26 ぷるぷる震える
いつの間にか新キャラがのそっと入っていますが、彼は一体。
ディアside
実習授業でお喋りって、良いの? って思ったけど、ガールさん達が出て来た瞬間に、そういう気持ちは吹っ飛んでいった。ふわー! って驚いてる間に、紹介をする事になって、挨拶のタイミングを逃してしまった。
「俺の先生、ガーゴイルのガーさんっス」
「え、カー兄、そう紹介しちゃうの?」
思わず、口を開いてしまった。でも、折角の紹介で、ガーさんっス。は、ないと思う。
「え、何か変だったか? 至って普通だろ?」
そう言うカー兄の様子に、ガールさん本人(獣?)を含める3人くらいのため息が聞こえた。
「カーシー、お前、それ本気か。紹介でガーさんは無い」
「無いわね」
「無い無い!」
『主、紹介なのに渾名だけというのはどうなのだ』
順番に、お兄ちゃん、クララさん、ポーお姉ちゃん、ガールさん。カー兄は、どうやら天然さんだったようです。
「え、ガーさんはガーさんだろ」
『なんというか、頭が良い筈なのにこういう時は頭が回らんな、主よ。我の名はガールと言う。よろしく頼む』
最終的に、ガールさんが自己紹介するというこの結果。
「今までの流れで何となくガールさんの性格も伝わったわね。カーシーのおかげで」
おかげ、の部分を強調して言うクララさんのカー兄を見る視線が、とっても冷たかった。
「次へ行きましょうか。次はブライアン、お願い」
カー兄の隣に居る男の人の名前は、ブライアンさんって言うそうです。こげ茶のふわふわしてそうな可髪の毛が、目にちょっとかかってる。少し肌の色が黒くて、眠たそうに瞬きの回数がゆっくりなのが、印象的だと思った。
「僕の守護精は、アイラーヴァタのラー。体は大きくて、力は強いけど、凄く優くて臆病。脅かさないであげて。パニックになるから」
口調も何だかゆったりしてる。前実習で挨拶した事のある、大きな象さんみたいな精霊さんのラーさんの愛し子だった。
『あの、ラー、ですの。宜しく、お願いしますわ。足元に急に何かが出てくると、凄くびっくりしますの』
ふ、不思議な精霊さん。優しい声なんだけど、大きな体プルプル震えるのと一緒に震えて聞こえてくる、挨拶した時も実はこんな調子で、ぷるぷるしながらお鼻を伸ばして私と握手してくれた。何となく、ラーさんとはとっても仲良くなれる気がしてる。そっか、ラーさんの愛し子って、あの時全然目に入ってなかったけど、こんなおっとりした感じの人だったんだ。
「前小さい兎が足元にきた時に、ラーちゃん凄くびっくりしちゃってじたじたしちゃったんだよねー。あの時は本当にかわいそうなくらい震えてたから、心配してたんだ」
なんと、ポーお姉ちゃんはその時の様子を見ていたらしい。
「ラーさんは少しも悪くないのだけど、パニックになると暴れちゃうのよね。ブライアンが直ぐ止めれば問題はないのだけど。高確率で寝ているから起こすのにまた時間がね」
ブライアンさんすぐ寝ちゃうのか。今もちょっとウトウトしてるけど、意識はあるのかな?
「よっし、次は私の番だね!」
そう言えば、ポーお姉ちゃんの守護精さんを知らない。お姉ちゃんの後ろに居るみたいなんだけど、どんな守護精さんなのかなー。
「私の守護精さんは、じゃーーん! 不死鳥のフー様だよー。厳密に言うと、ベンヌっていうんだー」
じゃーーん! のタイミングでポーお姉ちゃんの後ろから細い足をすっと伸ばして出て来たのは、なんと不死鳥のフー様!! 物語とかでよく見るような火の鳥フェニックス! って感じじゃなくて、なんと言うか、キラキラ輝く、蒼鷺さんみたいな見た目。
「フー様の声は特殊だからか、性格なのか、滅多に喋らないけど、仲良くしてね!」
皆に見える位置まで移動したフー様は、少し足を負って会釈をするように頭を下げた。なんというか、とっても綺麗な動きで、私だけじゃなく、皆が一瞬見蕩れた。
「ポーレットとは全く似てないっつーか、優雅って言葉がぴったりな感じだよなー。不思議なのが、ポーレットの家系で愛し子が現れた時、生まれる守護精は絶対にベンヌだっていう話があるよな。ほんとか?」
カーシーが、ポーお姉ちゃんに聞くと、ポーお姉ちゃんは、そうだよ、と軽く言葉を返した。
「不死鳥だからなのかも知れないけど、必ずベンヌが生まれる。っていうか、フー様が生まれるんだよ」
「「「「「え」」」」」
え、の合唱。え、何、フー様が生まれる? 必ず?
