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3.とある毒男の接吻痕跡《キスマーク 》 (前)

3.とある毒男の接吻痕跡キスマーク (前)



「うおっ! コレ、動詞どこにあるんだよ……」


 俺、赤松誠は現在、英語の小テストに苦戦中だ。高校の授業が始まったばかりだというのに早速小テストとは、化粧の濃い英語教師も全く性格が悪い。

 長すぎる形容詞句をぶら下げた主語の英文問題は、動詞がどこにあるのかパッと見てもわからない。本当にアメリカ人はこんな英語を使うことがあるのだろうか?


「あぁ~っ! 英語ってホントに五つの文型で全部説明できるのか? 英語ってホント苦手だわ~。日本にいたら日本語だけで全然困らないのに、何で英語なんて勉強しなきゃならないんだよ?」


 実際俺は毎日本を読んでるけど、全部日本語で書いてある。英語が分からなくて実生活や趣味で困ったことなど一度もない。日本語最高。日本語ラブ。


「はい! それまで! テスト、後ろから集めて~」


 英語教師の一声でテストが終了する。俺の高校での勉学ライフはしょっぱなから黄信号だ。と、後ろの席に座っているヤツ(名前はまだ覚えていない)が隣の席のヤツと話をしているのが聞こえた。


「なっ、言った通り小テストあっただろ。隣のクラスからの情報あって助かったわ~」


 なんと、他のヤツらは小テストがあることを知っていたというのか? 俺はぼっちなんで、そんな情報は全く知らなかったぜ。ちくしょう!


 入学式から早くも一週間が過ぎた。相変わらず、俺には友達ができない。依然としてぼっちだ。

 最初の三日ぐらいはそれなりに希望は持っていた。が、一週間たった今では完全に諦めてしまった。俺のコミュニケーションスキルは小学、中学と全く磨かれてこなかったのだ。それが高校生になったからといって、何かが変わる訳ではない。


 向こうから話しかけてくれるヤツもそれなりには居た。しかし、本能的に思わず断って逃げてしまう。というか、上手く返事ができずに気まずい空気が流れてしまう。返事ができたとしても、「うぇっ」とか、上手く日本語にならない。こんなに日本語を愛しているハズなのにどうしてなんだろう? おかしな話だ。


 四時間目の英語の授業が終わり、昼休みになった。俺にとって最大の地獄の時間の始まりである。昼休みは長い。その上、一人で弁当を食べる時間が何と言っても辛いのだ。かといって便所で飯を食うのにはまだ抵抗があった。


 しかし、飯を食ってる時間は気が紛れるからまだマシだ。飯を食い終わっても昼休みは終わらない。本当は本を読みたいのだが、俺の好きな作品はおっぱいの大きなアニメ絵が描かれているので恥ずかしくて読めない。


 飯を食い終わった俺は、仕方なくトイレの個室に引きこもることにした。小中学校の頃はトイレの個室に入るとウンコだと馬鹿にされたが、高校ではそんなことで騒ぐ野暮なヤツは居ないらしい。トイレに入ってカギをしめ、便座に腰かける。まったくもって、暇だ。


 こんな感じで、俺の高校での生活は周囲の目を気にしつつも、一人で空しく時間を潰すのがそのほとんどだった。唯一の楽しみは放課後の帰り道、ショッピングモールの大型書店を覗くことだけである。俺はひたすら今日も授業が終わって放課後になるのを待った。


 そうしてようやく、授業が終わった。あとは担任の独身教師のホームルームが終われば、俺は解放される。教室のドアが開き、アラフォーの担任教師が太った体を重たそうに揺らしながら入ってきた。まだ一週間の付き合いだが、この先生はきっと俺と同類だ。親しみが持てる。もっとも、自分が同じ年になって同じようには決してなりたくはないが。


「はい、ホームルームを始めます! が、その前に……」


 始まった。コイツはいつも、本題の前にいらん話をするのだ。


「お前ら、人に好かれようとして自分を取り繕ったりはするな。作った自分を好きになられても嬉しくないだろう? 作った自分じゃなくて、素の自分を好きになってくれる人を見つけなさい」


