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美味い飯は冷めないうちに!!


「こっちだよ〜。ユウマ。ほらアレアレ」


おお〜〜。なかなかに良いセンスをしてるじゃないか!

魔法の国とのギャップを感じる木造建築!汚れは少なく屋根の黄緑色がキラッと太陽の光を反射している。

レストランってより、ちょっとカフェみたいな感じだな。

ドアの真上に店の名前を書いた看板が下げられている。

店の名前は〈思い出のデリケット〉か。


「ここの《はぐれマイタケのサラダ》や《ベリ豚のステーキ》とかがすっごく美味しいの」

「ほほう、それは楽しみだ。取り敢えず中に入るか」


うお〜〜。ああ〜良い匂い。入った瞬間広がる、暖かく、それでいて香ばしい香り!

店内も広いし、何より客層が良いのかとても静かで、流れているはっきりとした静かな曲がより一層素晴らしさを増している!


うん。

最高だな!


お!

ウェイトレスさんの服装綺麗だ。

メイド服を物凄く厳かにした感じの制服だな。

それでいてメイド服の良さは無くなってはいない。

いや、より洗練され綺麗になったといえるだろう。


「じゃあ俺は、えっと、何だっけ?ああ、そう《ベリ豚のステーキ》と《はぐれマイタケのサラダ》を頼む。あとこの《サラサラスイーツティー》も」

「じゃあ私もそれで」

『かしこまりました。《ベリ豚のステーキ》・《はぐれマイタケのサラダ》・《サラサラスイーツティー》それぞれ2品ずつ。少々お待ちください』


ガチャッ、フゥオン!!


『お待たせ致しました。ではごゆっくりどうぞ』


早っ!!!


少々お待ちくださいから、驚愕の1・5秒!!

空間から熱々の料理がいきなり現れた!厨房から出来立てが飛んできたのだろうか。転移魔法?又は空間魔法かな?


「いただきま〜す」


おお!そんなことは今はどうでも良い!今は食すのみ!!


「いただきます!」


うほぉーーこいつは美味い! 何これ! この肉! じゅわぁぁっと口に入れた瞬間トロけたんですけど!!


「ングングッ、ンッ。なぁ」

「なに?」

「どうだ? 飯を食べてゆっくりとできている訳だし、ここでいっちょ自己紹介ってのは」

「ああ。良いねそれ。ユウマに聞きいこととかあったんだ〜」

「? んじゃ取り敢えず俺から。

えーゴホンッ!

荒杭(あらくい) 勇魔(ゆうま)』。年齢15歳。好きな食べ物はカップラーメン。1月23日生まれ。一人っ子。従兄弟の事を兄貴と呼んでるから勘違いされやすいがな。取り敢えず、勇者の一族の者だけど……特にこれと言って自慢できることは無し。まぁ勇者の国で色々あって、今はこうして勇者になることを諦め、魔導士になろうとこの国に来た。

っと、うん。こんな感じかな?」


前を見るとポカーンと口を開けてボーッとしているハルがいた。


何だ? 別に強くない勇者だって、今じゃごまんといるんだ。勇者って存在自体クソみたいに増えたからな。

まぁ大抵は子供だけど。


それに勇者の国から出てくるやつだって別に珍しくない。


魔導士になろうなんて奴は珍しいが。


そんなに驚くことか?


「お、おい。どうした? 大丈夫か?」

「え? あ、いや。私の知り合いにも、勇者の人がいてね。ちょっとその人の事を思い出してたの」

「そうか」

「私の自己紹介の番だね。

えっと『小寺(こでら) 春花(はるか)』です。年齢は同じく15歳。好きな食べ物は果物全般。趣味は料理。12月18日生まれ。一人っ子。お父さんもお母さんも魔導士の一族で、私自身魔力は人一倍持ってます!!唯一の自慢です!!あとお母さん似の髪が少し好きです。魔導学院に入れるのは15歳以上だから今までは入れていなかったけど、1人で魔力を高める勉強をしたり、お家の手伝いをしたりしてました」

「へえ。御両親とも魔導士か。受け継ぐ魔力量も多そうだ。パクッ。ングッングッ」


うぉ! このサラダもうまいな。

スッキリシャキシャキで肉の後食べるとよけいに美味く感じる。


「ねぇ、ユウマ?」

「ンック。ん? どうした?」

「ちょっと聞きたいことがあるんだけど」


なによ?


