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彼と、彼のお寝坊さん  作者: ともむら
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06   挨拶は大事だよね

守護精ちゃんsideです。どうぞ!

 アルお兄ちゃんが私を連れて行ってくれるって言って、すごくほっとした。一人でお部屋に居るのは、すごく怖いから。お兄ちゃんなら帰って来てくれるって、ちゃんとわかってるのに、考えるだけで震えが来る。

 アルお兄ちゃんは、ひょいって軽がる私を腕に乗せてお勉強をする、教室っていう所まで連れて行ってくれた。今までに経験がないくらい目線が高くなって、なんだか不思議な気分。途中、きょろきょろし過ぎて、何回かぽんぽんって背中を叩いて注意されてしまいました。反省。

 教室の、扉の前に着くと、お兄ちゃんが、中に入るよって私に確認をしてくれる。お兄ちゃんがしてくれるのを真似して2回深呼吸をしてから、お兄ちゃんが扉を引いた。


「お、きたきた。アルー、特等席作っといたぜーー」


 私が教室で一番最初に聞いた言葉です。その声が、さっきお兄ちゃんとお喋りしてた人だって気付いたから、ちょっとほっとする。お兄ちゃんのお友達さん(っていう事にする)が、ドーンって口で言いながら両手を広げて一箇所を指した。手の先にあるのが、とくとうせき、なのかな?


「皆の了承を得た上で作ってやったぜ、真ん中の一番真ん前。これなら周りの視線見えないし、彼女も一緒に座れるし? 完璧だろ。流石俺」


 なんだか、お兄ちゃんのお友達さんが私達の為に席を準備してくれたみたい。ここに居る事を許されたって証みたいで、凄く嬉しい。


「感謝して良いのか裏を読めば良いのかよく分からないな。何処から持ってきたんだ、このベンチみたいな長さの椅子」


 そんな風に言ってたけど、お兄ちゃんも、ちょっと嬉しそうにしてる。

 お兄ちゃんのお友達さんは、ひでー! って言いながら、私達を席に案内してくれた。お兄ちゃんがそっと椅子に降ろして、隣に座ってくれる。教室の人達はきっと皆良い人なんだと思うけど、まだお話もしてないから、ちょっと怖い。お勉強するんだから、抱えたままは無理だろうけど、ちょっと離れなきゃいけないのかなって思ってたから、お兄ちゃんがすぐ傍にいてくれるのは、凄くほっとした。

 私が息を吐き出したのが聞こえたのか、お兄ちゃんがこっちを見て頭を撫でてくれる。温かい手が気持ちよくて、ふにゃふにゃした。


 その時。がらがらって音がしてさっき私達が入ってきた扉が開いて、大人の女の人が入ってきた。こげ茶の長いまっすぐの髪を、後ろの高い所で結んでる。きりってした目が印象的な人。その人が、歩いてる途中で、真ん前にどんって座ってる私とお兄ちゃんを見て、固まった。


「アルヴィン、貴方の隣に居る娘は、迷子、ではないのですよね? 勘違いでなければ、その娘は、貴方の守護精、なのでは?」


 固まったまま、きりっとしたお姉さんがお兄ちゃんの方を向いて質問をした。お兄ちゃんが、あの人が先生だって教えてくれる。勉強を教えてくれる、物知りな人だって。


「ええ、先生、生まれました。私の守護精です」


 お兄ちゃんが、私の頭を撫でながら、ちょっと、自慢するみたいに言うのがくすぐったい。よく分からないけど、なんだかむずむずする。

 お兄ちゃんが紹介してくれたんだから、自己紹介しなくっちゃって思ってぴょんと椅子から降りようとしたんだけど、地面までがちょっと遠くて勇気が出ない。気付いたお兄ちゃんが、そっと、私を腕に乗せるように抱き上げて、立ってくれた。


降ろしてくれるんじゃないんだ? って思ったけど、先生さんと目線が合ったから、あんまり気にしない事にする。


「は、初めまして。アルお兄ちゃんの守護精? の、ディアです。よろしく、お願いします」


 そう言ってお辞儀をした後に、お兄ちゃんに反対を向いてもらう。それからもう一回、今度は教室の皆に、同じ挨拶をした。初めましての所で声がひっくり返って変になっちゃったけど、お兄ちゃんがぽんぽんって背中を叩いてくれたから、あんまり気にしない事にする。教室の後ろ側を向いたら、皆が私の方を見てたけど、お兄ちゃんのお友達さんが、ひらひら手を振ってくれてたのにも凄く勇気付けられて、最後まで言い切る事が出来た。ちょっとだけ、お兄ちゃんのお友達さんに手を振り返す。

 その後で、お兄ちゃんがまた、私を椅子に座らせてくれた。小さい声で、よく言えたなって褒めてくれる。


「先生、カーシーが席を用意してくれたのですが、このまま授業を受けても良いですか?」

「ええ、ええ、勿論構いません。見た所とても大人しい娘のようですし、他の授業の先生方にも私から伝えておきましょう。では、出席をとりますので名前を呼ばれたものは、その場で返事するように」


 そうして、私の初授業体験は始まりました。最初の任務は、出席をとること? です。お兄ちゃんが呼ばれた後に、先生が、私の名前を読んでくれる。ちょっと緊張したけど、皆の真似をして、はいってちゃんと言えた。私も同じ教室の仲間だって言ってくれてるみたいで嬉しい。胸の奥が温かくなる感じがした。


 初めて受けた授業は、分からない事ばかりだったけど、お兄ちゃんから借りた紙とペンに、皆の真似をしてメモしたりすると、同じ事をしてるのが嬉しくて、凄く楽しかった。


 4つの授業が終わると、カーンカーンカーンっていう音が鳴って、それが、お昼ご飯の時間を知らせてくれる鐘の音だって、お兄ちゃんが教えてくれた。そう言えば、朝ご飯食べてない。食べないで居るのは慣れてたし、色んな事がありすぎて、忘れてた。お兄ちゃんがまた私を抱えてご飯を食べるための食堂っていう場所に連れて行ってくれる事になった。お兄ちゃんのお友達の、カーシーさんも一緒に行く。その道中で、カーシーさんと少し、お話をした。

 最初にカーシーさんって呼んだら、ちょっと拗ねたみたいに


「何でアルはお兄ちゃんなのに俺はカーシーさんなんだよー。俺の事はカー兄って呼ぼうぜー」


って言われたから、カー兄って呼ぶ事になった。カー兄は、押しが強い。全然断れなかった。アルお兄ちゃんも、呆れた、みたいな顔してたけど、全然嫌そうじゃない。友達って素敵。

 私もお友達欲しいなって思ってると、食堂に到着した。匂いに釣られて私のお腹がくうってなる。急いでお腹を抑えたけど、お兄ちゃんとカー兄に聞かれて笑われた。凄く恥ずかしい。

 それから、かくっとカー兄が首を傾げた。


「あれ、ディアって、精霊なのに、お腹すいてるのか?」


 え?あれ、何か、おかしいかな??

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