過去暴露……何しちゃってんの馬鹿なの死ぬの!!
さて、今日はなにをしたもんか。
ベルのところに行ってもいいが、毎日一緒てのもなんだかなぁ。
風紀委員の規則とかぶっちゃけどうでもいいし。
よし。
今日はちょいと魔法の練習といきますか。
◇◆◇
「でもま。魔力は無駄使いはできないのよな〜。ハルに供給してもらえればそれが理想なんだが」
は〜。あれからなにも行動に移さず丸何日か経過いたしましたが。
なんか罪悪感みたいなので一向に気が晴れないんだよ……
ゲームやっててもいつも以上にのめり込めないし、ちょっと治まってもゲームが終わればまたモヤモヤモヤモヤ。
師匠からの連絡も階段の時以降プッツン。
頼むから早く解決してくれ〜!
「はぁ」
「ため息を吐くと幸せが逃げるよ?」
「うぎゃあ!」
誰だよ!いきなり後ろから声とか勘弁してくれ!
変な叫び声になったじゃねぇか。
「はぁ……あんたか」
「ほらまたため息。それにその反応はいささか心外だね。何かあったの?」
「いや、特には。すんません、涼腹先輩」
目元を抑えていた手をどかして目の前の声をかけてきた張本人、生徒会の『会長様』である涼腹先輩と目を合わせた。
「先輩。会長さんだったんですね」
「あれ? 言わなかったっけ?」
「聞いてないっすよ。会長さんのパートナーさんが教えてくれました」
髪の長いおしとやかな人だったけど。やっぱりあの人も三年生なんだろうか。
だとしたら凄腕の魔術士ということになる。
どんな魔法を使うのやら。
「それにしても早いっすね。いつもこんななんです?」
「それはこっちが聞きたいなぁ。ベルちゃん曰く、君は学院のサボリ魔だそうじゃないか」
うぐ!
ベルたん告げ口ですか。手厳しい。
「それが生徒があと数時間はしないと登校してこないような時間に来てるとは。非常に興味があるね」
「……お、俺はこー、気まぐれ、なんすよ。……あははは」
頭がイカれてるからだなんて言って、信じてもらえるわけがない。
「ふぅん。気まぐれ、ねぇ。最近ベルちゃんとはどう?」
「うまい具合に心開いてくれ始めてますよ? 前は食事拒否されたけど昨日は付き合ってくれたし」
「ブッ!」
うぉわ! こっち向いたまま吹き出さないでくださいよ!
「あ、ご、ごめ、って、ぇえ……ベルちゃんが? 嘘ぉ……」
俺に心を開くのがそんなに信じられませんかそうですか。
そんなに俺面相悪いかなぁ。
「失敬な。ベルには優しく接してますし、あいつも割と最初から俺に対する態度はフリーダムでしたよ」
「あ、うん。その節は申し訳ない」
「過ぎたことです。気にしないでください」
懐かしい。鎖で身動きを封じられ階段に打ち付けられたあの日。
大の男の土下座を目の前で決行された誰得映像。
訳も分からずテンパりながら外される鎖があらゆるとこに食い込み関節を幾つか外したよ。
すげえ痛かった。どんだけ巻いてやがったんだあいつ。
「それにしても色々と迷惑をかけているみたいですまないね。壁を粉砕されたとか」
「あぁ、まぁ可愛いもんですよ」
壁ドンならぬ壁ドカン。新しすぎるトレンドに胸キュン狙えるかもな。
「君は心が広いなぁ。普通だったら逃げ出すか投げ出すかするだろうなぁ。なんでだろうなぁ」
「そんな逃げ出すような奴は男としての機能を失えばいいんです」
「あ、男だけじゃなくて女の子もね」
「あいつ、女の子にも避けられてるのか。まぁ女の方が争い方が男より数倍怖いですもんね」
「そうだねぇ……って話を逸らさないでくれるかな! こうなったら単刀直入に聞くけど、なんで君はベルちゃんのためにそこまでしてくれるんだい?」
今まで聞かれてはぐらかし続けてきた問い。
だが今回ばかりはちょっとはぐらかすのは無理そう。
会長さんの目が鋭くなった。完全に怪しい奴を見る目になっちまってる。
あいつのことを大切に思ってる証拠か。その目は明らかに
『下手な回答だったらただじゃおかない』
と物語っているのだから。
「……」
ふぅ。吐息をはいてその場の空気を軽くする。
しょうがね。
そう思ったことが顔に出て、諦めたようなヘラヘラとした表情となった俺の口が動いた。
「俺も一緒だからですよ。あいつと」
