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受験終了後のあれこれ③!!


「あら」


寮に戻ってきてみりゃ、ハルいないじゃんか。


「入れ違いになったんかな。まいいか」


ベットに腰を下ろし、背中に担いでいた『決闘龍王ブリューゲル』を前に立てて抱きかかえるようにし、目を瞑る。


何でこの部屋にいたのかは知らんが、心配してくれたみたいだし、お礼ぐらい言っとこうと思ったのに。

後でもいいかな。


「ふぅー……よっ」


刀に魔力を込めるとパリッというような音がして、意識はすっと切り離される。


「うっす師匠。おはよ」

「うむ。起きるのが遅いでな、ハルカが心配しておったぞ。

では、これより劍術の稽古に入る。構え!」


えーっと、力を込めすぎず、立つ姿勢は背筋を伸ばしリラックス。刀の切っ先が自分の目の前に来るように手の置き場所を調整。

常に思考を切らさず冷静に、その間も余計な考えを全て捨て、最適以外の選択肢も幾つか用意しておく。


「すぅー……ふぅー……」

「まだ力んでおる。余計な力を捨てろ! 最速の動きは、その0から100への瞬発力から生まれる!

何も考えないのと、余計な力を捨て0の状態になる事は違う。考えを切らすな。考え続けろ。視野を広く持て。

可能性を全て思案し、相手がどう動き、それに対し自分はどう動くのか、それを考え戦う事は剣術だけではない。全ての闘法に準ずるものだ」

「は、はい!」


闘龍。

龍族の中でも珍しい、属性を持たない龍。

龍と言っても、姿は人間のもの。(まぁ、人間じゃありえない強度なんだけど)

属性を持たないためにブレスなどの竜が本来持っている力を受け継いではいないが。

剣術・槍術・魔術(魔法で闘うことね)・盾術・柔術・剛術・守術・打術・破術といったありとあらゆる 闘う術 のエキスパートであり、それを司るための壊滅的な才能を持っている。


俺は師匠に弟子入りして(我が主人が弱いなど、断じて許せん。と言われ強制的に特訓させられたのが始まりだったが)、『剣術』を教えてもらっている。

『魔術』でもよかったのだが、魔力を自前で生成できない以上、限界があると思ったから止めた。



でもこれがちょっと感覚的な指導が多いっていうか、何というか。

まぁ、頑張って言う事を聞いているのだが、これが上手くいかない。


『龍化』すれば闘龍の戦闘の才能が得られるが、それじゃ特訓にならないよなぁ……

とほほ。


「素振りから、1000回。始め!」


さてさて、今日はいったい何回素振りさせられるんだか……

せめて、20000が超えないように頑張ろう!


「一! ニ! 三! 四!」

「振りが甘い! 力が抜けすぎておる! もっと素早く軽やかに! 2000追加!」


にぎゃぁぁあ!

たった4回でこんな増えた!

やばいやばい!

このままじゃ最多素振り回数更新しちまう!(現在の最多素振り回数、初日の365000回)


目標、100000に変更っと。


「一! ニ! 三! 四……」


素振りの声と風を切る音は、何もない空間へと少しずつ溶けていく……


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「よし、止め! 休憩!」

「ぶへぇー」


もー無理。

通算205000回。

結局平均は毎度同じか……進歩ねぇ〜


はー、手に血が……

プラプラ


「よし、休憩止め!」

「今始めたばっかりですけど!?」


こ、この。スパルタ師匠は、たくっ。


「文句を言うでない。ほれ、立たんか立たんか」


パンパンと手を叩く。


「我の精神世界では疲れとかはたまらんはずなんじゃがなぁ」

「不思議そうな目で見ないでくれます!? 精神的にも人間は疲れるんです!?」

「文句の多いやつじゃな。なら、途中でほっぽり出すか?」


な!

ほっぽり出すもなにも、最初に始めたのは師匠の方じゃないか!


