瞭になってくると頰に鈍い痛みが走るのを感じた。


「そうだ思い出した、ここは顔面粗品野郎の家だ!」


 頰の痛みと同時に、私はここまで来た経緯を全て思い出した。陸自の駐屯地に忍び込んでギリースーツを頂き、警備の自衛官五人を殴り飛ばし、警官もツブして財布を抜き取った、あの誇らしい名場面の数々を。そして、追ってくる警官の増援を撒き、畑に隠れ、幼気な少年を驚かせて遊んでいたらその少年に殴り倒された忌まわしき過去を。

 腹が、また鳴った。一旦回想を切る。


「いい匂いがするじゃねえか、ゲヘヘヘヘ」


 とりあえず私は本能のお告げに従い、匂いのする方へと歩いて行った。


「鶏肉とバターとキャベツ、みんな違ってみんないい」


 いい匂いの発生源は台所で、そこでは先程私を伸した少年が楽しげに鍋を振るっていた。


「ようミスター肩甲骨、寝覚めはどうだ?」


 私はフランクさの化身が如く話しかけた。先程までの怨恨を全て水に流してやろうとした。何故なら私はとんでもなく寛大だからだ。

 しかし少年は躾がなっていないのか知らないが、物凄く嫌そうな顔をしてこちらを見、そして、


「寝てたのはあんたじゃん、警察より救急車の方がいいかな?」


 などと嫌味を飛ばしてきやがったのだ。しかし山田よ、ビークール。相手はガキだ。いい大人の女である私がキレてどうするんだ。もう一度笑顔で話しかけるんだ。


「てめえ!この前歯乳歯野郎が!歯茎脱皮しろ!」


 私は中指を立てた。

 すると、少年はにっこり笑って鍋の中に油を満たし始めた。おお、朝から揚げ物をする気か?学生は元気だなあ。しかも、私のフランクさにほだされてご機嫌も直ったようだ、流石は私。


「ヘイヘイどうした!オイルタンク野郎が!漏らしてんじゃねえぞ!」


 私は少年を応援する。中指を立てつつ。

 しばらくして少年は、箸先を油の中に突っ込んで温度を確認していた。そして満足げににっこり笑うと、グラグラ煮立った油の入った鍋を持ってこっちに来た。


「煮え油って、即死じゃない分苦しみが長く続くんだって」


 ん?なんでそんな話を急にするんだ?頭おかしいのかこいつ。まあ、春だし一定数こういうやつもいるだろう。でも、とりあえずなんでそんなことをするのか、動機だけでも聞いてみるか。


「それがどうしたってんだ?訳のわかんねえこと言ってんじゃねえぞコオロギの触覚のくせによぉ!」


「君で実験するんだよ。協力よろしくね」


 えっ。おいおいおい少年、そりゃないよ。


「ちょっと待て、話せばわかる」


「犬養首相はそう言って将校に撃ち殺されたね」


 少年が鍋を上げる。やばいやられる!ちくしょう!こうなったらヤケだ!


「キシャアアアアア!」


 私は奇声を発しながら少年に飛びかかった。


「かかったな!」


 すると少年はニヤリと笑って鍋を引っ込め、代わりに突っ込んできた私に蹴りを入れてきた。


「ヘムッ」


「油なんて使うわけないじゃん勿体無い。これはアスパラのフライ用だよ」


「騙……したな?このへっぽこプリンめ」


 私の意識はそれを最後に暗転した。















 もう一度美味しそうな匂いで目を覚ました。どうやら彼は朝食をとっているらしい。蹴られたことはムカつくが、ここは朝飯のために堪えてご相伴に預かろう。

 私は彼の近くへ行き、話しかけた。


「飯をくれ。金なら払う」


 そう言って私は警官から奪い取った財布を少年に差し出した。一応私も金を持っていないわけではないのだが、やっぱ人の金で食う飯ほど美味いものはなかなか無いので警官の金で食うことにしたのだ。