 ここまで聞くといい話のようだが、コイツの話はいつもこれで終わらない事を俺は既に学習していた。


「先生、昨日SNSで知り合った人と会ってきたんだ。でも、どうも会う前の話と実際に会った印象が違っていてな。堀○真希に似てるとよく言われると言っていたんだが、どう見てもア○ガールズにしか見えなかった。友達に痩せてて羨ましいと言われるらしいが、痩せてたらいいってもんじゃないな。女子達はいつもダイエットとか気にしてるようだが、無理なダイエットはしなくていいと先生思うぞ」


 女子はダイエットしなくていいから、オマエがダイエットしろよ。と、心の中でツッコむ。メタボは健康によろしくないのだ。


「ま、ありのままでって事だな。ちなみに先生は、大学の頃ありのまま素を出したら友達が居なくなった! 素を出すのもいいが、やっぱり人付き合いは上っ面だな! ハハハ……」


 やっぱりコイツ、何が言いたいのか全くわからない。ただSNSで相手に外見を詐称されたのが腹立たしいだけのようだ。



 担任の痛い話も終わってようやく学校での時間から解放され、俺は一直線に学校の近くのショッピングモールへと向かった。しかし、学校が終わった放課後の時間も油断はできない。外で学校のヤツを見かけると、本能的に隠れてしまうのだ。中学の時と違い、広い範囲から生徒が来ている高校ではそんな機会は減ると思っていたが、このショッピングモールでは話が別だ。ここの大型書店はお気に入りだが、学校の生徒がたむろっているフードコートとハンバーガーショップには決して近付いてはならない。


 ショッピングモールに入ると、俺はいつも通り最短距離で三階の大型書店を目指す。その時、俺の携帯が突然ブルブルと震えた。ドクン、と心臓が跳ね上がる。普段携帯が鳴ることはめったにないので心の準備ができていない。突然震えるのは勘弁してほしい。


「なんだ……。出会い系サイトの迷惑メールかよ」


 こんなメールはもちろんいらないが、他にメールが来ないので何となく消せない。そういえば最近ブック○フのメルマガが少なくて寂しいよ、ママン。


 先週、みるくちゃんと携帯番号を交換できていたら、こんな自分の生活も何かが変わっていたのだろうか? それとも、こんなキモい自分はすぐに愛想をつかされていただろうか? 思い悩んでも仕方がないと思うが、あのとき勇気を出して携帯番号を聞いておけばと、何度もぐるぐるシミュレートしてしまう。


「新刊をチェックしたら今日は早めに帰るか……」


 なんだか今日は、いつも以上に気持ちが落ち込む。俺も将来あの担任のようになるのだろうか? まったくもって、嫌な未来予想図だ。いつもは多少立ち読みをして帰るのだが、今日は書店をいつものルートで巡回して、そのまま家に帰った。



 翌朝のホームルームでも、アンコ型のアラフォー独身教師は熱弁をふるっていた。


「今朝、職員室で新田先生が首にキスマークをつけてるとかで職員室で話題になっていました。高学歴イケメンの独身だってことで生徒にも人気がありますが、とんでもないですよ!?」


 どうやら今日は、イケメンのモテモテ教師の事が気にいらないらしい。


「新田先生は今の彼女が十二人目だって言っていました。そうやって彼女歴が多い男ってよく威張ってますよね? でも、先生はこれが全く理解ができない!」


 始まった。今日はどんな非モテの理論を拝聴できるのだろうか?


「だってそうでしょう? 過去に付きあった人数が多いって事はその数だけ沢山別れてきたってことで、つまりは上手くやれずに人間関係を破綻させた数が多いってことです! 自慢じゃないですが先生はまだ一人の女性とも関係破綻させたことがありません! どうです? いい男でしょう?」


 ダメだこいつ、早く何とかしないと……。とは言え、自分の将来の期待値を考えると、まるっきり担任教師をバカにできないのが辛いところではある。


 毎日がこんな感じなので、俺はこの担任教師を少しバカにしていた。



 そう、この時はまさか、この独身メタボにこの後とんでもない危機を救われることになるとは、まったく予想もつかなかったんだ。


続きます。


続きは3月16日投稿予定。

魔法少女が全く登場せず、申し訳ありません(汗)


次回はみるくちゃんが大活躍! ……しなかったりします、すいません。

m(_ _)m


別に登場しないという訳ではないのですが……ごにょごにょ。



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