「少なくとも、我は主の強くなりたいという思いには応えてやりたいと思っている」


急に優しい声で言われたため言葉につまる。


「我の力を常時使えるのなら、こんな事も不要だろう。だが、使えば最後、主の魔力を最後の一滴まで絞り尽くす我の力は、言って見れば切り札のようなものじゃ。

この前も、切り札を早く使ってしまって痛い目を見た。

ハルカがおらんかったら腕輪の効力で死なないにしても、ニ度と挑む気にはなれずそのまま退学、ということも十分ありえた」


そう、だよな。

そうだそうだ。最初に始めたとか関係ねぇんだ。


強くなりたいというのは、俺の願いで。

強くしてくれるというのなら、俺はそれに従うべきなんだ。

そうだ。だから俺はこの人を、師匠と呼ぶんだ。


「なぁ、師匠」

「なんじゃ?」

「どうして俺を強くしようとしてくれるんだ? まさか、前の我の主が弱いなど断じて許せんっ! ってのがマジの理由じゃないよな?」


でもやっぱり疑問なのだ。

どうして師匠は俺の願いに応えようとするのか。


「ふむ。 主が死ぬと我も死ぬからじゃ。

どうせ刀として生き返ったのじゃ。もう少し楽しみたくてのぉ。そのため、主には死んでもらっては困るのじゃよ」


今明かされる衝撃の事実!?


あ、でもそうか。

俺が作った能力で生まれた刀だ。だからその能力の源である俺が主人だし、俺が死ねばその生み出されたアイテムも死ぬ

の、かなぁ……


「ま、というのも割と建前で」

「お、おぉ、建前だったんすか。で? 結局何なん?」

「んー」


明後日の方向を向きながら下くちびるに人差し指を乗せ


「内緒、じゃな。ふむ。乙女には数え切れない秘密があるのじゃよ」


そう言って俺のほうを向き、片方の口角だけ大きくしたような笑みを浮かべ ニッシッシッ と笑った。


いつもは豪快にクハハハハと笑う癖に、こういう時は妙に女らしい笑いをする。


はぁぁあ! よっこいしょっと!


「ふぅ……では師匠。続き、お願いします」

「うむ。では初級剣術を、一通りこの人形に打ち込め。そうだな、数はいくらでも出せるから、取り敢えずこれだけいってみるか」


ちょおっ!

一体何個あんの! 先が見えないんですけど!

見ろ、人(形)がゴミのようだ。


「初級決闘流剣術 『零白徒(ゼロはくと)』」


刀を鞘に収め、手を腰にため、目を閉じる。


「いだぁっ!」

「バカモンが!」


そして激痛は俺の脳天を駆け抜ける。


な、殴らなくてもいいじゃないですか!

ちょっとした意趣返しですよ。


「それは敵の攻撃を誘いそれ以上の速度で斬り伏せる『居合い』の型だ!

攻撃してこない人形に使ってどうする!」

「師匠が初級は全部試せって言ったから」

「うぬ……」


うはは、一本取ってやったぜ。

座布団一枚。


「主はそれが言いたくてやったのじゃな、全く」


バレテーラ。


「それとじゃ、居合の型 初級は『零線(ゼロせん)』。『零白徒(ゼロはくと)』は中級じゃな」


一本取ったと思ったら取り返された。

相変わらず俺は詰めが甘い。


「では改めて、初級決闘流剣術『零線』!」

「それはもうええわ!」


また小突かれた。

ぐすん。



◇◆◇



「えーっと……ブリューゲルさんから連絡ありっと。

何だろ? はいもしもし」


『現在、ハルカの探し人は自らの寮の部屋で我に扱かれておる。

会いたい! のならくるがよい』


何で会いたいを強調するの!?

……まぁ行くけど


こ、ここからそう遠くないしね。




「お、お邪魔しまーす」


あ、ノックし忘れた。

ま、別にいっか。


ユウマはすぐに見つかった。

ベットに腰掛けて大事そうに刀を抱えて寝てた。


あ、寝てるんじゃないのかな?

ブリューゲルさんの精神世界に行ってるのかも。


それにしても、ず〜いぶん大切そうに抱えてますね、ブリューゲルさんのこと。

とりあえずイラッときたので、鼻でもつまんでやろうかと思って近づいたら


ユウマとばっちり目があった。


へ?

あ、いや、その。


うわー、あー、うわー、あ、ちょっ、えー!


近い近い近い! ユウマがすごく近い!

顔がどんどん熱を持っていくのが否応無しにわかってしまう。


「お、おはよ」


ユウマはちょっと戸惑ってるみたいだけど、別に何も感じてないような挨拶をしてきて

でも今の私はそんなものに構っている余裕はなく

逆に自分がこんなに動揺してるのに、ユウマは!

