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彼と、彼のお寝坊さん  作者: ともむら
16/45

13   実は分からない

 13日に連続投稿というのはやはり無理でした。日付が変わる前にもう一話投稿しますが、遅くなるかもしれないので明日にでも確認して頂けると嬉しいです。


 アルside

 実習授業中のディアは、外へ出て一番子供らしかったのではないかと思う。

 キラキラと目を輝かせ、一応我慢していたのだろうが、頭が右に左に忙しそうに動いていたのですぐに分かった。守護精の多種多様さに驚き、更に魔法で驚いていた。

 クララの守護精ボルトと、友人――ボルトは兄貴分のつもりかもしれないが――という関係を結べたようだし、ディアの友達がもっと増えれば良いと思う。きっかけの手伝いだけはするが、出来れば、自分の手で得て欲しい。

 この日、授業が終わり、眠る時になっても、ディアは魔法と守護精の事で頭が埋め尽くされているようだった。夕食の時、カーシーに話しかけられていたが、授業前よりも上の空で、会話が成り立っていなかった程だ。昼に折角褒めた綺麗な食事、というのにもあまり頭が回らなかったようで、口の周りがべたべたに汚れてしまっていた。一度口元を拭われた後は、恥ずかしそうにしながら綺麗に食べようと努力していた為、叱りはしなかったが。


 食事の際の緊張感をなんとか保ったまま、洗顔も歯磨きも頑張っていたのだが、私に髪を梳かれる頃には、瞼が垂れてきていた。かっくんかっくんと揺れる頭が危なっかしくて、何度か声を掛けてみるも殆ど効果はなく、何秒間かの覚醒を促すだけに終わった。ディアは、辛うじておやまで口に出していたが、すみまで言い切れていない事に気付かなかっただろう。その後言った私のおやすみは、間違いなく聞こえていない。本当に人間の子供のようだ、と思いながら、私も隣で横になって、すぐに眠った。


 それから特に問題なく学校生活を送った。ディアは、自分からクララに挨拶をするなど、少しずつクラスメイトに馴染んでいるようだ。喜ばしい事である。

 初めての実習授業を受けた一週間後、リナ先生――ディアは最初に見た先生が彼女だった為か、何故か先生さんと呼んでいる――より放課後、学長室へ向かうように言われた。

 今日から、魔法授業が始まるらしい。学長の配慮で、私も魔法授業に同行して良いと聞いてほっとする。実習授業以来、ディアは魔法に憧れを抱いているようなのだ。ディアに、魔法授業の事を教える時は、魔法が使えないかも知れない、という所まで説明しなければならない。どう切り出したものか、と考えている内に昼食の時間になってしまった。


「アルさーん、いつもに増して仏頂面になってんけどなーに考えてんの」


 カーシーがそう言うと、ディアも、お腹痛い? と心配してこちらを見ていた。眉間にシワが寄っていたらしい。それにしても何故、お腹が痛い、になったのだろうか。ディアが難しい顔をする時は腹痛なのか? 今度注意してみておこう。


「すまない。ディア、腹痛ではないんだ。心配掛けてすまなかった」


 ディアの頭を撫でる。そっか。よかったー! とふにゃふにゃと笑うディアを見て、ほっと息をつく。魔法の事を正直に話すと決め、昼食後、午後の授業が始まる前に一旦自室へ戻った。


「ディア、今日の予定について話をしたい」


 ディアが、一つ頷くのを見届けてから話を始める。


「今日、授業が全て終わったら、学長先生の元へ行く。魔法について、教えて貰いに行くんだ」


 魔法を教えて貰うという言葉にディアの目がキラキラと輝き出す。その様子を見て少し心が痛むのを感じたが、一息ついて話を続けた。


「実習授業で見たが、守護精は、皆魔法を行使出来ていたな」


 うん、とディアが頷く。


「守護精というのは、生まれて直ぐから、魔法が使える。魔法の使い方を知っているからだ」


 ディアがもう一度頷く。ただ、その直ぐ後、今度は首を傾げた。賢い子だ。自分が知っている事との違いに気付いたようだった。


「だが、ディアは魔法の使い方を知らない。そうだな?」


 そう言うと、そうそれ! というようにうんうんと頷いた。


「それは、ディアがちょっと特別だからだ。だからこそ、学長が魔法の授業をしてくれる」

「教えてもらったら、魔法、使えるようになる?」


 核心を突いたその一言に、息を詰まらせる。


「それは、分からない。今までにそういう守護精がいなかったからだ。もしかすると、使えないかも知れない。精霊でないものには魔法が扱えないため、私には分からない」


 目の前の大きな瞳がぱちぱちと瞬く。悲しんでいるのかどうかは伺えない。私はディアの言葉を待った。


「お兄ちゃんは、魔法が使えないのね? 人間には、魔法が使えない」


 最初に出た言葉は疑問形だったが、私の返答は求められていないようだった。頭の中の考えが、口から漏れてしまっている、そんな様子だ。


「でも、私は守護精で精霊。ちょっと変わってて、ボルト様達とは違って魔法の使い方を知らない。学長先生が魔法の授業を今日からしてくれるけど、今までにそんな守護精はいなかったから、使えるようになるかは分からない」


 その通りだ。口に出してしまっている事には気付いていない様子だが、どう理解しているかが分かって、私としては都合が良い。そのまま、見守る事にする。


「授業を受けないと、きっと私は魔法を使えるようにはならないってことだよね?」


 そう言うと、誰に対してでもないのだろうが、こくりと一つ頷いた。どうやら、彼女の中で答えが出たらしい。


「お兄ちゃん、私にも、もしかしたら魔法が使えるようになるかもしれないってことなんだね? すごく、すごく素敵!」


 予想外だ。精霊なのに使えないかも知れないと知って、ディアが落ち込んでしまうのではないかと思っていた。泣くどころか目をキラキラさせているディアにほっとする。


「ああ。授業が全て終わるのが待ち遠しいな」


 ディアの頭を3回撫で、午後の授業のため、自室を出た。

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