俺は涼原先輩に過去を話した。
ハルの時みたいに感情的に、だけど素直に全部をぶちまけた訳じゃなく。
端的に、何々があった、俺がこうなった、今はこんな感じとペラペラゆるい風が通る感じに話した。
真顔で言えた方がもっと相手は驚かないと思ったけど、まぁそこまで感情操作は上手くないしね。
だいぶ泣きそうな顔をしてた気がする。
「俺、少しは治ってきてるんですけど、やっぱり普通じゃないんです。頭のどっかの回路がどうしようもないレベルでイカれちまってんですよ」
そして、このイカれ具合はもう生涯治ることはない。
「多重人格者って言えばわかりますかね」
あぁ……何言ってんだろ俺。
口が、止まんねーな。
「正にそんな感じで、あー、なんって言ったらいいのかな。えっと……俺って、言ってることめちゃくちゃなんです」
厳しい口調になったかと思えば、急に穏やかになって、時々喋り方も変わって、怒ってたと思えば、すぐに笑い始めたり。
「さっきも言いましたけど、俺の権限で溶けていく俺自身の体を作り直し続けて、そんなことやって、体が正常に働いてくれる訳がないんです」
こんな出来損ないの能力で完全に補助などできようはずもないのだ。
縫い目はほつれ、絡まり、バラバラで規則性がなく、長さも不安定なそんなツギハギだらけの人形だと思ってくれればいい。
「ただ溶けないように必死だった。ただ死なないように必死だった。でも、やっぱりどうしようもなかったんですよ」
「……じゃあ、君は」
「えぇ、繰り返しになりますがさっきも言った通り、俺は、いや荒杭 勇魔は、その言葉通り死んだんです」
そして生き返った。
右腕が二分の一くらいの長さで形は歪、指は三本と申し訳程度に少し伸びて。
薄い幕みたいな皮膚に覆われた鉄色の内臓、腸は長さも太さも面白いぐらいに不規則で、くぼむ腹すりゃありゃしねぇ。
左腕は見るも無残なボロボロになった骨。
足は、まぁ、どこのショッキング映像かと言っておこう。
意識はあった。何も感じないどす黒い景色という意識が。
そんな人形が生き返ったのだからあら不思議。
まぁ生き返っておかしいことだらけさ。
今回のことにいたっても
第三者の視点から見た自分の姿の記憶とその人形になっていた時の意識の記憶両方があるのだから。
おかしいよな。あぁ笑ってやったさ。
抑える腹があって驚きながら転げ回って笑ったさ。
もう何がなんなのか訳がわからなかった。
虐められていた奴らから嘲笑われながら殺されたという現実に涙を流した。
魔物の腹ん中で苦しみ続けた時の記憶が脳を焼き、吐きながら発狂し叫びまくった。
訳がわからなくって、もうなんでもいい気がして、頭を抱えて涙を垂れ流しながら一ヶ月程笑い続けた時もあった。
ケラケラケラケラケラケラケラケラケラと。
「あはは……凄いっすよね。それでも俺、生きてるんですもん」
一ヶ月食わず飲まずでちょっと窶れるだけで済んだし。
何よりよくもまぁその時死ぬことを選ばなかったもんだ。
いやまぁ選べなかったんだけどね。
考えなかった訳じゃないさ、勿論ね。
でもさぁ、本能に深々と刻み込まれてるんだよ
『死にたくない』ってさ。
「悩みましたよ。生きることは辛いのに、死ぬことは選べない」
間接的に死ぬようなことをしても、体はビックリするほどタフになってた。
栄養を取らなきゃ死ぬらと思って食わなくても、死ぬことはなかった。
逆に食わないことで途轍もない飢餓感が暴れ狂い、最終的には苦しんだだけ。死ぬ前に俺の我慢が振り切られる方がずっと早かった。
他も似たり寄ったりだ。
「んで。最終的にどうなったかというと、一周回っちゃいました」
ほらいうでしょ?
裏の裏は表だって。
俺も狂って狂って、正常になっちゃいました。
「実際はそんな簡単な話はなく。『狂っているはずなのに何故か精神は安定して正常になった』んです。
それって、普通の狂人よりずっと狂った狂人だと思いませんか?」
そう、俺は狂ってる。イカれてる。
だから
この言葉を先輩に言った時に、茶化したような満面の笑みができるんだ。
「いや、すみません。狂人狂人って、それしか言えないのかって感じですよね。語彙力なくて」
いや、そうじゃねぇだろ!