という逆ギレに近い本能に従い体を動かした


◇◆◇


「今日はここまで! 帰ってよいぞ」

「え? ここまで?」

「うむ。早く戻るとよい」

「え? でも、いつものメニューまだ全部こなしてませんけど……」

「よいと言っておるのだ。それに今日反動から目覚めたばかりであろう。無理はせん方がよい」

「ああ、それならご心配なく。ぐっすり寝たおかげか身体はすっかり軽いので……」

「ええい! さっさと帰らぬかバカモノめっ!!!」


えぇー、何でぇーー!


罵倒だけではなく拳までハッピーセットについてきた。


「わ、わかりましたよ。 何でそんな怒ってるんすか?」


まぁ、もう戻っていいなら戻るけどさ……

痛む頭をさすりながら戻るように魔力を送る。



視界が白い空間から真っ暗なものに変わる。

閉じていた目をゆっくりと開けると……


超至近距離にハルの顔があった。


うぎゃぁぁぁぁあ!?


は!

はぁっはぁ。危ない。口に出さずに済んだか。

女性の顔を見て悲鳴をあげるというのは、流石にモラルに欠けるからな。

し、心臓に悪い。


「お、おはよ」


とりあえず平静を装って朝の挨拶。

挨拶は会話の始まりであり、一日の始まりである。


ふぅ……びっくりしたけど、取り会えず落ち着いてきた。

でもハルどうしたんだ急に。

もうちょっと近づけばキスできる距離だったぞ?


ハルはそれがわかってるのか、わかってないのか

顔を真っ赤にして後ろに半歩下がり


「きゃぁぁぁあ!!」


それはもう熱い熱いビンタという名の一撃をもろにくらい、地面とキスさせられた。

何なのよ……


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「おい」

「ごめんなさい」


いや、別に謝らなくていいけどさ。

ただ、そのしおらしく目に涙を浮かべ、女の子座りで上目遣いに俺を見られても困るんですよ。

ですから、それを止めてもらおうと思っただけだから。


「はぁ、何でハルが俺の部屋に?」

「合鍵を使って」

「部屋の主に許可を得ずに?」

「…………」

「別にはいってもいいけどさ。危機感くらい覚えたらどうだ?」

「危機感? なんで?」


この女。

もしや、アレでアレなアレのような本とか読んだことがないのだろうか?

知識ないのだろうか?


「男の部屋に勝手にはいって鍵まで閉めて、そんな無防備だと狼に襲われても文句言えんぞ?」


俺の発言の意図を理解したのか、一気に顔を真っ赤に染め

何か言おうと口を開きかけ、やめ、俯いてチラッとこちらに視線を送ってくる。


ん?

おかしいよ?

何ムード作っちゃってんの?


おいおい。どうすんだよ。

喋れなくなったんだけど。


端から見れば砂糖を吐き出しそうな甘ったるい空気が流れていたが、そのど真ん中にいる人間はたまったもんじゃない。


へ? なに?

このまま押し倒すのが礼儀なの?


いやいや、なにバカ言ってんだ! 引っ込んでろ!

それに俺も、まだまだアレでアレな健全なチェリーだ。

一度の過ちで、一気に関係が悪くなることだってある。

俺の親父がいい例だ。


あのクソ勇者。

俺はあんな女に対してはゲスとしか言いようがない男にはならないと誓ったはずだ。


「ふぅ……で? 何か用があったんじゃないの?」


特訓の時によく使う精神統一をフルに活用し、さっさとこの空気を変えよう。


「え? あ、うん。先生に呼び出しうけてて、ユウマが起きたら連れて来いって……」

「そか。んじゃさっさと行こうぜ?」

「う、うん……」



取り敢えず、この狭い空間から早く脱出しようぜ?



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「初めまして、荒杭 勇魔さん。小寺 春花さん。私は火と風、空間魔法を基本に教えている、四ノ宮と申します。

まずは二年生への昇格、誠におめでとうございます。

それにあたり、一年の時に説明されていたものから、変更されることが多々ありますので

それの説明をさせていただきます」


メガネ教諭。

魔術師っぽいメイジハットにスーツみたいなローブ。

背丈はちょっと俺よりでかいレベルか。


「まず、寮が一年生のところから二年生のところへと変わります。

あとでまたお教えいたしますが、勇魔さんは3056号室。春花さんは4896号室になります」

「質問、いいですか?」

「はい」


ああ、質問は許されるんだ。


「その寮って、男女別じゃないんですか?」

「ええ、違いますよ?」


違うんかい!?


