ガチャが引きたい!早く引きたい!!
説明回です………
さて、荷物まとめ終わったしな。
そんなに量も無いし、さっさと寮に行こう。
ぁあーー!! どうしよう!!
メチャクチャガチャが引きたい!!!
『魔力ガンガン貯めようぜΩ』
魔物を駆逐しながら地下迷宮を攻略していくバトルゲーム。
最大地下100層まで存在し、地下に潜っていけばいくほど魔物の強さとドロップするメダルの確率も上がる。
そんな『魔力ガンガン貯めようぜΩ』の醍醐味が
『ガチャ』
『普通』ガチャ・『獅子』ガチャ・『鬼』ガチャ・『龍』ガチャ・『神』ガチャ
の5種類があり、普通〜神に行くにつれ、排出されるアイテムのレア度が上がっていく。
出てくるアイテムは、俺と兄貴で作ったシステム『鬼神ルーレット』(鬼の顔をしているルーレット)がこの世界のどこかに存在している物を複製した物だ。(因みに、この世に一つしかない物などと言われるものは、このシステムで複製された瞬間消えるらしい。
うん。実に迷惑な事だ。
ま、俺にとっちゃどうでもいいけどね)
複製と言っても性能・質などは1つの落ち度もなく、もっと言えば本物よりも強い可能性もある。言うなれば製造?だろうか。
そして取り出しが可能。
『装備変更』で装備を変更すれば、現実の俺にもその装備が実体化する、何てこともできる。
と、いうのはまぁ凄いことだが、一番素晴らしいところはそんなところじゃない!!
素晴らしいことに『魔力に還元』させることができるのだ。
レア度が高い分だけ還元される魔力は多くなり、『魔力残量』というところに充填される。
これで魔力の心配は解決である。
ガチャを回すには“メダル”というものが必要であり、メニュー画面にある『バトル』を選択し地下迷宮に存在するゲーム上の魔物を倒していくと確率で排出される。
今俺のレベルは36。進み具合はまだ32層に着いたばかりだ。現状少なくとも『龍』・『神』メダルを手に入れるのはほぼ不可能に近いだろう。
『龍メダル』は50層辺りから排出される可能性が高くなっていき、『神メダル』は80〜90層クラスじゃないと到底手に入れることはできない。
取り敢えず30層辺りでも、この2つのメダルが出る確率はある。それに関連するボス級を倒して龍が0.5%、神が0.1%ぐらいだけど…………
現在俺の所持メダルは
普通メダル・280枚
獅子メダル・86枚
鬼メダル・38枚
龍メダル・1枚
神メダル・0枚
それぞれのガチャで一回引くのに必要な枚数は
普通ガチャ=普通メダル10枚
獅子ガチャ=獅子メダル5枚
鬼ガチャ=鬼メダル3枚
龍ガチャ=龍メダル1枚
神ガチャ=神メダル1枚
である。
一層ごとに一体、その層のボスが設置されており、ある時31層のボスだった『爬竜類』を倒した時に、確率で0.8%だった『龍メダル』がドロップしたのだ。
この時は物凄くはしゃいだ。馬車から転げ落ちたほどだ。
だが、勿体ないが故に今まで使用せず、大事に大事にしてきた。
だが、ついさっき『獅子』ガチャで手に入れたレアアイテムにより、俺は初めて今日の良き日、『龍ガチャ』を引くことを決意した。
そのアイテムとは…………
○●○
『最強ギャンブラーの運瓶』
レア度:☆☆☆☆☆★★★★★
道具(使い捨て)
効果:世界最強のギャンブラーの運が詰め込まれた小瓶。中の運水を飲み干す事で一時的に最強の幸運を得ることができる
制限:使用してから10分後に効果が切れる
○●○
さてどうだろうか?
何このアイテム!? ルーレットと相性良すぎでしょ!?
これはもう、引くしかないよね!!
と、思ったのだが。
荷物まとめた瞬間即効で部屋から放り出されてしまった。
おい!?魔法で動くからっておい!!
おかしくないか!?なあおかしくないか!!!
だがこうなった以上今引く事は出来なくなった。
何しろクッソうるさいのだ。引く時に静かに引くという事ができんのだ。オメガは。
何よりスマホは俺の生命線。
そうそう人前に晒していいものではない。
早く寮に行って1人でひっそりとガチャを引こうと心に決めるのだった。
よし!! 早速寮に行きますかぁ。うぉー早くガチャ引きてぇーーー!!
◇◆◇
「何故だ…………」
馬鹿でかい寮のカウンターで部屋の説明を受け、足早に俺の部屋に入って鍵を閉めたらこれだ。
『これ』とは何だって?
そうだな。今朝の面白いぐらいに神経図太い美少女が、座りながらにっこり笑顔でこちらを見ていると、そう言えばお分かりだろうか?
そう。
言わずと知れた『ハル』がいるのだ。
「もう一度問おう。何故だ…………。何故お前が俺の部屋にいるんだ!! 鍵なくてどうやって入った!! それ以前に部屋の主に断りなしに忍び込んでるとはどういう了見だぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
心からの咆哮だった。
防音完備の力は凄まじい。たったの一言も外部に漏らす事なく吸収しきって見せた。
部屋の中は別だが…………
「…………ぉう。うん。ごめん。ごめんなさい。私が悪かったです。お願いします。もうしません。許してください。お願いだから………ね? ちょっと落ち着こ? ね?」
ふむ。反省の色0。
いちいち俺の逆鱗に挑発かましてくれやがって。
戦争か?戦争がご所望なのか?
「だって。面白い事が起こりそうな予感がしたんだもん!!」
聞いてみれば今まで自分の『面白そうな予感』は外れた事がないそうだ。
「……………はぁ。今日のところはもう何も言わん。早く出て行ってくれ」
「やだ」
よろしい。戦争だ。
「だってユウマ今から楽しい事始める気でしょ!わかってるんだから!」
クソッタレめ。こいつの感覚はどうなってやがる
というか、今朝会ったばかりの女性に「わかっている」と断言される俺って…………
じゃねえよ!
落ち込んでんじゃねえよ!
そうじゃねえだろ!!
俺今怒ってるの!!
ドゥー俺アンダスタン??
はぁ。これだから嫌なんだ。
怒りがすぐに消滅しちゃうから嫌なんだ。
はぁ…………自分で自分が嫌になる。
いや、それは元々か。
「ああーーーー!! もういいや!!! 面倒くさい! スマホの事包み隠さず全部吐いてやっから!! そこに正座しろやぁぁぁぁああ!!!!」
ハルが目を見開いて「何でそんな展開に!!」というような顔をしているが無視だ。
そもそも、隠すというのが俺自身苦手なんだ! それなりに隠し通せる自信はあったがもーう駄目だ!
兄貴の凄さとスマホの凄さを延々と語ってやっから覚悟しろやぁぁぁぁぁぁ!!!
最初は驚いたように正座して俺の話を聞いていたハルだが、途中から楽しそうな話に顔を緩め、スマホの性能の数々に頬を引きつらせるを繰り返していた。
そして一晩中語り続けていた俺は、次の日に寮のおばさんにこってり叱られることなる。
ついでに、一晩中『女』と一緒にいやがった! という事実が何処からともなく漏れ出し、その日、不本意にも
「入学初っ端から、同じ入学生の女子にいち早く手を出した『夜の帝王・超速攻型魔導士』現る!!」
と騒がれるのだった。
そして付け足しておくと、『夜の帝王』『超速攻型魔導士』というのは、本当に本当〜にほんの少し改変され、今後俺の『称号』として正式に使われる事になるというのは、近い未来のお話…………………