テストでエスコートなプレゼント大作戦!!
10000PV突破! ありがとうございます!
「相変わらずにぎわってんなここ」
「……九時すぎだから、まだまだこれから」
「案外、乗り気だな。ベル」
「……何か問題でも?」
「いや、ないっす……」
にっしてもいろんな店があるよなぁ〜
俺がどれだけ田舎にいたかよくわかるわ。
その田舎にある一軒家の個室に引きこもってた俺が言うのもなんだけど。
「でもさ。杖ってなんかイメージと違ったんだよなぁ」
「……わからなくもない」
「だよねー。杖って言ったら棒のイメージじゃん? 実際杖の性能さえ搭載されてれば形はなんでもいいんだもんなぁ」
さっき会長にボコられた不良リーダーはギターみたいな杖召喚してたし。
「さて、杖売ってる店ってたくさんあるよな」
「……魔法の国は、伊達じゃない」
「なんかオススメの魔法武具店とか……」
いや、いらいやいやいやいや
待て待て待て待て待て落ち着け荒杭 勇魔年齢15歳ただいま絶賛彼女募集中のモテ経験ゼロで青春送りし学生なる若人よ。
これは相手と仲良くなるために行われているイベント、即ち、デートにあるぞ。
デートならば(したことないけど)男の甲斐性ってもんを(甲斐性、とは?)見せるべきなんじゃないだろうか(モテた経験もないので見せたこともないが)。
そうでなくとも相手は女の子ならば男としてエスコートするのは当然の義務だろう(エスコート? できんの? したことないのにww?)!
えぇいやかましい!
今は悲しんでる場合じゃない! ミッションスタートだ!
「いや、本日は俺がエスコートさせていただきますよ。お嬢様」
だいぶ悪ふざけを挟んで恭しくお辞儀をする。
「……ふぅん。ユウユウ、エスコートなんてできるの?」
ニヤッとした笑みをすると、以外にもベルはノリノリでノッてきた。
へぇ……そのからかうような顔。少し表情作れてきたんじゃないの?
「俺のような男でも、お嬢様に求められるのなら」
「……なら、お願いできる?」
「では、僭越ながら」
もちろんノリにはノリで。
気分はやり手執事を完璧に演じ切ってると思い込んで調子に乗ってる大根役者。
手を貸して上からニヤニヤと笑みを送り、ベルはそれに呆れるように微笑を浮かべ、ハッと何かに気づいたような顔になり顔を赤くしてそっぽを向いてしまう。
なんだろう。超和むんだけど。
「確か、この先に最新の魔術道具も扱ってる大手の店が」
「……そこは嫌」
「食い込んできたなぁ。取り敢えず理由を聞いても?」
「……人混み苦手」
「わかる! それな! ベルのためなら頑張ろうと思っていたが内心結構ビビってんたんだ。ベルも同じでよかったわぁ〜」
お、同じ……同じ……と呟き始めるベルさん。
ごめんなさい。ちょっと怖いっす。
「じゃ、じゃあ。人が少ないマイナーなところにすっか」
ものが凄すぎて客が自然と厳選される店があったはず。
道、大体しかわからんが、ぶらぶらしてれば着くだろう。
こ、こんな心構えでエスコートなんて、大丈夫か俺。
計画にヒビが入っていく音が聞こえたかもしれない。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「ここなら人も少ないし、落ち着いて選べるんじゃね?」
道に迷わずつけたよかったぁぁぁぁぁ…………
おっと締め付くけられてた胃が急に解放されて、れろろろろろ
「どもーこんちはーっす」
エスコートしてる男としてどうかと思うほどの態度で扉をガラガラと開ける俺と、その後ろでおずおずと顔を覗かせているベル。
「帰れぇぇええええええええええ!!!!」
「「(……)うわぁぁぁぁあ!!」」
そこにしわがれ震えた巨大雷が舞い降りた。
二人仲良く絶叫を上げたのは、仕方がないと言い訳しようと思う。
「お? なんじゃ客か?」
「勘弁してくださいよお爺さん。心臓止まるかと思ったじゃないですか。何と間違えたんです?」
ってベル!