「そうなると、こー、犯罪的なことが起こったりとか、ないんですか?」

「大概ありませんね。この学院は防犯対策は万全ですし、その中で犯罪を犯そうとしても明らかに襲った方がボロボロにされる上、退学処分も待ってますから」

「どうして襲った方がボロボロになると?」

「罪を犯そうとした瞬間、この学院のいたるところに設置されている魔法阻害結界が作動し、身動きは封じられ魔法も使えなくなりますので」


そんで、二年生に上がってくるような人は大概魔法も強いの使えるし、退学にもなるしってことか。


「成る程。わかりました」

「では、次に。クラス分けを」


クラス分け?


「すみません。また質問です。この学院授業とかいう制度はありませんよね? クラスのある意味あるんですか?」

「はいあります。確かに授業を受けたりなどはありませんが、学院の行事(イベント)でクラス対抗のものも幾つかあり、その時にチームとして戦ったり、逆にそのチームで生き残り戦をやったりなどをするので、クラスというものはあるのです」


ややこしいな。

でも必要なら仕方がないか。


「ありがとうございます」

「説明に戻りましょう。クラス分けですが、お二人はコンビを組んでるとのことでしたので、同じAクラスです」


Aクラスか、案外普通だな。


「現在二年生のクラスはA〜Z、AA〜ZZ、AAA〜LLLまでの64クラスあります」


頭こんがらがってきた。

えーと。

ABCD……Zと行って、AA BB CC……ZZと行って、AAA BBB CCC……で、Zまではいかず LLLか。


うん、わかりづらい!


「次に、パーティーについて」


パーティー?

勇者パーティーみたいな、そんなもんか?


「パーティーとは言っていますが、基本的にグループといった感じの方がわかりやすいですね。

学校内で大概一緒にいるような人とパーティー編成というものができ、最大10人まで一つのパーティーに入ることができます。

パーティーメンバーとなれば、幾つか制限はつくものの、その分幾つかの特殊な措置を受けられます。

パーティーメンバーだけで会話するためのパーティーチャット。指定した人と脳内で会話できるフレンドチャット。パーティーでなければ受けられないクエストもあったりもしますね。

それに、これが一番の理由ですが、パーティーで協力して行われる一大イベントが年に一回開催されるのです」


ずいぶんグイグイ来んなこの人。

パーティーってそんないいもんなのか?


「そのイベントは5人参加型。パーティーメンバーの中から一人づつ『先鋒』『次鋒』『中堅』『副将』『大将』と順番を決め、

3回勝ち越したパーティーの勝利となるバトルロワイヤル。

その時にいい成績を出すとかなりのポイントが手に入り、進級へ大きく近づけます」


ふむ。

パーティーね。

メモメモ。


「大きいところは、この三つでいいでしょう。あとは小さなことが幾つかありますが、それはまた後日、脳内インプットされたデータの中に上書きしておくのでそれを確認してください」

「わかりました」

「では、今日中に二年生の寮へと移ってください。あと、施設は一年生のところではなく、これからは二年生のところも使って結構です。

寮番号は繰り返しになりますが、勇魔さんは3056号室。春花さんは4896号室となります。お間違いにはくれぐれもご注意を」


あー、頭がスンガズンガするんじゃ〜



「んじゃハル。戻ろうぜ?」

「あ、うん」


ぼーっとしてたけど、ちゃんと理解したんかな?


首を抑えてくわぁっとひとあくび。


うん? そういえば。



「あの、四ノ宮先生? 俺たち二年生の寮の場所、知らないんですけど」


一瞬 ほえっとした表情をしたあと、いきなり慌てだした。


「あ! あぁぁぁぁ! そ、そういえば、説明不足でしたね。も、申し訳ない。

で、ではこちらへ、ご案内いたします」


すげぇ動揺してた。

もしかしてこの人、ドジっ子か?



ああーあぁ。


あれ? 何か忘れているような?

というフラグが立たないか、非常に心配になってきた。



ふぅ、やっぱりユウマさんはヘタレだった。

安心安心。


ふぅ〜……これで受験編は完全に終了ですね。

さてさて、二年生となったユウマとハルカ。

果たしてどんなことが待ち受けているのでしょうか。

てかこんな感じの後書き、一回書いたことあんな……


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