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彼と、彼のお寝坊さん  作者: ともむら
20/45

16   図書室なのですか

 日をまたいでしまい、申し訳ありません……!更新は今日中にもう一度致しますので、今話は17日更新分と思っていただけると嬉しいです。


 ディアside

 1週間連続の、魔法授業は昨日で終わってしまった。学長先生は忙しいから、仕方がない。今日からは、授業後に図書室で本を読むことになった。私は文字が読めないけど、どうしたら良いのかな?


「ディアさん、手が止まってるわ。こぼしてしまうわよ?」


 はっ! いけない。今はお昼ご飯の時間だった。


「クララさん、ありがとうございます」


 周りを見ると、もうお皿の中身が半分以下。私のお皿は、まだ少ししか減ってない。慌てて口にご飯を詰めてると、お兄ちゃんが、慌てなくていいって頭を撫でてくれた。


「ディア、いつもに増して頬袋に物詰まってんぞー。飲み込めるの、それ?」


 飲み込める、もん。


「おーおー、このタイミングで膨れられても正直頬袋のせいで分かんねえよ」


 けらけらと笑うカー兄に、ちょっと言い返したいような気がしたけど、本当のことだから、言い返せなかった。カー兄の意地悪。


 お昼ご飯が終わって、午後の授業も、特に問題なく終わった。いよいよ、初の図書館ですっ!


「ディアは、図書館初めてだよな」


 今回も、お兄ちゃんが運んでくれています。その内、私の背が伸びないかなって、思ってる。後10センチ、せめて5センチ、伸びないかな。そしたら、お手手繋いで、私も一緒に歩けるのに。


「うん、初めて。本大好きだから、楽しみ!!」


 ついこの前まで、ご飯と眠る時間以外の全部を本を読むことに費やしていた。でも、ここに来て本を読む時間なんて全然なくて。お兄ちゃんがいて、カー兄とクララさんも居て、時々ガールさんとボルトさんと、それから学長先生もいて、すごく楽しかったから、本のことも忘れるくらいだったのにびっくりする。


「そうか。一緒に文字の勉強をしよう」

「うんっ!」


 お兄ちゃんは、カー兄みたいにたくさんお喋りするわけじゃないけど、私のことを思ってくれてるのが、声にたくさん詰まってる。一緒に勉強しようって言ってくれるのがすごく嬉しくて、ぎゅって抱きついた。


 私は、図書室にも図書館にも行ったことがなかったけど、目の前の図書室がすごく大きいっていうことだけは分かる。ドアを開けたその先に、私が住んでたお家が20個と言わず収まってしまいそうなお部屋がありました。


「お、お兄ちゃん?」

「なんだ?」


 その時の私の首は、ぎぎぎぎ、と軋むような音がしたに違いない。かくかくかくと首をお兄ちゃんの方へ向けて、疑問を口にしてみる。


「これは、図書『室』なの?」


 私の言葉を聞いて、お兄ちゃんはああ、と納得したっていう顔をした。


「一般的な感覚で考えて、規模で言えば間違いなく図書館なのだが、校舎内の部屋として存在している為、そのような呼び名になっているらしい。私も、入学して初めて見た時は驚いた。ディアのその疑問は正しい」


 詳しく聞くと、図書館そのものも、あまり一般的なものじゃないらしい。本そのものが、貴重なんだとか。これだけの本を集めれば、ひと財産と言わず、国家予算くらいになるって聞いて、ポカンと開けてしまった口がしばらく閉じられなかった。国家予算については、私にもよく分からなかったけど、お兄ちゃんが、この学校を丸ごと買うのはわけないって言っていたから、とてもすごい金額なんだと思う。

 私、お金のことも勉強しなくちゃ。お金の価値っていうのが、全然分からない。今度、クララさんに聞こう。


「図書室では、基本的に静かにしなくてはならない。他の利用者の邪魔にならないよう、あまり人のいない所で勉強をしよう」


 そう言って、お兄ちゃんは目が届く範囲で入口から一番遠い所を選んだ。丸いテーブルに、真四角に見える柔らかそうな椅子が4つ置いてある、4人掛けのスペース。


「ディアは言葉が分かってるから、音に当てはまる文字さえ覚えれば、すぐに本を読めるようになる。精霊図鑑と、文字表を持ってくるから、ここで待っていてくれ。この筆記用具を広げていてくれるか?」


 そう言って、お兄ちゃんは私を椅子の1つに降ろすと、筆記用具を私に預けて本を探しに行った。お兄ちゃんに言われた通り、ノートとペンを広げてすぐにメモを取れるようにしておく。

 そうだ、お兄ちゃんが帰ってくるまでに、あいうえお表を書いておこう。その隣に、合うものを書いていけば分かりやすい、と思ってノートにあいうえおを書いていく。そのついでに、句読点も次のページに書いて、本を読む時の参考にすることにする。後で見やすいように丁寧にと思いながら気持ちを込めて書いた。


「よし、出来た!」

「何を書いていたんだ?」


 ひっ?!

び、びっくりした。お兄ちゃんはとっくに帰ってきていました。体が浮くほどびっくりした私を見て、お兄ちゃんがくつくつと笑いをこらえてる。俯いて隠してるみたいだけど、お兄ちゃん、バレてるよ!

 なんか、この流れ前にもあった気がするな。


「いいいいつから見てたの?」


 全然気づかなかったから、聞いてみると、この文字を書いているときからって言ってノートの文字を指差して教えてくれた。その文字は、『て』っていう字。かなり前から待たせちゃったみたいで、慌てて気づかなくてごめんなさいって謝ったら、まだ笑いをこらえながら、いや、私こそ驚かせてすまないって首を横に振られる。

 そんなに笑わなくてもいいのに。

 そう思ったら、口に出てたらしくて、お兄ちゃんが吹き出した。自分のほっぺたが少しずつ膨れていくのが分かる。慌てたお兄ちゃんはもう1回私に謝って、今度こそ笑うのをやめた。膨らんだほっぺたを撫でてあんまり困った顔をしてたから、許してあげることにした。

 うそ。ほっぺた撫でられるのが気持ちよくて、ほっぺたを膨らませてた気持ちがしょぼしょぼしぼんでいっただけ。ちょっぴり悔しいような気がして、お兄ちゃんの腕にぎゅって抱きついて頭でぐりぐりしてから解放した。


 お兄ちゃんは、私をふにゃふにゃにする魔法の手を持ってるんだと思う。魔法使えないなんて絶対うそだよ。

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