大丈夫か! おーい! ちょっ、震え止めて。俺にまで伝わってくるから!
よーしよしよし。怖くなーい怖くなーい。
ぴたりと震えが止まったのはいいが、今度はそのまま停止してしまう。
「うむ。最近身の程をわきまえずアイテムを売れと言ってくる輩が増えていてのぅ」
「な、成る程」
「なーにを自分とは関係ないような顔をしちょる。お前らもそうなんじゃぞ?」
「はい?」
身の程をわきまえない奴か。
確かに俺はそう言われても仕方がないかもしれないが、ベルなら話は別だ。
「俺はあくまで付き添い。買いに来たのはこの子の杖です」
「ほぅ。ワシの怒鳴り一つで怯えるような小娘がか? 笑わせるのう」
「お言葉ですが、この子の強さを感度れないなら、身の程とか言ってないで今すぐこの商売辞めることをオススメしますよ?」
「なにぃ? ……へっへっへっ。言うじゃねぇか小僧。それだけ言うんだ。もしダメだったらどうすんだ? え?」
「ダメだなんてことありませんよ、確実に」
俺はベルの魔術士としての才能を信頼してる。
「ならテストしてやろうじゃねえか。ほれ」
爺さんはあぐらをかいたまま瓶に入っている棒を一本抜いて放り投げて来た。
持ってみるとズシリと重い。材質は、鉄じゃないな。銀じゃない。石じゃない。何だこれ。
「そりゃ特別な鉱石でできててなぁ。あー、名前は、なんといったかのぅ」
「……トリックメタル。特殊な魔力を帯びている魔石の一種。それを加工したもの」
「なかなか詳しいじゃねえか小娘」
「……強力な硬度をもち、衝撃に完全な耐性がある。ただし魔力に弱く、流されると形が崩壊する。純度が高ければ高いほどその崩壊の仕方とスピードが変わる」
成る程。
どれくらいで壊せるかでテストするってことか。
「……貸して」
「その前に!」
思いっきり握りつぶそうと試みる。
すると形が容易に変形した。変形、したのだが。
「な、何じゃこりゃ」
ぐにょんと棒がスライムのように伸びて、手を離すと何事もなかったかのように元の形状に戻る。
完全な耐性って、こういうことか。
「……貸して?」
「パース」
「……おっとっと。ふぅ」
ベルが目を閉じた、その瞬間膨大な魔力のオーラがベルの周りに立ち込める。
純度が高すぎてキラキラ光っているかのように見えるライトパープルのオーラ。
お爺さんの目がさっきより丸くなる。
もうちょっと派手に驚けよ。俺もめっちゃびびってんだから。
「……はぁ!」
おそらく外部に放出されていた魔力が全てトリックメタルに注ぎ込まれたのだろう。
ブオッと素早く空気が頰を撫ぜる音がしたと思ったら
――― バキャァァァン
耳をつんざくような破砕音が響き渡り棒が粉々になった。
シンとした空気の中、最初に口を開いたのは流石というかお爺さんだった。
「こりゃ驚いた。お前さん、何もんだ?」
あ、驚いてたっぽい。
まそりゃそうか。見た目で判断しちゃいけないってことだね。
ベルが伺うようにこちらをみるので、「どうせ名乗るなら学校名までいっとく?」と小声で伝えとく。
「……ラギア魔法学院二年・風紀委員会所属『須部 瑠衣』」
おじいさんはそれを聞くとどこか納得したような表情になる。
そして俺の方にも視線を移してくるので、取り敢えずご挨拶。
「同じく、ラギア魔法学院二年・風紀委員会所属『荒杭 勇魔』」
そんな「え? お前も?」みたいな顔しないでくれます?
