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彼と、彼のお寝坊さん  作者: ともむら
35/45

30   種族は何でしょう

 遅くなって申し訳ありません。今日中にもう一話更新したい所ですが、どうも時間の関係上難しそうです。次回は11/3更新の予定です。埋め合わせは4日以降になります。


 ディアside

 王冠の魔石が、猫さんになりました。

 何で猫さんになったのかは全然分からないけど、私とお兄ちゃんのことは嫌いじゃないみたいだし、猫さんって自由気ままだとか聞いたことがあったけど、どちらかと言うと懐いてきてくれて、とっても可愛い。小さいから指でかしかし掻いてあげることしか出来ないけど、それをとっても喜んでくれる。指を放した時のもう終わりなの? っていう目線で見上げられるのが、本当に可愛い。

 猫さんは言葉を理解してるみたいだし、とっても頭が良い。そう言えば、猫さんは、何て呼ぼう。ずっと猫さんって呼ぶのはちょっとな。


「猫ちゃん猫ちゃん、猫ちゃんのお名前ってある?」


 猫ちゃんが、ことんと首を傾げる。名前? と聞いてくるようなその視線に、うん、お名前、と頷いてみせたら、猫ちゃんはふるふるとゆったり首を横に振った。


「名前は、無いようだな。種族はあるんだろうか?」


 精霊とはちょっと違うかも知れないって兄ちゃんは言っていたけど、もしかするとそういう種類みたいなのはあるかも知れない。

 今度はお兄ちゃんの方を向いた猫ちゃんが、こくりと、今度は縦に首を動かした。


「あ、あるって。種族、何だろう」


 精霊の本に猫ちゃんみたいな精霊は載ってなかったと思う。お顔が赤くって体の先端に掛けて白くなってる、よくよく見たら口からちょっと牙が2本見えてる。そんな精霊さん、居なかったなあ、と悩んでると、お兄ちゃんが口を開いた。


「文字は読めるのか?」


 猫ちゃんがふるふると横に首を振る。


「なら、音を一つずつ言うから、当てはまった所で反応してくれないか」 


 そうして、1つ1つ確認しながら種族をお兄ちゃんと猫ちゃんの協力で調べる様子を見てたのだけど、途中から、記憶にない。



 はっ! 猫ちゃんの種族!

 そう思って目が覚めたのは、もう日が昇った後だった。お兄ちゃんを直ぐに起こす。猫ちゃんは、ベッドサイドに魔石の状態で置かれていた。


「お兄ちゃん、朝だよ、起きて?」


 隣で静かに眠ってるお兄ちゃんの肩を揺する。ん、とまだ覚醒してないのに返事をして、そのまま静かになる。まだ、起きない。


「お兄ちゃん、朝だよ?」


 もう1回揺する。今度は、目を瞑ったまま、瞼がぎゅっぎゅと瞬きするように動いた。今度こそ、ゆっくり瞼が上がる。


「おはよう、お兄ちゃん」


 ぼんやりとした焦点で私を見つける。何秒か後にしっかりと焦点を合わせて、ふわって微笑んだ。


「おはよう、ディア」


 こういう時、すごく甘やかされてると思う。記憶の端っこにある、お母さんの顔が、朧げに浮かんで消えた。


「お兄ちゃん、猫ちゃんの種族、分かったの?」


 早速気になってたことを質問する。猫ちゃんは、一体何だったんだろう。


「ああ、ディアは途中で寝てしまったのだったな。一応判明している。少し待ってくれ」


 そう言って、サイドテーブルに置いてあったメモを取ると、それを読み上げてくれた。


「判明はしたが、正直私は知らない種族だった。精霊かどうかもこれでは確認出来なかった。バナスパティ・ラジャというのが彼の正式な種族の名称であるらしい。通称バロンと呼ばれていると彼は言っていた」


 ばなすt……ん、呼び辛い。バロンって言ったら、伯爵さんだよね、よし、伯爵さんって呼ぶ。

 つんつんと王冠型の魔石を突く。


「おはよう、バロンさん、お名前は無いんだよね。伯爵さんで良いかな?」


 ミイ、と鳴き声が聞こえて、ぽん、と猫型になった。


「伯爵さん、今日も宜しくお願いします」


 そう言って挨拶したけど、伯爵さんはちょっと不満そうに指に頭を擦りつけてくる。


「伯爵さん?」


 何が不満なのか、分からないよ、と呼んでみるけど、反応はない。どちらかと言うと、わざと聞こえてない振りをしてるみたい。


「ディア、バロンはさん付けが気に食わないのではないだろうか。それより、伯爵という名前で良いのか……?」


 伯爵が良いって言ってると思ったから、お兄ちゃんに頷いてみせる。自信はなかったけど、物は試しと思って伯爵って呼んだら、ミイって返答があった。それで良いんだよって顔をして撫でろ、と再び頭を擦りつけてくるから、お望み通り、かしかしと掻いてあげた。


「ディア、伯爵はちょっと特別だ。いつも通り、首から下げる香り袋に魔石を入れるのは問題ないが、バロンの事やディアの魔力の事が分かるまで、伯爵と遊んだりする時は、この部屋だけにするって約束して欲しい」


 精霊さんは、あの箱庭と学長以外、守護精さんしか居ない所だっていう話だから、仕方が、ないよね。うん、と頷いた後、バロンの方を向いた。


「じゃあ伯爵、また、夜に遊ぼうね?」


 少し寂しいけど、お勉強中に遊ぶ訳にも行かないもんね。少ししょんぼりしてるのが伯爵に伝わったみたいで、ミイ、と私に返事をしてくれた後で、掻いていた指をちろちろと舐められた。心配してくれた気持ちと舐められた指がくすぐったくて、思わず笑ってしまったのを見た伯爵が、満足気に鼻をフスっと鳴らし、魔石の姿に戻った。

 そっと魔石を香り袋に入れてお兄ちゃんに手伝ってもらいながら、朝の準備をした。

 お兄ちゃんが、ツーサイドアップにして、そこをお団子にまとめて猫ちゃんの耳みたいに整えてくれた。そう言えば最近、お洒落しないと勿体ないよってクララさんとポーお姉ちゃんがリボンをいっぱいくれる。今日は、伯爵みたいな赤色のリボンにする。出来栄えを鏡で見せてくれるお兄ちゃんへ、鏡越しにへらって笑うと、猫耳ヘアーの間を撫でられた。


 へへ、伯爵と一緒。今日も頑張って勉強しよう!

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