36 作戦会議を行います
箱庭ランチ編これで終わりでございます。
ディアside
お昼ご飯を美味しく食べる為に頭を使う、という意味も込めて、来週の実験? の作戦会議が始まった。
「ではまず、おさらいをしておきましょうか。何を実験するのか」
クララさんが司会進行を務めて話は進みます。おさらい、の所でかちゃっとメガネを直したのに意味はあるのでしょうか、クララさん。
「来週、このメンバーでドームにて実験を行います。内容は、魔法を伴わない純粋な魔力の体外への放出。守護精達の誰が出来て出来ないのか、出来たとしたら放出された白い魔力は体外へ出た後どうなるのか、というもので間違いありませんわね?」
特におかしい所もなく、その通りだと思ったので、全員がまた頷く。全員が頷くのを確認して、クララさんが、もう一度口を開いた。
「問題は、誰もやった事が無い白い魔力の放出をどのようなイメージで行うのか、という事です。闇雲にやってみるだけでは、ただ時間を浪費する事になり兼ねません。予め、どのようにやってみるのか、というのをいくつか決めておく方が良いと思うのですが」
その通りだと思った。精霊から見ると、着色されていない魔力の放出というのは考えてもみなかったことで、どのようにすれば良いのかイメージが湧かない。でも、人間には魔力というものがよく分からないからどう考えたら良いのか分からない。そのままの状態で闇雲に時間を使ってしまうよりは、今の内に対策を練っておく方が効率的っていうことなんだろうと思う。
『魔力は、とりあえず一箇所に集めりゃ良いとして、問題はその先だよなあ』
『放出するっていうのが、やってみない事にはよく分かりませんものね』
『集めた魔力を言葉を介さずにどうやって外へ放出するか……』
ボルト様、ラーさん、ガールさんの順で首を傾げる。私は魔法にする為の言葉が分からないからなのか、精霊としての固定観念が無かったからなのか、事故のような形で魔力をそのまま外に出してしまったけど、魔法というものを行使してきた精霊さんにしてみれば、きっと不思議なこと、なんだろうな。
「そもそも、外に出せたとして白いかどうかはまだ分かんねえんだよなー。どうしたもんかね」
私が見本みたいにしてみても良いけど、絶対魔石が出来るって決まってないから、出来るだけ隠した方がいいのかな。そう思ってお兄ちゃんんを見上げると、私の心を読んだみたいに、首を少し横に振られた。やっぱり、駄目、みたい。でも、実験の時、私もしないと変じゃない? うんうん言いながら悩んでると、傍目からは、放出方法のアイディアに悩んでいるように見えたみたいで、何でか、そんなに深刻にならなくて良いんだって慰められた。別に、ない頭絞ってて悲しくなった訳じゃ、ないよ? 仲良くしてくれてる人達に、いつまで内緒にしてないといけないのかなって、隠してることがちょっと、苦しくなっちゃっただけ、だよ。口に出して言うわけにはいかないけど。
あんまり私が複雑な顔をしてたらしくて、脇の下にひょい、と腕が通ったと思った次の瞬間にはお腹に腕が回って、お兄ちゃんの膝の上に乗ってた。背中に感じる温もりに寄りかかって、心配そうに見下ろすお兄ちゃんと目を合わせて、ぐぐぐっと後ろに倒れるみたいに力を入れる。
「一応、まとめようか。ドームに入ったら、魔法用の言葉を使わずに魔力を体の一点に集める。いきなり勢いよく外に出す事は考えなくて良いと思う。集めた所から滲み出すような感覚をイメージして放出をしていくのが良いだろう。人間で言うならば、汗をかくようなイメージや、指先が切れて血が滲むようなイメージだろうか。そのようなイメージは、ボルト達には分かるか?」
お兄ちゃんが、話をまとめることにしたみたい。脇腹辺りにある掌で、私をぽんぽんと優しく叩きながら話を進めるお兄ちゃんに、真面目な口調と顔との差を感じてこっそり顔を下げて笑ってしまったのだけど、きっと、お腹に回った腕に伝わる振動で、お兄ちゃんには伝わってしまってる。お兄ちゃんが気付いてない振りをするから、私も直ぐに真面目に話を聞いてますっていう顔を作った。
『そーだなあ、俺達に血はねえけど、その様子を見たことはあっから、ちょっとはイメージしやすいかも知んねーな!』
ガールさんも、少し分かるようなって呟いてる。イメージは大事。きっと、何もないよりは、ずっとやりやすいと思うから、これは良い流れだって思った。
「なら、そのイメージで進めよう。私達人間には魔力を見る事が出来ない。もし魔力の放出に成功したら、その様子を、具体的には色や感覚、放出後の魔力の行方について観察してそれぞれの愛し子に報告をするようにしよう。私が話を勝手にまとめてしまったが、誰か提案や意見はあるだろうか」
珍しく、お兄ちゃんが会話の中心にいる。お兄ちゃんはあんまりお喋りをしないけど、このメンバーで集まるようになってから、少しずつ話すことが増えてきた気がする。お仕事の出来る大人! みたいな感じで、すごく格好良い。会社に行ってたお父さんって、こんな感じだったのかなって思って、少しだけ、私が産まれる前のお父さんが見てみたい気持ちになった。お父さんも、きっと格好良かったんだろうな。
「そうね、なら、報告書のようなものは予め定型文のようにして用意しておきましょうか。観察するべき事は書き出しておいて、そこに記入していく形にすれば、観察漏れもないでしょうし」
クララさんがそう言うと、ポーお姉ちゃんが、さっすがクララ、頭良いねえってクララさんを大絶賛。その後直ぐに、私のお腹の虫が鳴いて、皆が噴き出すっていう事件が起こった。すぐに、反対を向いてお兄ちゃんのお腹に頭をぐりぐり押し付けたけど、頭に笑ってる振動が響いてそれはそれで恥ずかしかった。
私のお腹は、どうしていつも大きな音を鳴らして主張するのかな。
「お、お姉ちゃんもお腹空いたな!」
とっても棒読みなポーお姉ちゃんのフォローから、ご飯を食べることになったのだけど、どのタイミングでお兄ちゃんから離れたら良いのか分からない。ぐりぐりと頭を押し付け続けてると、お兄ちゃんが頭に手を乗せた。
「ディア、綺麗なお弁当だぞ、減る前に見ておくと良い」
お兄ちゃんが、最初とは反対に脇を抱えてくるっと私を回す。問答無用で逃げ場から追い出された私は、ラーさんの優しいすすめも手伝って、ゆるゆるとお弁当の方に視線を向けた。
「わあ! 綺麗! すっごく綺麗!」
宝石箱みたいなお弁当が、目の前に広がってる。それしか言葉を知らないみたいに、私はしばらく綺麗を連呼した。夢中になって見つめてる間にカー兄の手がお弁当に伸びてたけど、ボルト様の尻尾で叩かれてた。クララさんも、もう少し待ちなさいってカー兄を窘めてるのが聞こえたけど、今私の頭の中は綺麗なお弁当でいっぱい。
「綺麗だよねー。記録に残せればいいのにね。食堂のご飯も良いけどお弁当も良いなあ!」
ポーお姉ちゃんとラーさんと一緒に数分うっとりと見つめた後、背筋を正してお待たせしました、と皆に声をかけた。
「それでは皆さんご一緒に!」
後で、お弁当よりも私を記録に残したかったってお兄ちゃんに言われたけど、全部記録に残したいくらい、すっごく楽しいご飯でした。




