27-1 魔法の事を教えて下さい(前編)
遅くなって申し訳ありません。この辺の話は、少し難産です。ブクマ、PVやユニーク等、とても励みになっています。有難うございます。
前も聞いた話のような気がしますが、掘り下げる為にこの段階が必要だったので、説明が重複しています。
アルside
クララの真面目さに、チャンスを感じた。精霊について、また、魔法について学ぶ良い機会かも知れない。若干一名、不満気にえー、と声を上げているが、それは聞こえないふりをする。
「守護精についてって言ってもよー。大雑把過ぎるんじゃねー?」
まあ、カーシーの言う事も尤もで、漠然とした守護精について、という題材では話題としては弱いかもしれない。
「えっと、皆さんの魔法、について、教えて欲しいです」
少し前のめりになるようにしてしゅっと挙手をしながらそう発言した。
「そう言えば、精霊しか魔法って使えないから、詳しく聞いた事ないよね」
ポーレットが続く。その反応に、他のメンバーも、そう言えば、魔法の名前の効果位しか知っている事がない、と口々に言った。
「そーいやそーだな。ガーさんガーさん、魔法ってどんな感じで行使するんスか?」
そう言えば、何故カーシーはガールに対して微妙な敬語を使うのだろうか。なんというか、小物臭が漂っていると言えば良いのか? 物語に出てくるような金髪の王子という容姿でそのような安い敬語を使われると、違和感がある。
『どんな感じで、とは。主、それでは抽象的過ぎて意味が分からぬ』
「どんな感じとしか言いようがねえなあ」
カーシーが頭を抱えている。その様子を見ながら考えていたらしいクララが、口を開いた。
「私達には魔力が無いから、魔法の行使というものがどのような仕組みで行われているのか、それがそもそも分からないのよね」
私とディアは、学長の魔法授業のお陰でその辺りは何となく分かっているが、普通は、この時点から知らないのだ。全員がうんうん、と頷いているのが見えた。と思ったが、約一名は船を漕いでいるだけのようだ。
『魔力、は、ぽわぽわーって、してるんですの』
小さな声でラーがそう言うと、全員意味が分からずに首が右へ傾いた。
『ぽわぽわーって、光っててとても綺麗なんですの』
『あー、見た目はんな感じだよな。魔力ってーと、何て説明すりゃーいいんだろうな。体の至る所にあるし、特別何かあるわけでもないしなー』
ラーの言葉を引き継ぐようにして、尾をゆらめかせながらボルトが続ける。
『ふむ、魔力がどのような物か、と言われると難しいな。我々にとってのそれは、人間にとっての何と例えれば良いのだろうか』
ガールが考えるように空を仰いだ。
「魔力って、人間の、血液みたいな感じで、体を巡ってるよ。でも、血液と魔力はその性質が違うから、例えるのが難しいね?」
ここで、ディアが助け舟を出すように口を開いた。
「へー! 感覚としては、光る血液みたいな感じだけど、血液と魔力は別物、と。じゃあ、魔力っていうのは魔法を使う時にどういう役割をしてるのかな?」
ポーレットがふと思いつきました、という顔をして訊ねる。
『どういう役割、か。そのような考え方はした事がなかったな』
ガールがそう口を開くと、他の守護者達も悩むように顔を俯かせた。
「では、質問をして解明していきましょうか」
「なる程。口に出せば何か分かるかもしれないよね!」
クララも、魔法に関しては興味があるようだ。今まで何故何も知ろうと思わなかったのだろう、とでも思っているのかも知れない。
「魔法行使の際は、魔力を消費するのよね? 魔力は何故消費する必要があるのかしら」
『そりゃークララ。魔法を行使する上で魔力が必要だからだろ?』
何を当然の事を、とボルトがクララの頭からでろんと少し下りてクララの顔の目の前で答えた。
「何を言ってるの。その魔力は何故必要なのかって聞いているのよ。魔力が魔法に変質するの?」
でろんと目の前に垂れてきたボルトに特に注意する様子もなく、話を進めるクララは、何というか、非常に慣れている様子だ。近い、とか引き上げるとか、そういう事を諦めた形跡を彼女の表情に見て、ボルトの相手は大変なのだな、と少し同情する。
『ふむ。魔力が魔法に変質するのか、という答えなら出せる。答えは否、だ』
「え、じゃあじゃあ、魔力が必要なの? 魔法を作る為に魔力を消費する訳じゃないんだよね?」
ポーレットの質問に、愛し子達が一斉に首を傾げた。