えーえーいいですよーだ。
俺は所詮見た目かませ役でしかない村人A以下の一般ピーポーですよ。
俺、取り敢えず勇者なのに……
もう廃業したけど……
それにしてもラギア魔法学院の二年生って言ったら大分目の色変わったな。
俺たちは見た目こんなだから、まぁしょうがないとは思うけどね。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「で? どんな杖が欲しいんじゃ?」
「……が、頑丈なやつ」
「頑丈ちゅーっとー……そうじゃな、フルプレートタートルの甲羅を加工した盾なんかどうじゃ?」
「デカすぎないっすか?」
なんか色々ものが出て来たけど、素材がカッチョいい魔物の物ばかりでちょっと興奮するわ。
「使いやすいように小さいやつの方がいいのでは?」
「……う、うん」
「メタルラットの尻尾を加工した杖があるぞ? 小さくて軽くて使いやすいし、防御力もピカイチじゃ」
そう言って埃をかぶった箱から出された黒い杖に、ベルの目が釘付けになる。
どうやら気に入ったらしい。
「そんじゃお爺さん。それ買うよ」
「……え、あ、いや、ユウユウ」
「ん? どったんベル?」
「はぁ」
何だよ爺さんそのため息は。
そんでベルはなんか言いかけたままもじもじしてるし。
「こりゃ小僧。店の裏側に倉庫がある。そこにこれを置いて来てくれんかのぉ」
「いいですけど。それ客にやらせることですか?」
「細かいことは気にするんでないわ若いくせに。いいからはよ行け」
「はぁ……はいよぉ〜」
たくっ。何だってんだよ。
◇◆◇
「…………」
「こりゃ小娘。お主、あの小僧に嘘をついておるじゃろう」
「……!」
い、いきなり何を……もしかして、ユウユウを行かせたのは、この話をするため?
「……別に、嘘なんか」
「金がなかったから杖を持っていた事がないと言っておったなぁ。それにしては不自然な事が多い」
「……例えば」
「言わんとわからんかのぉ。ふむ。言わせてもらうと、お主は今まで何本もの杖を壊してきている。今杖を持ってないのはそのためじゃな?」
どうして……
「……何を根拠に」
「さっきのテスト。金がなくて杖を買った事がないにしては、あまりにも慣れすぎておる。どれだけの魔力を流せば良いのかわかっている動きじゃった。大方今日のワシと同じようなことを言われてきたのじゃろう。
例えそれなりに頑丈なものであっても、あのお主の魔力量じゃ、そうそう耐え切れるものじゃあるまいて」
やっぱり、本職の人にはわかってしまうのだろうか。
杖は便利だけど、ずっと使っていたらすぐに壊れてしまう。
私の魔力は多すぎて、ちょっと強く魔力を流しただけで粉々になってしまう。
入学初日に買った杖も、生徒会のメンバーに買ってもらった大切な杖も……全部。
「あの小僧に真実を告げるのは辛いか?」
「……コクリ」
「じゃろうな。断りたくないからここまできておるわけじゃ。まったく、女心をわかってやれない小僧じゃなぁ。ここからは老いぼれの独り言。聞くも聞くまいもすきにせい。
小娘よ、お前さんはあの小僧に杖を買ってもらえると思って、どう思った。真実を伝えたら小僧はどう思うのかを考えたじゃろうが、 やはり一番はそこじゃろう。お前さんが言いたくないなら、言わなくても良いじゃろう。男が女に贈るといったものじゃ、それは受け取るのが女の甲斐性というもの。へっへっへっ。若ぇのぉ。けっけっけっ」
本音まで悟られていてつい顔が赤くなってしまう。
「……からかわないでください」
「悪いのぉ。まぁ、いつか言えるように準備はしておくんじゃな。どうせあの小僧からプレゼントとやらが欲しいのじゃろう? ま、大切にするんじゃな」
「うぃーす。置いてきましたけど、なんすかこの空気」
「なんでもない。ほれ。注文の品じゃ。今回は最初の詫びも込めてサービスしてやるわい」
◇◆◇
パシリと木箱を受け取る。
へぇ……タダにしてくれるってことか。結構気前がいいね爺さん。
「んじゃ。はい、ベル。え〜と、ど、どうぞ」
なんか気の利いたことでも言えりゃいいのに。だか無い物ねだってもないものはなく、なんだか締まらない言葉で渡すことになってしまった。
「……ありがとう。大切にする」
でも、ベルの笑顔が見られたので、良しとしますか。
まだ満面のではないが、明らかに笑顔とわかる笑顔だった!
