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彼と、彼のお寝坊さん  作者: ともむら
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14-2 魔力とはなんですか?(後編)

 ほかの人が出て来ると、アルは空気になりがちだと本当に思います。

 前後編のため、引き続きディア目線です。


 ディアside

 魔力があるっていうのは分かったけど、問題は、声じゃなくて、言葉、なんだよね、きっと。


「先程の例えを応用して話を続けると、私達精霊は、生まれながらに声を持ち、その言語の基本も持ち合わせているという事になります。ここで問題なのは、それらの種類が一つではないという事です」


 1つじゃない、というと。


「私達精霊は、精霊毎に行使出来る魔法の系統が決まっています。他の精霊の真似をしても、水の魔法を行使するものが火の魔法を行使するという事は出来ません。それはつまり、言語が違うだけでなく、恐らく声そのものも、系統毎に違うという事なのでしょう」

「つまり、見よう見まねで魔法を使えるようにはならない可能性が高い、と」

「そういう事になります」


 つまりつまり、私が魔法を使えるようになるには、私と同じ系統の精霊さんを見つけるとかして、声に合った言葉を覚えなければならない、という事?それって。


「私が何だか分からなくても、それは出来ますか?」


 私がそう言うと、2人共黙ってしまった。あれ、そもそも。


「ガールさんはガーゴイル、ボルトさんはライジュウ。じゃあ、私は?」


 それが分かれば、私の系統っていうのは分かるんだよね。


「それが、人型の精霊というものは、そもそも本人の自覚以外で判別する事が難しいのです。ディアさんが分からないとなると、私達にも分かりません」

「そうなると、ディアがどの系統の魔法を扱えるのかが分からないまま、魔法を勉強するしかないという事でしょうか」


「魔法の系統については一先ず置いておいて、魔力の勉強から始めようと思っています」

「魔力の勉強?」


 私がそう訊ねると、学長先生が頷いた。


「そう、魔力の勉強です。魔法は、対象の自然に伝える為の言葉を理解していないと行使出来ませんが、その前の段階、魔力を思う通りに行使する練習というのは、相手がいないので言葉を理解している必要がありません。発声練習だと思ってもらえれば良いでしょうか」


 発声練習ならば、意味のある言葉は使いませんからね、そう言って、1枚の紙を私に見せてくれた。


「この絵を見てください。指南書というものが存在していない為、私の大雑把なイメージを描いてみました」


 その絵は、ある本で見た人体模型を簡単に描いたようなものだった。


「これは、学長先生ですか?」

「ええ、そうです。それと同時に、ディアさんでもあります。人には血が通っていますね。それは、分かりますか?」

「はい、そういう図を見た事があります。体の色んな所に巡ってる」


 隣でお兄ちゃんがそんな本を読んだ事があるのかって感心してたけど、普通の人は、あんまり見ないのかな?私がお父さんからもらった本は、絵本、図鑑、辞書、少しの小説、そういうものだった。

 普通の人が、どんなものを読んでいるのかは、見たことがないから分からない。後で、お兄ちゃんに聞こう。


「その通りです。普段、人間は血が体中を巡っている事なんて意識していませんが、確実に皮膚の下には血管があり、血が流れています。魔力も、それと同じです。今ディアさんは意識していませんが、魔力は確実に貴女の体の中を巡っています」


 成る程! あるって分かっていないものを扱うのは無理だから、まずはそれを知るっていうことですね、学長先生!


「幸い、私の魔法は学校内であれば、結界を作る事が出来ます。学校での家族、つまり生徒と守護精、先生方に対しても、かなり自由に結界を張る事が可能です」


 学校という組織限定の魔法なの、かな?不思議。そういえば、学長先生の種族ってなんだろう?

 不思議だ、と顔に書いてあったらしくて、学長先生は私の顔を見てくすくすと笑った。


「私は、シルキーという、家に憑く習性をもった精霊なのです。私の家はこの学校なので、護る対象の中に、貴女方も含まれています。学校を護る結界の全ては、私のものなのですよ」

「そうだったのですか?!」

「シルキーは、もともとあまり強い種族ではありませんが、家族への愛情だけは、他の種族にも負けません。護る力に関しては、自信があります」


 が、学長先生は肝っ玉お母さんみたいな方でした。どこかお茶目に胸を張る姿が、とってもキラキラしてて、眩しかった。私のことも、家族って言ってくれるのが嬉しい。


「それで、先程魔力を血と例えました。血は、普段意識していませんが、血流が止まると、血が止まった感じが分かりますし、運動して心拍数が上がると、ドクドクと流れているのを感じる事がありますね。それと同じような事を、私の結界魔法で引き起こそうと、思います」


 そう、学長先生が言った所で、夕食の時間を知らせる鐘が鳴った。


「今日は、ここまでですね。明日、魔力を感じるための実習を行う事にしましょう。特に激しい運動や魔法を行使する予定はありませんので、またここで」


 あっという間だった。分からない事もいっぱいあったけど、魔法と魔力のことは、理屈として、すこし理解出来たような気がする。


「「ありがとうございました」」


 席を立って、お兄ちゃんと一緒にお辞儀をする。


「一緒に頑張っていきましょうね」


 ほっとするような笑顔で手を左右に振ってくれる学長先生に小さく手を振り返して学長室を退室した。

 一歩全身! 明日も頑張るぞ! って思ってると、私のお腹の虫が鳴る。


「カーシーとクララを誘って、早く夕食に行こうな」


 お兄ちゃんが頭を撫でてくれたけど、すごく恥ずかしくてしばらく顔を上げられなかった。それを察してくれたお兄ちゃんが抱き上げて顔を見ないようにしてくれて、少し安心したんだけど。


「なーんでそんな赤ん坊みたいに抱き上げられてんの?」


 カー兄にそんなこと言われたのが今までで一番恥ずかしい気持ちになった。

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