「いらないよ」


 なんと優しい少年だろうか。彼は食べ物を恵んでくれるらしい。


「だってあんたの分無いし」


 違った。


「おい待て烏賊のゲソみたいなお前」


「どういうセンスのあだ名なの?」


「いいから飯をよこせ、腹が減った」


「だから無いんだって」


「いやだいやだいやだいやだ!ご飯食べたいいいい!」


「うわあ!いい大人が駄々をこねるな!気持ち悪い!」


「ご飯!ゴハンンンン!」


「ああもう分かった!あげるから!あげるから静かにして!」


「最初からそう言えよこの筋繊維糸ミミズ野郎」


「……絶対に通報する」


 彼はぶちぶち言いつつ台所へと行き、私の分の膳を用意してくれた。どれどれ、メニューは……


「アスパラベーコンとチーズのフライ、ご飯、鶏とキャベツのバター炒め、ワカメと豆腐の味噌汁、目玉焼き」


 少年は無愛想にメニューを紹介しながら配膳してくれた。どれもこれも食欲を刺激する匂いだ。


「うむ。なかなかだ。いただきます」


 私は手を合わせて、味噌汁から飲み始めた。


「うわっ美味し!」


 今まで私が飲んできた味噌汁とは段違いの美味しさだった。味噌の風味と鰹の香り、昆布の優しさが口一杯に広がる。ワカメもシャキシャキしていて、乾燥のカットワカメなんかじゃなくて生のワカメを使っていることが伝わってくる。

 次に、トリとキャベツの炒め物に箸を進める。


「ひゃー!」


 バターのこってり感ととトリの旨み、キャベツの甘みが口の中で同時多発テロを起こした。さらに時々黒胡椒が顔を出し、ゲリラ戦を展開する。あまりの暴威に私は無条件降伏するしかなかった。

 でも、ここで満足するわけにはいかない。まだ食べてないメニューがあるんだ。というわけで、私はアスパラベーコンチーズフライに手をつける。


「名前からして最強なんだけど……」


 一口齧ればそこは西洋。チーズの芳醇な風味にベーコンのスモーク臭、アスパラの食感がどうしようもないハーモニーを奏でる。これはいけない、中毒になる。


「待って、全部食べちゃダメ。これにはまだ先がある」


 あまり美味しさに飲むようにフライを食べ始めた私を遮る少年。なんだ?食事の邪魔をするならたとえ年下だとしても容赦しないぞ?


「フライに、目玉焼きの半熟になった黄身をつけて食べるんだ」


 この少年、なんて恐ろしいことを言うんだ。ただでさえ合成麻薬レベルの依存性があるこのフライに、更に依存性の塊である半熟卵の黄身をつけるだと……?


「さあ、つけて」


 私は誘惑に抗えず、彼のアドバイスに従う。そして、金色に輝くその上着をまとったフライは、ある種の神格を感じさせる美しさだった。私は堪らずそれを頬張る。


「……ここに住む」


「やめて」


 それから先はやり取りの記憶がない。ただ、正気に返った今、皿の上に卵の白身一欠片も無いのを見るとどうやら私はよほど夢中で食べていたらしい。


「ごちそうさま」


「お粗末様。ドン引くくらいの食べっぷりだったよ」


 彼はそう言って食器を下げてくれた。なんたる気遣い。


「やっぱここに住む」


「やめて」


 彼は食器を下げるとこちらへ戻ってきて、私の向かいに座った。


「そう言えばまだお互い名乗ってなかったね変態さん。僕の名前は瀬戸、瀬戸 内海。今からあんたを警察に突き出す男の名前だよ」


「名乗りを受けたからには返さなければ失礼だな、私は山田だ」


「じゃあ山田さん、一つ聞いていい?」


「好きにしろ」


「山田さんってどこの人?この辺は知り合いしか住んでないから、ずっと気になってたんだ。女性自衛官ってほど鍛えられているわけでもないし、第一こんな辺鄙なトコにこんなハイレベルな変態は普通いないもん。本当に一体全体どこから来たのさ?」