「ユウマはもう魔導書と契約を交わしてるの?」

「いんや」

「じゃあ、何であの時魔法が使えたの?」

「あの時? ああ、あの暴漢事件の時か」


今ハルが魔導書との契約について言っているが、そもそも魔導書とは何なのか。


答えは簡単。魔法が閉じ込められた本だ。原則として、それぞれ魔導書には1つ1つ『題目(テーマ)』と言われる名前があり、その魔道書の名前にそった魔法が閉じ込められている。その魔導書と『契約』という儀式を行う事で、その魔導書に記されていた魔法が使えるようになるわけだ。

だから理事長も「魔導士においてもっとも必要なもの」と言っていたのだ。魔導士の一族は生まれつき魔力をもっているが、魔導書と契約しなければただの人なのだから。


「俺のあれは魔法じゃないからだ」

「勇者の一族っていうのが関係してるの?」

「そうだな。あれは勇者特有の能力で、一族の者が1人に1つ手に入れる事ができる『勇者権限』ってやつだ。

手に入れられるなんて大げさに言っているが、種類は様々。生まれた時にランダムで備わるから、好きなやつを選べるわけじゃない。

強い能力を得るやつもいれば、弱い能力のやつもいる」


こんなペラペラ喋べって良いもんかね?

別にいいか?

もう俺には関係ねぇし。

一部はみんな知ってるみたいだしな。


「そうだったんだ。でも何で? 勇者の一族って、生まれつき魔力を持たないんでしょ?魔力がないと魔導書と契約しても魔法を使えないよ?」


そりゃそうだ。体内に巡る魔力を使って魔法は発動されるんだ。

魔力が無けりゃ魔法も発動しない。

常識だ。


「そんな事知ってるよ。俺が何も考えてないとでも思ってんのか?」

「で? どうすんの?」

「企業秘密」

「えー!」

「いつか教えてやるよ」


今はその時ではない!!


「うぅーー。じゃあまた質問!」

「ん?」

「あのカタカタいってた機械は何?」

「カタカタ?」

「あの時右手に持ってた四角いやつ」

「さっきの企業秘密とかぶる」

「えぇー。もういいじゃん!教えてよぉ〜」

「無理無理無理!アレは俺の生命線なんだから!!」

「…………」

「…………説明だけだぞ」


黙ってションボリとしていたハルが、パアァーという表情になった。


「いいか! 説明だけだ。魔力に関しては教えないからな」

「うんうん。わかってるわかってる」


クソーなんか悔しい。

まぁいいけどね?

女の子に優しくするのは常識だもんね?

別に根負けしたわけじゃ無いよ?

…………クソォ



「これだろ?」

「そうそうこれこれ」


テーブルにごろりと置かれたものは、『スマホ』である。


「これは『スマホ』っていう機械だよ。だが本物は今現在この世界に存在しない。この機械は、異世界について書かれていた本に出てきたものを真似して、俺と兄貴の『勇者権限』を合わせて作ったものだ」

「へぇ〜。で? ユウマの能力ってどんななの?」

「魔力を教えなかったら今度は俺の能力か」


ふむ。ただカスいだけだし、まぁいいか


「で?どんななの?」


ふっふっふ。それはだなぁ


大仰に引っ張る俺は、少し身を乗り出してソワソワとするハルカに、


「飯を食い終わってから話そうか」


と、言い放つ。


えぇ〜〜〜とブツブツ言っているが無視だ。

何せ今はこんな美味い飯を食べているのだ。冷ましてしまっては申し訳ない。



ふっ! 我マイペースなり!?



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