とある少女の心情!!
更新遅れて申し訳ないっ!
あ、話の点検・改稿が終了いたしました。
ではいざ!
更・新☆
◇◆◇
『……ようやく、我の出番か』
その言葉はより鮮明にこの世界に轟いた。
それは、体の芯から震え上がる というものだった。
怖くはない、この感情は恐怖ではないのだ。
ただただ、敵わないというような、戦ってはいけないというような、格が違うとか、そんな感じの。
緊張をもっと強くしたような、萎縮って感じ、かな。
「ああ、おはよう。師匠」
世界を揺らすその声に、物怖じせずに飄々とした言葉を返す彼の顔は、困ったような苦笑いだった。
彼はこの声に対して、怯むことなく落ち着いている。
あぁ、やっぱり、彼は凄い……。
心からそう思った。
自分は弱いと、何度も何度も吐露していた彼だけど。
聞いているだけで、こちらが震えて泣きたくなるような衝動にかられるような経験をして、何度も何度も苦しんで、それでも立ち上がって、自分の恐怖に立ち向かう。
彼は自分のことを弱いというけれど、彼はすごく強いんだ。
そして強いだけじゃなくて、とても優しい。
今、この時も。
ついさっきまで自分があんなに怖い体験をしていたのに……
助かったら、きっと普通は逃げるだろう。
それもそうだ。
怖いのだから。理屈じゃ、ないのだから。
だけど彼は私のところに来てくれた。
私はやられてもいい。
別に本当に死ぬわけじゃない。
ただ、不合格になるだけ。
それもものすごく悲しいけど、彼の手助けになれたのなら。
一度だけでいい。そう思って勇気を振り絞った。
出来た。
彼は吹き飛んじゃったけど、し、死んじゃったりとか、してないよね?
そう心配できたのも束の間、ドラゴンに睨まれたら、蛇に睨まれたカエルになった。
不思議と、怖くなかった。
体はうまく動かないけど、達成感でいっぱいだった。
彼はもぞもぞと動いて、こちらを向いた。
あ〜良かった。ここを逃げればまだなんとかなるかもしれない。
彼の目があった。
笑顔は自然に出た。
そして視界を暗転させる。
多分次に目を開けた時は、グラウンドの土の上かな?
そんなことを思いながら。
だけど彼は、助けてくれたのだ。
バサッとはためくコートの後ろ姿が目に焼き付いた。
とくんっと、胸が高鳴った気がした。
最初に彼と会ったのも、助けてもらったことからだった。
複数の男の人達に絡まれている私を見て、助けに……
あれ? 連れてこられた感じじゃなかったっけ?
あれれ?
ま、まぁいいや。
あの時はどちらかというと彼の方が怖かったなぁ……
顔が笑ってないんだもん。
なんか悪いことしちゃったのかなぁ。
でも助けてもらったことで、完全に気を許してた。
お、おんぶって、家族以外だとあれが初めてだったかも!
ど、どうしよう。なんか恥ずかしくなってきた。
頼んだら、またやってくれるかな……
初めての友達、なんで浮かれてたら、大打撃をカウンター気味にくらったっけ。
「はっ? いつ俺たちが友達になったんだ?」
一字一句覚えてます……
今でも自分で思い出して泣きたくなる。
ちょっと、いや結構ショックだったんだからね!
家族以外とご飯したのも初めてだった。
こう考えると初めてが多い気が!
そういえば私、友達いなかったし……
あの店は何度も行ったことがあるし、変なとことか、なかった、筈、多分。
大丈夫だったと願いたい。
それにしても彼のすまほって機械は凄かった。
色々なアイテムを取り出すことができたり、しまうことができたり。
何より、魔力を貯めることができるっていうことが凄いよね!
私も欲しいなぁ。
そう思った。
そういえば彼の事を少しだけど詳しく知れたのは、私のせいも、あるのかな。
クエストに無理やり誘ったのは私だった。
だ、だって。彼だったら大丈夫だって思ったんだもん。
何か根拠があったわけじゃない、ただの私の思い込みだったわけだけど……。
彼は、なんで嫌がらなかったんだろう。
あんなになっちゃうほど、魔物が苦手だったのに。
いや。別に嫌がっていなかったわけじゃなかった。
最初、暗い顔で俯いてた。
私はてっきり何か作戦でも考えてるのかって思ったけど。
あれはもしかして、悩んでたんじゃ。
うん?
悩んでたはいいとして、でもどうして拒否しなかったんだろ。
私に、気を使ったのかな。
彼は優しいから。
お風呂のことは……
・・・・
わーわーわーわーっ!!
忘れた忘れた忘れたぁー!!
うぅ……顔が赤くなっちゃうよ……
いろいろあったし、それは全部いい思い出で、ユウマに助けてもらうことがかなり多かった。
私が失敗して魔導書と契約してなくて、もうダメだって思って落ち込んだ時、慰めてくれたし。
点数を稼ぐ作戦を考えてくれたのも彼だし。
オークから逃げるために、何度もあんな爆発の能力を使って。
私は楽観的に考えすぎていた。
あれはユウマが創ったものなんだから、ユウマを傷つけるはずがない。と。
でもそれは大きな間違いだった。
彼の足は、酷いことになっていた。
もしかしたら、それだけじゃすまなかったかもしれない。
それなのに彼は、気丈に振舞って、何でもないかのように笑ってくれた。
隠そうとしていたのかどうかはわからないけど、無理してるのはわかった。
彼は私にいろいろとしてくれるけど、私は彼に何もしてあげられない。
そう思ったら、自分の無力感が情けなく思えた。
それじゃ嫌だと思った。
今度こそ役に立つぞと、心に決めた。
なのに私は、彼がピンチになった時、ゴブリンにやられた時、足がすくんで動けなくなってしまった。
何もできなかった。
彼は何度も私を助けてくれたのに、だ。
私は申し訳なくて、悲しくて、自然に涙が出た。
だから、今ドラゴンの時は助けられてすごく嬉しかった。
そして、彼は、ユウマはまたドラゴンに立ち向かっている。
私は、助けられるだけじゃ嫌だ。
確かに助けられるのは気持ちがいいし、嬉しいけど。
助けられるだけじゃ、嫌なんだ。
ユウマの隣で、一緒に助け合える人になりたい。
だって、私とユウマはコンビなんだからっ!?
私は今、学校に向かって走ってる。
逃げてるんじゃない。
「待っていて」
と叫んで私は走り出した。
後ろから、「おい! 戻ってくんなよっ!?」なんて聞こえたけど、嫌だもんね。
私たちは比較的学校に近いところまで来ていた。
今はユウマが、ドラゴンの相手をしてくれてる。
置いていくのは辛いけど。
そのまま何もできないまま見守るのはもっと嫌だ!
だから早く行って。早く戻る。
もう視界には森の出口が見えている。
今朝はまだ開いてなくて、入れなかったけど。
早く行くんだ。
すぐ戻るからっ!
待っててね! ユウマっ!?