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友人と知人とときどき客人 その1

まずは謝罪を。


未完成の文章を一度投稿してしまったこと。

投稿が1ヶ月以上も遅れてしまったことに深くお詫び申し上げます。


ルビの振り方を知り、多く使ってしまいました。

読みづらいと感じるかもしれませんが何卒よろしくお願いいたします。


木造のカフェのテラス席。

そこで俺は左手で推理小説を開きながら右手で黒い液体の入ったカップを揺らしていた。

そうして香りを楽しみ、口へ運ぶ。

フワッとカラメルのような芳ばしいアロマが漂い、鼻腔を抜けていく。

そして口全体にマイルドなコクとさわやかな酸味が広がる。

何を飲んでいるのか、と言われればマイルドブレンドのコーヒーだ。

太陽は少しだけ西に傾いてはいるが、ここで頂くコーヒーは何時(いつ)飲んでも美味いのだ。

ふと左手首にはめた腕時計を見る。そろそろあいつが来るだろうかと思い、本を閉じる。

テラスからは長閑(のどか)な草原が広がり、広々とした青空も一望できる。

そんな景色に欠伸(あくび)をする。


「お待たせ。ヒロ君。3ヶ月ぶりだね」

待ち合わせの相手の久しぶりに聞く声に、振り向こうと首を回す。

その相手の顔は眩しい陽光によってよく見えない。

しかし、声やその女の子だけが使う俺の愛称で、誰かは分かる。

俺はカップを皿に置き、席を立って彼女の(もと)へ数歩近づく。

振り向くだけでは気付かなかったが、カフェの中にこちらを見守る人影がある。顔は影が掛かってよく見えない。

「おう、久しぶりだな。ところであそこにいる人って...」

俺はその人影を人差し指で指し示す。

「彼氏だよ」

最後に見たのと変わらない笑顔で告げる。

そうかー、彼氏かー。

なんとも微笑ましい。俺もなんだか嬉しくなる。

「そうか。幸せになれよ」

「今でも充分幸せだよ」

「なによりだな」


閑話休題


「で。私は何で呼ばれたのかな?」

「百聞は一見にしかず。まずは見てもらおう」

カフェを出て先程までテラスから見ていた景色へ歩き出す。

丘陵の手前で立ち止まる。

「これから、この先にある真実を見てもらう」

「真実?なんの?」

一拍間を置いて、告げる。


「この世界の、真実」


「ふふっ。おもしろそうじゃない」

自信に満ちた表情をしている。

何事にも屈せず、努力し、挑戦し、最後には勝利を収めてきた少女が、満面の笑みを浮かべる。

この笑顔の前に、何人もの強者が敗北を認め、少女を讃えた。

「安心したよ。やっぱりお前を呼んで良かったと思う」

そして、大股で左足を一歩踏み出す。後ろに振り向き、彼女へ手を伸ばす。

「さあ、真実を――壊そうぜ!」

彼女が俺の手をしっかりと握り、二人で一気に踏み出す。

――




――夢だった。

夏休み1日目。

昨晩は「今日から夏休みだぜ!」という気分で夜明けまでゲームをしていた。ゲームと言っても、テレビゲームはもちろん、トランプや物を使わない対人遊戯もやった。

当然ながら一人でできることではない。

現在午前10時22分。

「弐号室」の間取りの中では最も広いリビングには4つの寝袋があった。

ソファーベッドの上で青い寝袋に身を包んでいるのは同じクラスの友人、海田(かいだ)才人(さいと)

俺の密かな趣味の一つである料理のアドバイスを頂いたことがきっかけで親交を深めるに至った。

やはり料理の腕前は中々のものらしく、彼の料理の味を知ってしまった者達は事ある毎に賭けをしている。

その賭けとはこういったものだ。

①海田にとって不利な勝負は不可

②海田が勝利した場合は飲み物を奢り、海田が敗北した場合は海田に弁当か料理を作ってもらう

という簡単なものである。

まあ、不利な勝負を挑まれない海田が基本的には勝利するんだけど。

そんな中で唯一海田にテストで勝利したのが、テーブルを退かしたカーペットの上で赤い寝袋に入った美少女の抱き枕を抱いて布団に入っている、高敷(たかしき)(かい)である。

勢いと情熱だけで出来ているような人で、普段のテストでは赤点ギリギリだったり赤点だったりしたのだが、海田の料理を味わってしまったことにより、一度だけではあるが海田に勝利したのだ。

ちなみに彼の特技は格闘。独学マンガやアニメで修得し、さらに自分でアレンジを加えたもので、彼に闘いを挑めば勝利はない、だろう。きっと。なにせ実践経験が彼にはないのだった...。

そんな"友人"達と共に一晩を過ごした俺以外の人物は黄色い寝袋を使っていた。

しかし、うつ伏せに寝ていて顔は伺えない。


まあ、亮介なんですけどね。

寝返りを打ち仰向けになる。

亮介の顔が露になる。

プーッ クスクスクス。

なんだあの寝顔!