そこじゃねぇだろ!
根本的な話でそうじゃねぇ!
それがわかんねえからてめえは
「…………うるせぇよ」
ぼそりと呟く。
正常気取ってんじゃねぇ! 何がてめえはだ!
こうやって明確に確かに明らかに!
自分自身と本音の口喧嘩ができてる時点でもうおかしいんだよ!
二つ両方ともが俺の本音で、嘘だ。
「ユウマ君。君は」
「あぁいや。俺と同じって言ったのは別にベルがおかしい奴って言いたい訳じゃないですよ?」
まぁそんなネガティブかましてヒッキーやってた訳ですが。
結局一つの論点に達した。
俺が誰だろうといいじゃねぇか。と
前のユウマはユウマ。俺は俺。
俺は新しい『荒杭 勇魔』だ。と
ニュータイプだ。と
親父の権限は人を生き返られるようなもんじゃない。
そのせいで、混ざっちまったんだよな。
親父の、剣帝のもつ、『転生』の能力のせいで。
「決めたんすよ。その時俺がやりたいと思った事を、全力でやろうって」
悩むのがバカらしくなったんですよ、これが。
それに、俺は俺だと言ったけど、別に前のユウマが完全に消えた訳じゃない。
その時の俺も踏まえて、今の俺がいるという訳だ。
だからまるっきり別人って訳じゃない。
「強くなりたかったんですよ。強く、唯純粋に、遠すぎる背中を追い続けて、いつか追いつきたいって、そう思ったんです」
だから考え方だって変わらなかった。
弱いままは嫌だった。そして、弱いから虐められていた自分が嫌だった。
だから、力を得たいと思った。
「でも勇者の国にいたら、きっと俺はまたトラウマやら何やらでどうしようもなくなりそうでしたし」
ここは、どうしてもね。心の問題ですし。
「どうせ俺は勇者なんてもんに似つかわしくないし、だったらもう他の道を探そうと思いまして」
そんで、親父に勧められていたことも相まって、ここに来たという訳ですよ。
「ははっ。すみません、どうでもいいですよね。こんなの」
マジで何やってんだ俺!
なんか変な勢いでハルにも言ってないこと喚いた気がするぞ!
あ、 いや、大事なとこは心の中で補正してたし、あまりわからなかった、かな?
なに勢に浸って自分語ってんだ俺! 恥ずかしい!
「ユウマ君」
「は、ひゃい!」
ドン引かれた〜。もうおしまいどぉあ〜。
さようなら、俺の人生。
そして初めまして、俺の来世。
「まず謝るべきかお礼をすべきか迷ったんだけど」
だが、先輩は俺の想像より斜め上をいった。
「お礼を言わせてもらうよ。ありがとう、ユウマ君」
は、はい?
「君がベルちゃんと仲良くしてくれるのが悪意ではなく、そうでありながら下衆な好意からでもなく
純粋に彼女と仲良くなろうとしてくれていることがよくわかった。君は僕が思っていた以上に彼女にふさわしい人だ」
は、はぁ。それはどうも。
てかどういう話だったか読めなくなってきたんですけど。
「そしてごめんなさい。君が何か良からぬことを考えているのではないかと疑ってかかってしまって。こちらから頼んだことだというのに。
しまいには君のいやな記憶を掘り起こしてしまい。本当に、何とお詫びをしたらいいか」
「ああいやいや。気にしないでください。それにベルのことで敏感になるのはわかりますので」
確かに、あのベルの過去の話を聞いて即決断するような奴 怪しいわな普通に考えて。
それに昔の話したのだって俺が勝手に喋っただけだし。
「そういう訳にも……あ、じゃあ僕に何かできることはないかな?
お詫びと言っては何だけど、僕にできることなら何でも言ってよ。ほら、これでも僕、生徒会長だから」
職権乱用する気ですか……
あ、いやでも、それなら
「んじゃ、そ、そういうことなら……」
どうも(ちょっとフライングしましたが)帰ってまいりました終匠 竜でございます。
10月になったら帰ってくると宣言してから(なんだかんだで9月に1話投稿できましたが)八日が経過致しました。
話の流れ具合から描きたいなぁ〜と今まで思っていたことを書いちゃいました。
似たようなこと前に書きましたけど、それよりちょっと壮絶になっちゃってますね。
初期設定決めた時にこんな感じだったんで、前書いた時は少し書き足りないなと思ってまして、まぁいい機会だったから書かせていただきました。