「あ、言って無かったっけ。生まれるベンヌは、多分代々同じみたいでね。5代目位になって、あれって思ったらしいの。先代が死んでからしか次の愛し子は産まれる事がないから、気付くまでに時間がかかたらしいんだけど、毎回、私の家系の人は、守護精と一緒に絵を描いてもらうみたいな習慣があって、その絵のベンヌが、画風も違うのにそれはそれはそっくりだって事に5代目の人が気付いたんだって」
うわあ、その絵、すごく見たい。みーんなフー様なのに、隣の人は別の人なんだね。
「ちなみに、愛し子も代々そっくりなんだよ。面白いね。それで、5代目の人が、フー様に直接聞いたらしいの。あなたは先代のベンヌと同じ精霊なのかって」
フー様が、静かにうんうん、と頷いてる。ちなみに、の後の言葉も衝撃的。詳しい話を是非フー様に聞いてみたいけど、喋らない精霊さんだって言われたから、難しいのかな。
「そしたら、フー様が、その時初めて喋ったんだって。ずっと、私達を見守ってきたって。喋った事への驚きに、5代目はしばらく固まってたらしいよ。ねー、フー様!」
きゅっと顔を傾けて嘴をかちかちと鳴らしたフー様は、喋ってないのに、まるで、ねー! と同意してるようだった。とっても年上みたいなんだけど、何だか可愛い。それから、5代目の時に付けられた名前をそのまま使って、ずっとフーという名前で呼ばれるようになったらしい。年上だから様付けしてるんだとか。
「フー様の紹介はもう良いよね? 次はー、クララの番だよー!」
そう呼ばれると、驚き疲れた、というようにふう、と一旦ため息をついたクララさんが、頭の上に顎を乗せているボルト様の首をきゅっと掴んでぶら下げた。
「これはボルト。どちらかと言うと、カーシーに似た性質を持っているわ。お調子者で、尻尾を見れば感情が読める」
ぷらー、ぷらー、と揺れていたボルト様が、クララ、んな紹介はねーぜってしょぼくれてた。
『よー、俺様はボルトってんだ。よろしくなーー』
ぶら下げられてるせいか、語尾がゆるい。尻尾をひゅってちょっと持ち上げて挨拶をした後、またすぐに尻尾はぷらーっと下がった。ちなみに、くららさんが座った状態でぶら下げているから、尻尾が地面に着いてる。揺れる度にしゅっしゅって掃くような音をさせて尻尾の先が土まみれになっていってるけど、ボルト様良いのかな。
「次は、ディアさんの番ね」
そうクララさんに言われて、はっとお兄ちゃんの方を見上げると、頭をよしよしと撫でられた。頭の上にはてなマークがたくさん浮かぶ。どうして撫でられてるんだろ。
「名前は皆知っていると思うが、ディアだ。初対面の相手に吃る事があるが、基本的に人懐こい。仲良くしてやってくれ」
撫でられるのに任せて頭をゆらゆらと揺らしている間に、私の紹介は終わった。あれ、もう終わったの?
「それじゃあ、これからが今日の実習ね。ただ話すだけでは勿体ないわ。精霊についての話を、皆でしましょう」
紹介が終わってちょっとやりきった感じがしてたけど、ここからが実習本番なんだね、クララさん!
よーし! たくさん勉強するぞ!