寝袋で寝るとあんな顔するのか!

普段、布団で寝るときはだらしない顔してるのに!

プフー クックック。

目と口が横棒と化している!

真一文字!

「ふふっ。はっ――――――――はっはっは!」

思わず声に出して笑ってしまった。

俺の笑い声で海田と高敷が起きる。

幸いというか、亮介は起きなかった。

「ちょ、亮介!亮介見てみ!?」

海田と高敷を起こしてやる。

「亮介?亮介がどうし、プッ、アハハハッハハッアフッフフフフ」

高敷の遠慮のない笑いがリビングに響く。

海田は顔を逸らして唇に拳を当ててくすくすと笑っている。

そろそろ亮介も起こしてやるか。

「おーい。起きろー。(ペチペチ)」

無防備な頬を軽く叩く。

寝袋なので抵抗できない。手も足も出ないとはまさにこのことだろう。

あ。ちなみに俺の寝顔は緑色だ。

「ンムゥ...ム。ムム...ん!?」

「遅い朝飯と早い昼飯、どっちがいい?」

「ごちそうさま」

最後に早い昼飯を終えた俺は食器をシンクへ運ぶ。

俺の食事は基本的にゆっくり。らしい。

今回の一品は海田による炒飯(チャーハン)であった。

だが、この炒飯。海田にしては何か物足りなかった。

俺としての結論は、パラパラしてなかった。

食器を水に浸し、調理している間に戻した四角いけど角は丸いテーブルの元に腰を下ろす。

「なあ海田。お前程の腕をもってしてもパラパラチャーハンは難しいのか?」

「確かに難しいだろうけど、そもそもパラパラなチャーハンなんて一般の家庭ではほとんど作れないよ。

パラパラチャーハンを作るには高い火力と高温に耐えられてなおかつ大きなフライパン――主に中華鍋を使わないとただのフライパンでは厳しいね」

「そんなもんなのか」

「うん。でも味には自信があるよ」

「ああ。美味かった。味はしっかりと整っていて、米と他の具のサイズはほぼ同じ。だけど他それぞれの具の食感も感じられた」

「俺もそう思った、いや、感じた」

高敷が感慨深げに呟く。

「料理を食べてあんなに一気に言葉が浮かんでくるのはお前の料理ぐらいだ。料理の極地、"官能"を思い知らされる」

「亮介はどうだった?」

なんとなく訊いてみた。

「美味すぎた。広人の料理なんてもう食えないかもしれない」

「うるせえ!海田に教えてもらってるからいつかウマくなんだよ!」

「期待はしておくよ」


程なくして。


「で、この後どうする?」

このバカ高敷!それは死の言葉(デス・ワード)だぞ!

死の言葉とは、その言葉を発したことが引き金となり、会話が死ぬ(、、)というものだ。

そしてこの「この後どうする?」は死の言葉の内、"永転(ループ)"に属する言葉だ!

この言葉に対する回答はされず、終わりのない会話が続く。

これの攻略法は言葉を使わないこと。つまり、行動を起こすことである。

誰かが行動を起こすことにより、新たな会話が生まれる(、、、、)のだ。

それを実行するべく、立ち上がろうと思ったのだがしかし。

「俺一回帰るね」

海田が立ち上がったのであった。

皆の「なんで?」という視線に対する応えはなく、既に中身の入ったバッグを肩に掛ける。

そして振り向き、視線への応えを告げる。

「そろそろ一般的な昼飯の時間だ。俺は家に帰って妹達に飯を作らねばならん」

「妹いるの!?」

その発言は高敷によるものだった。

先程の紹介では抜けていたが、高敷は勢いと情熱のあるオタクであった。

高敷は瞳を閉じて、いじめが発覚し、学級会議が開かれ、生徒が緊張による沈黙を充満させる教室において最初に語り始める教師のように、

「妹とは、あくまで個人的な意見ではあるが最強の属性であると俺の中では確立している。

妹属性。それは最強の証。それは当然ながら妹に与えられるもの。しかしそれは同時に妹という存在をもつ者、兄、もしくは姉にも兄(姉)属性として確立する。

そしてその最大の...」

「もう行くね」

しかし時間のない生徒は語りを遮り、去っていったのだった。


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