小さき命
目を覚ますとそこがまだ地獄であると認識する。
私は起き上がる、身体は人間の女性に近いモノ―銀色の髪に翡翠の瞳、身長は160半ば―だが決定的に違うのはその存在だ。
我々化物は行った行動で大分身体の質が変化する。
私は昔から戦い続けた、今はもうなにで死ねるのか解らないくらいだ、空に上がり宇宙空間に行けるならもしかしたらと考える。
けれど無駄な事なのだろう、私の身体は水爆を受けた際衝撃は平気でも放射線は耐えられなかった、ほんの数秒だけは。
すぐに無いモノに適応してしまう私はとうの昔、魔法使いの作った真空空間に適応している。
空気がないとかそんなの関係ない、宇宙で人が死ぬのはなぜだと言ったかそんなのは忘れてしまったが適応してしまうだろう……もしかしたらだが。
誰でも良い私を……殺してくれ。
その時かすかに何かの音が響いた。
「人間か?しばらく来ないと想ったら新兵器の開発でもしていたのか?」
私は音のした方に脚を進める、もしかしたらこの身体を壊してくれると希望を持って。
しかし、それは期待外れで予想外の答えだった。
「子供?それもまだ赤子ではないか」
私は音の出所まで着いてそう呟いた。
いや、待てなぜこのような場所にここはまだ放射線が大量に残っているというのに。
私は理解する、声が微かにしか聞こえなかったのも赤子が死に扮しているということを。
私は自らの腕を斬り裂き血を赤子に飲ませる。
これなら一時はもつだろうが……しかしいくら私の身体が女性型とはいえ化物であるのに出るのか?だが試さないと始まらないか。
私は赤子を抱え自らの住処に戻る。
「ここは空気汚染も少ない、この辺りに寝床を作るか」
赤子は私の血を飲んで体力を取り戻したのか今は元気な声を出している。
以前にも死のうと想いこの身体を傷つけた時放射線により枯れそうになっていた土や木々は力を取り戻した。
どうやら私の血にはそれ程の力があるらしい。
東方の島国の言葉を借りるなら霊格、神格と言っても良いモノなのかもしれない。
本当の神様と言うものは私に姿を見せないで死を与えてくれないのだが皮肉なモノだ。
だがしかし驚いたモノだな試したことがなかったから知らなかったが私も一応は生物と言う事か性別的役割はちゃんとしている。
赤子は腹がいっぱいになったのか気持ちよさそうに寝ている。
しかし良かったのかつい勢いで助けてしまったが私にそうする権利はあったのか?あらゆる人々を殺して未来を奪って来た私が……。
そう考えていると赤子が私の手をその小さき手で握りしめた。
武闘家よりも力がなければ対戦車ライフルのような衝撃もなければ水爆のように熱くもない。
けど温かかった、今まで感じたどんなモノより涙が出た。
それがどうしてなのか解らない涙を流したことなど思い出せないくらい昔の事なのに。
今はぽたぽたと涙をこぼしていた。
重かったんだな、私が今まで奪ってきたモノは……こんなに小さい命でも。
育てよう、私がこんなところに居た理由もこの赤子が人間であることも関係ない。
今まで来た者より強い者でも、今までくらったモノより破壊力のあるモノでもどんなモノからも守ろう……この小さき命を私の手で。