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彼と、彼のお寝坊さん  作者: ともむら
38/45

33   朝の話の続きをしよう

 時間的に遅くなってしまい申し訳ありません。


 アルsideです。

 夕食後、自室へ戻ってディアと向き合う。今朝話した外へ出る為の約束の続きだ。


「ディア、朝の話の続きをしようか」


 そう切り出すと、ディアが、はっとした顔をしてからきりりと表情を引き締める。どうやら、朝食でうやむやになり、彼女は今の今まで忘れていたらしい。どちらにしろ、この時間になるまで話の続きは出来なかったのだから、構いはしないが、朝食に意識を持っていかれる所が彼女らしいと思えて、少し笑った。

 彼女にとって、前世の生活は、父を待つ事、食事、読書、睡眠のみで構成されていたのだ。その中でも、食事というのは彼女にとって、生きている証だったに違いない。父を待つためには生きていなくてはならなかったのだ。それに、食事と本は父から与えられる唯一の愛情の証のように感じていたであろう彼女にとって、食事と読書は特別な物となっているようだった。無条件に反応してしまう物らしく、一旦そちらに目を向けてしまうと、それで頭がいっぱいになってしまい、他の事は頭の隅に追いやられる。真剣な表情をして待っているディアがおかしくて、くしゃくしゃと頭を撫でてから気持ちを切り替え、自分も真剣な表情を作った。


「ディア、伯爵にも一緒に聞いて欲しい。三人で話そう」


 ディアが頷いて首元から香り袋を取り出す。伯爵、とディアが呼ぶとミイ、という声と共に猫型伯爵になった。


「伯爵、朝の話きいてた? 聞き間違えじゃなかったら、1回返事してなかった?」


 少しだけ改良した伯爵用文字表を伯爵の傍に置いてやる。改良点は、はい、いいえという単純な言葉を用意した事と、0~9の数字を増やした事だ。ちなみに、数字は必要な時だけ広げるようにしてある。伯爵が、ミイ、という鳴き声と共にはい、に前足を乗せる。


「やっぱり! あの時、なんて言おうとしてたのか教えて?」


 魔石の中でも会話をしっかり聞いていたのか。私には聞こえなかったが、朝、伯爵は何かを伝えようとしていたらしい。ミイ、と胸を張るような仕草をした伯爵は、柔らかい肉球のせいか、全く音を発する事なく、一文字一文字前足で示していった。


「でぃあが、まりょくくれたら、へんしんできる?」


 今ディアが言ってくれたがのが、伯爵の示した文字だった。文字がまとまらず少し読み難いが、ディアが魔力をくれたら変身出来る、という事だろうか。この言葉は今朝のどの段階で伝えようとしたものなのだろう。


「あ! もしかして、私が考えてたこと、伯爵にも伝わってた?」


 閃きました、という顔で何故か挙手をしたディアが伯爵に問いかける。彼の答えは、はい、である。


「ディア、どういう事か聞いても?」


 私にはディアの考えていた事は分からない為、流れが全く分からない。ディアの考えている事が分かるという伯爵の発言も気になるが、今は内容を知る必要がある。


「あの、朝ね。お外で伯爵出さないって約束してって言ったでしょ? あの時、伯爵も、普通の猫ちゃんみたいだったらお外出してあげられるのになって思ったの。その後すぐ、伯爵がミイって言ったから、それのことじゃないかなって」


 伯爵が、その通り、というように頭を上下に振りながらミイと鳴いた。


「話をまとめるぞ。伯爵は、ディアに魔力を与えられれば普通の猫のように変身が出来る、という事で間違いないか?」


 確認の意味を込めて伯爵の方を見ると、小さい鼻をふすふすと鳴らし、どうだ、と言わんばかりに得意気な顔をしている、気がした。正直小さすぎてそこまでは分からないが。


「伯爵、すごいねえ! でも、お外では魔力の訓練も出来ないんだよ? 伯爵にどうやって魔力をあげたらいいのかなあ?」


 一旦満面の笑顔になったディアだが、朝の話を思い出して魔力の譲渡が出来ない事に考えが至ったようだった。私もそう思う。伯爵の話が本当であったとして、魔力を扱うような行動はディアの正体を周囲にバラしてしまうような事になるのではないかと思っている為、妥協する予定はない。