「それでは、俺たちはお暇しますか。お爺さん、また」
「うむ。また来るのじゃぞ」
「はい。ありがとうございました」
「……あいがとう、ございました」
最初は言い合いから始まっちまったけど、いい感じの店だったな。
次からマジックアイテム買うときはここにするとしよう。
え、いや、待て。おれテストクリアできるかな。
非常にビミョいぞ? 知らんけどスマホに貯めてある魔力ってそんなに純度とか優れてるはずないし。
ガーン……どないしよう……
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「まだ昼過ぎだな。あ、これ食う?」
「……何それ」
「イス、イス〜、イスガルーダの〜串焼肉、だったかな」
「…………へ?」
「ん? なんか間違えたかな」
スマホを確認すると『イスルムガールダの串焼肉』だった。
全然違ぇじゃねぇか。
「いや、イスルムガールダの串焼肉だった」
「……イスガルーダじゃ、なくて?」
ベルが無表情のままサッと顔を青ざめさせじろりとこちらを見る。
イスガルーダってなんだっけ?
聞き覚えがあるような……ああ、前の層で出てきたドロップモンスターだっけ?
「……うそ、でしょ?」
「いやマジ。もごもご。あ、美味え」
「……高級食材をばくばくと……」
「ブーーーッ!っ……え! 高級食材なのこれ!」
「……自分で持ってたくせに知らなかったの?」
知らねぇよ! だってコレガチャアイテムじゃないんだもん。説明読んでないって。
「ベルも見てたろ? ボスドロップだって。ボスからドロップした肉をその層の一番料理スキルが高い料理人に料理を依頼してあったんだ。ついさっき出来たっていう通知がきたから取り出して見たんだけど……」
そういや料理されたアイテムの確認ならできんだよな。
どれどれ〜
○●○
『イスルムガールダの心臓串焼肉』
レア度:☆☆☆☆☆★★★★★
食料
効果:33層のボス・イスルムガールダの肉をLevel5の料理スキルで串焼きにした料理。イスルムガールダの心臓肉が新鮮な状態で料理できることはごく稀で、非常に美味である分大変珍しく高価である。
制限:なし
○●○
わぁお五つ星。超高級肉じゃぁないですか。
「ブーーーッ!」
「……はぁ」
「あぁ、ため息ついたな! なんだよ! もういいよ! 全部食う! ベルも食え!」
「……え? いやむぐう!」
問答無用!
「どうだ美味かろう」
「…………おいしい」
素直でよろしい。
あーでもまだ60本くらいあるから全部食べないでとっとこ。腐らないだろうし。
「……私がご飯を食べると変な魔法覚えちゃうかもしれないけど……」
「へぇ〜、どんな?」
「……例えば」
確かに変な魔法だった。
辛味が強いものを食べたりすると火関係の欲望系魔法が候補に挙げられるし。
甘いものを食べるとちょっとエロい魔法を覚えたりするらしい。
例えば? って聞いて見たら睨まれた。ご、ごめんなしゃい。
食べ物を食べるとってそういうことか。『強欲』の魔道書はなんでも行動と結び付けられるらしい。
『食欲』は三大欲求とも呼ばれているし、強制力が強いのかもしれないけど。
さて、ちょっと話しているだけで気がつけばもう夕方。時が経つのは早いものだ。
今日の作戦は、概ね成功と言えるだろう。
その時、涼原先輩の声が脳裏をよぎった。
『ベルちゃんは、強いし、頭もいいし、しっかり者だ。でも、彼女は弱い。どうしても、どうしようもないところもあるんだ。だから、守ってあげて』
何故今この言葉を思い出したのかはわからない。
俺はこう返した。『俺には、ベルを守れるような力はありませんよ』と。
だが、こうも返した。『でも、俺には俺の方法で、できることでがむしゃらに戦います。だって、俺にはそれしかできませんから』と。
俺は先輩に誓ったんだ。力はなくとも、守ってみせると。
その日はベルと別れた。
そして、次の日。俺のもとに初めての風紀委員の仕事がきた。
【須部 瑠衣と共に学園祭会議に出席せよ】
嫌な予感が背中をなぜた気がした。




