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勇者って一体!!


「ふぃ〜。美味しかったぁー」



《サラサラスイーツティー》

気候の寒い地域にしかならない甘い果物の果汁を混ぜた、甘い紅茶。



という説明を眺めカップをすすりながら、オープンテラスに移動した俺たちはかなりのんびりとしていた。


「さて、結構この国のことも聞けたし。このあと宿に戻って荷物まとめっか」

「寮に移すんだよね。私はもう学校側に預けちゃってあるけど、ユウマは昨日この国に来たばっかなんでしょ」

「ああ。まぁ大半はもう送ってもらってるんだがな。一部俺が持っておきたいものは寮に置きっぱなしなんだ。それにしても、昨日はゲームが充実してた………」

「ヘぇ〜。どんなゲームやってるの?」

「これ」



スッとハルにスマホの画面を向ける。

1つしかアプリ入ってないんだけどね。








『魔力ガンガン貯めようぜΩ』


画面には、『ユウマ』という名前が表示され、上部には『スタミナMAX』と書かれたゲージ。『バトル』『魔力残量』『ステータス』『装備変更』『アイテム』『ガチャ』『設定』等々が映し出されている。










「『魔力ガンガン貯めようぜΩ』?」

「別に俺がこの名前つけたわけじゃ無いぞ?兄貴と一緒に『魔力を作成・補充させることができるアプリ』って念じてたら、勝手にできたのがコレ」

「そんなこと出来るの! スゴッ!! ねぇ。また聞くけどさ。ユウマの『勇者権限』ってやつ、何かを作るっていう能力なんだよね」

「まぁ。大体はあってるな。俺が「作った作った」言ってるもんな」


やっぱり気になるのか? 良いんだけどね。


どうせだ、説明しちまおう。


「勇者の一族には『勇者権限』っていう能力が1つ宿るのはわかったよな。

俺の勇者権限は『想像』。『自分の想像した物を創り出せる』能力だ。


あ!


お前今便利だと思っただろ? そう上手い話などこの世に無いのだ。兄貴の助けがなきゃあ、ただのクソほどにも役に立たん能力なのだから」

「どういうこと?」

「『想像した物を創り出す』裏を返せばそれは、読んで字のごとく『想像した物しか創れない』という事に他ならない。

意味がわからない?

よし詳しく説明しよう。


例えばあなたが、『剣』というものを想像してみてくれと言われたとしよう。

想像するのは人それぞれ千差万別。誰でも『形そのもの』を想像することは容易いだろう。


して、その時。あなたはその剣の『長さ』を何㎝・何m単位で詳しく想像しただろうか?

『模様』は?『材質』は?『切れ味』は?『重さ』は?『硬さ』は?『構造』は?


つまりそういう事だ。そんなものを1度に全て想像できるか?

実際にある物で、それをまるまるコピーするならまだ話は別だろう。

しかし、実際にない物を創ろうとしたらかなり大変だ。その知識が豊富な人が、長い時間をかければそれも可能かもしれない。だがその能力を使うのは、何の知識も持たない15歳。能力一回の持続時間は約2秒。


ご理解頂けただろうか?


実際俺が実在しない物を創ろうとすれば、それなりに慣れている分だけ余計にバランスが悪くなり、見た目のみ強そうな剣の形をした、ただの木の棒が出来上がる。

ふふふっ。こんなに悲しい事もそうあるまい」

「わかりやすいご説明、痛み入ります…………何かを作る力って事だよね。でもそんなに使い勝手が悪い力で、どうしてこんな機械作れたの?」


わかっている風を装ってわかってないことを表すな!

全く。


「半分は俺の力で間違いないけど、半分は兄貴の力で出来てるからな」

「う〜〜ん。やっぱり魔力の話が気になるなぁ〜」


さっきアプリ見せただろうが!普通は見せないんだぞ!!


「悪いな。こればっかりは。さてと、ちょっと宿に戻るか」

「あ、じゃあ私も行く」


止めてくれ…………

知り合ったばっかりの女性(しかも美人)を宿に連れ込むとか、あらぬ噂が広まる暇なく俺が警察に問答無用で連行される。


「はぁ…………勘弁してくれ。お前は寮に戻っておけよ。俺も後で行くから」

「…………うん、わかった」


納得いってなさそうな顔ですなオイ!


「んじゃ改めて、国の事色々教えてくれてありがとう。お互いできるだけ早く2年生に上がれるよう頑張ろう」

「うん!頑張ろう!!」


そう言って俺たちは握手を交わし、その店から出た。


「さて、さっさと寮に戻んねーと怒られそうだし。急いで…………」




………………あれ?

今朝までの俺じゃ「ダルイ」「めんどい」が先に来てたのに、いま「急ぐ」って?


よく考えればここまで喋ったのも久しぶりだ。


………………ふむ。人というものはこうも劇的に変わるものなのだろうか?


勇者の国にいた頃の自分を思い出して心の奥底がズキンッと痛むのを感じ、思わず顔を顰め胸を強く押さえた。


その痛みを紛らわすかのように、俺は下を向いたまま走って寮を目指すのだった。


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