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酔っぱらいのファニング

世界が回り頭の中ではインディアンが奇妙な躍りで俺を嘲笑っている。

火を囲んで回りながら踊り歌い大笑いしそれを見ている犬が吠え続ける。

どれもこれも頭に響くモノばかりで頭痛に耐えながら永遠にも思える時間の中でボーッとしていると不意に我に帰る。


ああ、夢か。

いや、夢じゃない。頭痛はなりやまずインディアンの憎たらしい笑顔がアップに見える度に回る荒野が垣間見えた。

酔っているんだ。それも強烈に。

思考がクリアになりつつあるが気を抜けばまたインディアンが踊っていて今にも気が狂いそうだ。

確か、バーに行った。いつも通りウィスキーを頼んだがいくら飲んでもいつものように酔えない。

だからいつもの倍は飲んだんだ。それが失敗だった。

酔ってるかどうかも分からないほど酔っていたんだ。

じゃなきゃ、この狂った世界に説明がつかない。

このまま寝たら確実に死ぬ。そう核心させると生存本能がいつもに増して働いている。


しかし、もう歩き疲れた。

俺もそろそろ奴らの踊りに参加すれば楽になれるんじゃないか?

そう考えて寝床を探している時に石か何かに躓いて派手に顔から地面へとダイブした。

ここでは、少しでも格好をつけるためにこうは言っているが本当は何もないところで躓いた。


体が地面とキスする瞬間に意識が地面をすり抜け深く潜っていく。

本当にダイブしちまうとは夢にも思わなかった。

心地よい感覚に包まれながら顎の痛みによってまた我に帰る。

目を開けると家の近くまで来ていた。

ああ、後もう少しだけ頑張ればこの苦しみから解放される。


そして・・・ああ、ジーザスよ誓ってもう酒なんて飲みません。

貴方が何をした人かなのか、男なのか女なのかも分からない酔っ払いですが緊急事態です。我を救い給え。


汽車のように速い鉄の馬の群れを抜けると喚き声が聞こえた。

俺の家の横で男二人がたむろしてやがる。

もし俺が家でぐっすり寝ていたらこます気だったのか?

今すぐベッドに倒れたい。何としてでも。

しかし、寝ている間にこまされては寝るに寝られない。ヤることは決まっていた。


「おい、ゴミみたいな顔した兄ちゃん。俺はヤられないぞ。」



おおよそ三割ぐらいは聞き取れると思う素晴らしい滑舌で殺し文句を言う。

兄ちゃん二人がこちらを振り向くと本当にゴミみたいな顔だった。

暗がりで分からなかったがこれほどまでに素晴らしく・・・ああ、何だっけ?

つまりは、俺をベロベロに酔っぱらわせたバーテンにそっくりだった。


男二人がこちらに近付く・・・いや、近付こうとした瞬間にガンベルトに手を伸ばす。

重く冷たい最新のレミントンのリボルバーを二発ファニングするが心臓に悪い爆発音は一度だけこだました。

二人の男が風穴が空いた胸を押さえながら地面に斃れた。

これで地に立つのは俺だけとなった。残響が遠くまで響き渡る。

インディアンの地まで届けクソッタレめ。


いつも通りの我が家に入りテーブルにあるコップに入った水を飲み干すと口の中でラベンダーの風味が広がる。

この水はいつ淹れたっけ?そもそも本当に水なのか?

服もガンベルトもすべての重荷を床に投げ捨ててベッドに倒れた。

真横に付けられた窓からは眩しい太陽が顔を覗こうとしている。

こんな頭に響くモノを作りやがって、神もジーザスもクソだ 。

何もかもに悪態をついていると意識が途切れた。

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