「ああ、なんというかな……」


 私は少し言葉に詰まる。的確な言葉が中々見つからない。


「なんというか、その、異世界だ」


「異世界?救急車呼ぼうか?」


「いや、本当のことだ信じてくれ」


「そんなギリースーツ一丁で信じてって言われても……」


「じゃあ脱げばいいのか?」


「脱がなくてよろしい」


 下らないやりとりをしていると突然、チャイムが鳴った。


「ちょっと待ってて、はーい」


 少年、瀬戸といったか。が玄関へ向かうと、聞きなれた声が聞こえてきた。


「あの、すみません。岡田と言うのですが、ここに山田と名乗る狂人は来てませんか?」


 狂人とは失礼な。私は岡田に飛びかかった。


「なんだと!このマザーファ○カーが!」


「なんで毎回そんな酷いあだ名なんですか!?」


「え?ええっと、どういう状況?」


 瀬戸が戸惑っている。仕方がないので私がこのクソアマと知り合いであるということを言おうとすると、一手先にクソアバズレが、


「私、元いた世界から抜け出して勝手にこっちに来た山田を連れて帰りに来たんです」


 相変わらず頭に?を浮かべている瀬戸。やはりここは私が、


「まあ、要は迷子を連れて帰りに来た保護者です」


「誰がだ!ふざけるな!」


「ふざけてません!さあ、さっさと帰りますよ!また人様に迷惑かけて……」


「嫌だ!私はここに住むんだ!」


「ワガママ言わないの!」


「キエエエエエ!」


 あの、と、瀬戸が声をあげた。私たちは一旦黙る。


「その山田、強盗致傷と建築物侵入、障害と公務執行妨害、窃盗を行っているので、警察に突き出さないといけないんです。なんで、渡してください」


「山田さん!いい加減にしてください!」


 岡田がまた吠えた。


「うるさい!二人してぐちぐちと!あんまり酷いとコメント欄荒らすぞ!」


「いや、僕はただ然るべき場所に連れて行こうとしただけなんだけど」


「山田さん!ここはそういうお話じゃないんです!メタ発言は控えてください!」


「ええいやかましいぞピーチクビーチクと!」


「下ネタもダメ!」


「うおおおおおおおおおお!」


 私はワーワー言われすぎて嫌気がさした。なので全力であの地平線目指して駆け抜けることにする。行動に脈絡が無いだと?ふざけるな。私こそが脈絡だ。行け!我が足よ!フルパワーで回れ!




 ズルッ


「ん?」


 調子良く走り出した私は、何かを踏んづけた感覚の直後、宙に舞った。足元を見るにゲロを踏んだらしい。そして次の瞬間、


「ヘブッ」


 頭部を強打して世界が暗転した。本日三度目だ。やれやれだぜ。









「おう山田、目ぇ覚めたか」


 耳に馴染んだ、低い、よく通る声が聞こえた。


「白滝……?」


「おう、お前朝から大変だったんだぞ?いきなり階段から落ちて、そのままいなくなったんだ。で、その後急にひょっこり出てきたと思ったら気を失ってるじゃねえか、びっくりしたぜ色々と」


「いや、病院連れてけよ」


「そんな金があったら晩酌に回す」


「クソめ」


 しばらく白滝と喋っていると、会話を遮るような無粋な音を立てて部屋の戸が開いた。


「山田さん!」


「なんだ怪人もみじ饅頭」


「違います!ってそんなことじゃないんです!一体いつ帰ってきたんですか!目の前でゲロ踏んでこけたと思ったら消えていなくなったから、私と瀬戸さんすごくびっくりしたんですよ!?」


「ついさっき帰ってきた。瀬戸には『ごめんくさい』とでも言っておけ」


「いい加減にしてください!」


 岡田が叫んだ直後、白滝が声をあげた。


「おい山田、飯何にする?あ、妖怪ヒステリーはボーナスを全部ソシャゲに課金しろ」


「なんですかそのあだ名」


 たく、うるせえな岡田め、岡田のくせに。

 ……ん?飯?てか今飯って言った?


「だからなんにすんだ?重油でいいか?」


「アスパラベーコンチーズフライ、それと半熟目玉焼き」



Karl様、本当にコラボありがとうございました。めっちゃ楽しかったです。

それと、本当にごめんなさい。『やしお!』のキャラがピーキーすぎて私にはうまく扱えず、結果として何度も気絶してもらった上に登場の仕方がかなりクトゥルフになってしいました。批判は甘んじて受け入れます。



ブクマ・評価してくださった皆様、ありがとうございます。その優しさついでによかったら感想もどうですか?(厚顔)

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