『魔力は、お願いの為に使ってるんですの』
「お願い?」
ここで珍しくブライアンが口を開く。自分の守護精の言葉に興味が湧いたようだ。
『俺様が雷を起こす時に、魔力で雷よ起きろー! ってやるんだよなー』
どう言ったらいいか分かんねーなー、と先程とは違うリズムで尾をびたん、びたん、と揺らしている。
「それは、雷を起こす為の対価として魔力を出すという事?」
『んあーー、ちげえなあ。ガールさんよ、何かいい伝え方ねえかなあ』
おらーお手上げだ、というように尾をふい、と上に上げて小さな肩を竦めたボルトが、ガールに助け舟を求めて目線と共に声を送った。
『何と言えば良いのか。魔法という現象を起こす為に、起こしたい現象を伝達する媒体として、魔力が必要になる、と言えば伝わるだろうか』
「伝達? 伝達ってーと、何に伝達するんスか? ガーさん」
そうカーシーに聞かれると、あー、それは、と自分の言葉が足りない事に気付いたガールが、改めて口を開いた。
『何と言われると、そのものに、というのが正しいのだろか。例えば、私であれば、風に竜巻という現象を引き起こして貰っている。魔法というのは、本来自然現象であるものを何者かの意思によって引き起こされた場合を言うからな』
ガールは自分の言葉を噛み砕くようにゆっくりと話した。
「え、それって、つまりどういうこと?」
少し考えすぎて頭が混乱してしまったらしい。ポーレットの頭の上に疑問符が大量に発生しているようだ。
「整理するから合っているか確認して欲しいの。私達の言う魔法というものは、魔力を媒体にして自然へ干渉のようなものを行って引き起こされた、自然現象のようなもの、という事?」
クララ自身もあまりよく分かっていない様子だ。考えながら、ゆっくりと言葉を紡いでいる。
『合っていると思いますわ。だから、お願いするのに、魔力が必要なんですの』
ラーが、再度最初に言った言葉を繰り返した。
「あー、ラーちゃんのそれって、魔力で自然にお願いするって言うことだったのかな」
そういう感じなら、何となく分かるかも? とポーレットが手をポンと叩く。先程までの言葉の羅列は、ポーレットにとっては少し難しく、ラーの少し抽象的な発言の方が分かりやすかったようだ。
「どことなく、分かったような気がするわね? 魔法≠魔力ではないという事は分かったわ。では、他に何か質問はないかしら。魔法や魔力に関して」
一旦話を区切るようだ。クララがそう言って私達を見回した。
「ラーって、水の魔法しか使えないよね? 魔力があったら魔法が使えるって言うんなら、どうして竜巻起こしたり出来ないの?」
ブライアンがぼそぼそと重たそうな瞼を引き上げながら自身の守護精に問いかけた。
『それは、私の魔力が青色だからですわ』
ラー、恐らくそれでは伝わらないと思う。
「ふーん? 青色だから、使えないの」
ブライアンは、何故か納得してしまった。何だろうか。このコンビは不思議な会話を繰り広げるな。
「待て待て! 青色だからですわ、じゃあ俺には分かんねえよ?!」
カーシーの鋭いツッコミが冴え渡る? たまには普通な事言うんだな、カーシー。
『ラーは、水関係の魔法を使う事しか出来ないってーのは、魔力で決まってんのさ』
ボルトが得意気に口を出した。にゅっとカーシーの方へ頭を向けると、話を続けた。
『ラーの魔力は水に関するもの限定で、俺の魔力は雷みたいなぴかぴか光るああいうの限定。ガールさんは竜巻みたいな風に関するもの限定でってな感じで、魔力があれば何でも出来る訳じゃねーのよ』
分かったか、はーん? とボルトがにやにやしている。どうやら、カーシーに対抗意識があるようだ。クララに同列だと言われているからだろうか。しかしガールにはさん付けをして敬っている辺り、やはり少し似ているのではないかと思う。このコンビは少し面白いかも知れない。
「そう言えば、魔法を使う時って、皆口ぱくぱくしてるよね。あれってもしかして魔力を使ってるの?」
ポーレットが急に口を開いた。
ここからが、私とディアにとって知らない事へと掘り下げて行かれるのだろう。かさ、という音がして音の聞こえた方を向くと、ディアがメモ帳を出して待ち構えているのが見えた。
ここからが、大事だ。真剣な顔のディアを見つめて一度深呼吸をし、自分も前を向き直して集中する。
今日の実習で何か収穫を得ようと、気合を入れた。