 父と母の事は信じているが、学校のように結界は張られていないのだ。見る者が見れば魔力が発生している様子は、家の外からでも見えてしまうかも知れない。伯爵が普通の精霊と違う可能性がある以上、伯爵の事がバレるという事とディアの正体がバレてしまうという事は同義で考える必要がある。つまり、魔力を扱うという行動も魔力を譲渡するという行動も、誰かから見れば異端な事である可能性がある限りはそれを学校外で許す訳にはいかないのだ。


 と、考えに耽っていると、ミイと思考を中断させる声が聞こえた。いつの間にか移動した伯爵が、自分の傍に置かれていた香り袋を上からぽすぽす叩いている。相変わらず音は一切立てていないが。


「香り袋?」


 不思議そうにするディアに、少し悩むように首を傾げた伯爵は、おもむろに香り袋へと頭を突っ込んだ。


「え、伯爵??」


 何をしているのだろうか、と私も思ったが、それは袋から顔を出した伯爵が咥える物を見て解消された。


「魔石か!」


 伯爵のものより大分小さいものだ。魔力を若干抑えて作ってみた時のもので、最初に作った雫型のものよりも小さいものだった。確かに、魔石ならば魔力が込もっている。この魔石ならば、ディアがその場で魔力を使う必要はない。


「魔石を使う時って、魔力が漏れたりしないの?」


 そう訊ねたディアに、伯爵はいいえ、と答えた。彼が言うに、魔石を食べてしまうのだそうだ。それならば、伯爵の体に飲み込まれた魔石の事は誰にも分からないかも知れない。ただ、ここで疑問が湧く。


「魔石は、魔力の塊だな? それを、どうやって香り袋から取り出した時に見えない状態にするんだ」


 この世界で、魔力を帯びている石というのは、一般的に精霊石しか存在しない。例外的に以前学長が言ったような世界樹の精霊の実もあるようだが、それでさえ一般的なものではない。精霊石以外の、魔力を帯びた石を誰にも違和感を持たれないまま外へ出す、という事は不可能なのではないのだろうか。

 そう思って二人――厳密には一人と一匹であるが、彼は一人と数えても良いと思う――に疑問を投げかければ、見事にぴたりと固まった。この時点で何となく、終わりが見えたような気がするが、少し様子を見る事にした。


「ああああ!!」

「ミアアア!?」


 そうですよね。

 いかん、つい敬語になった。そこで、話は半分程逆戻りする事になるのだった。何かもっと根本的な解決方法は無いのだろうか? ディアの気持ちに応える為にも、伯爵もどうにかして連れて行ってはやれないだろうか。


「というか、伯爵はその場で魔力を与えられなければ変身出来ないのか?」


 魔力を補充されなければ変身できないというのは分かった仕掛けのように、前もって準備する事はそもそも不可能なのだろうか。定期的に摂取する必要があるという前提のもと話を進めていたのだが、そうでなければ前もって準備をしておけばいいだけなのでは?

 そう思い、伯爵に質問する。


「ミッ!」


 先程まで打ちひしがれるように伏せていた伯爵がピシっとお座りをし、耳をピンと立てた上で前足を動かした。


 で・き・る。と。

 今までの真剣な相談会は何だったのか。いやー、お恥ずかしい、というように両前足で顔を覆い、尻尾をふよふよと揺らしている伯爵を見て、私とディアは脱力したのだった。

 このまま更新を続けて行きたいです。ただ、毎週末は更新が滞る事を考え、平日に関してはできる限り毎日更新、週末は更新出来ないものと考えて頂けると助かります。10万文字を超す流れの「彼と彼の」にドキドキしておりますが、これからも読んでくださると嬉しいです。

 アクセス等にはいつも励まされております。本当にいつも有難うございます。

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