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7.客人

「ああ、それから。あちらからの客人が一人、お越しです」

 あの後普通に夕食を済ませ、暇を告げた真っ黒の男に拍子抜けしつつも早く帰れと丁重にお見送り。その際に、何でもないようにこの弟子は一言そう告げ、では、とこの部屋を後にした。

 それをはよ言わんかいぼけ。

 なんだか急に疲れが押し寄せ、そのまま着替えもせずにベッドにダウンしてしまった。



 客人というのは、こっちの世界があっちの世界の住人を何らかの理由で引きずり込んじゃう現象の被害者の事。言わずもがなワタシも被害者の一人なのだが、この現象はそうたびたび起こることではない。あっちの世界の乙女の一般常識であるこの現象の名は、異世界トリップ。しかも帰還不可能フラグ。


 原因はアソコの頭のいい学者たちにもいまだに解明できないらしいが、現象の周期や落ちてくる人種の特定、また、ワタシからすれば故郷である地球の一般常識まで、既に研究は進められている。言語に文化、こちらでは魔法技術に変えられる科学技術に、生態系などなど。あっちの世界の存在や、異世界トリップ現象などは国の重要機密であり、トリップしてきた人間も優遇され、一生食うに困らぬ生活を約束される。まあ、そんな都合のいい話はなくもちろん無料ではない。


 あっちの住民は国の首都に集められ、そして人目に触れぬ専用の施設に収容される。敷地内の行動に制限はないが、自由に外出することは許されない。主にそこが異世界トリッパーたちの生活の場になるのだ。

その施設というのが、異世界トリップしてきた異世界人の知識を元に、魔法技術を発展させる場所。それが、いままで散々なんか卑猥にも聞こえなくもないアソコアソコ言ってた場所だ。


 国立魔法技術発展機関。名前ものままである。


 そもそも、この国は60年ほど前まで隣接する軍事大国と戦争をしていたらしい。しかし、それも60年前にはもうすでに軍事力を用いた直接対決には至らず、魔法技術進展の競い合いや一部商業取引の中断、双方の国民の入国制限などだったらしい。表立たず諜報活動に精をだし、裏舞台での暗躍が活発に行われていた。


そのぴりぴりした状況を打開したのは、人間族双方の敵となり得る存在。魔人。魔法の国らしく、様々な人種が取り巻くこの世界で、唯一ほかのどの種族とも馴れ合わない、他の種族からすれば忌々しい存在。


 種族の中でも個体での魔力の保有量はトップクラス。個人主義で快楽主義。主な生息域は天然の魔石発掘場所としても有名な、魔人の国イワラ国が総べる大きな島のアザーニャ大陸。魔力を保持せずとも魔法を行使できる魔石は他の種族からはのどから手が出る宝物なので、一攫千金を狙いアザーニャ大陸に渡るものも昔は多かったらしいが、今では大陸の海に面する陸地にはすべて魔法による侵入不可の仕組みが取られており、そんな命知らずな輩は少なくなった。


アザーニャ大陸から一番近い多種族の住む大陸、グーゾ大陸から、海を渡りイワラ国に密入国しようとする者は皆、今ワタシが住むユディ国の港町から出向するのだ。しかし、魔人の国イワラが密入国者を警戒し侵入不可の魔法をかける前は、アザーニャに踏み入れ、ほとんどがそのまま後退もできずに死んでいったといわれている。じわじわと体を蝕む魔力によって。

 人間にとって100パーセントの酸素が毒であるように、魔石の出来るような魔力の放出量の高いアザーニャの地では、魔力の弱い種族が足を踏み入れるとかなりの確率で人体の魔力保有のキャパシティを超え、人体を動かしている力の源である魔法石が割れてしまうのだ。


魔法石とは、この世界で生まれた生命体の全てが持っている、生存するために欠かせない石。主に体の外側からは見えぬところに埋まっていることがほとんどで、血を全身に送り出す心臓が急所なのはこちらでもあちらでも同じだが、こちらではその魔法石を打ち砕かれてしまうと同じように死んでしまう。あちらにはなかった魔力というものが常に魔法石を通じ、全身にそれを行き渡らせている。なので、こっちの世界の生物は人間にしろ動物にしろ、すべて少なからずの魔力を保持していることになる。


魔法を使える、使えないの差は、魔力を持っているか持っていないかではなく、魔力の保有量がどれだけ多いかにかかっているのだ。この世界ではすべての土地に魔力が宿っており、それが途切れず目に見えない泉のように染み出している。その魔力を、魔法を行使する際に吸い出して、体の内に溜め、魔法石を通じ放出することによって、初めて魔法として形をとる。


その際に、魔法を形作る魔力を一時的に体内に有することのできる、魔力の保有量の多いものが、実質魔法使いとして実力の高いものとしてみなされることになる。


大多数の人型種族は実際に魔法を行使するだけの魔力を体内に溜めることができず、実質的な意味でいえば魔法使いと呼べるものはこの世界でも数えるほどしかいない。そのほとんどは貴族や王族などの魔力の強いもの同士を掛け合わせた近親婚によって生まれている。なので、魔力を保持するキャパシティの弱いものがアザーニャ「ああ、それから。あちらからの客人が一人、お越しです」

 あの後普通に夕食を済ませ、暇を告げた真っ黒の男に拍子抜けしつつも早く帰れと丁重にお見送り。その際に、何でもないようにこの弟子は一言そう告げ、では、とこの部屋を後にした。

 それをはよ言わんかいぼけ。

 なんだか急に疲れが押し寄せ、そのまま着替えもせずにベッドにダウンしてしまった。



 客人というのは、こっちの世界があっちの世界の住人を何らかの理由で引きずり込んじゃう現象の被害者の事。言わずもがなワタシも被害者の一人なのだが、この現象はそうたびたび起こることではない。あっちの世界の乙女の一般常識であるこの現象の名は、異世界トリップ。しかも帰還不可能フラグ。


 原因はアソコの頭のいい学者たちにもいまだに解明できないらしいが、現象の周期や落ちてくる人種の特定、また、ワタシからすれば故郷である地球の一般常識まで、既に研究は進められている。言語に文化、こちらでは魔法技術に変えられる科学技術に、生態系などなど。あっちの世界の存在や、異世界トリップ現象などは国の重要機密であり、トリップしてきた人間も優遇され、一生食うに困らぬ生活を約束される。まあ、そんな都合のいい話はなくもちろん無料ではない。


 あっちの住民は国の首都に集められ、そして人目に触れぬ専用の施設に収容される。敷地内の行動に制限はないが、自由に外出することは許されない。主にそこが異世界トリッパーたちの生活の場になるのだ。

その施設というのが、異世界トリップしてきた異世界人の知識を元に、魔法技術を発展させる場所。それが、いままで散々なんか卑猥にも聞こえなくもないアソコアソコ言ってた場所だ。


 国立魔法技術発展機関。名前もそのままである。


 そもそも、この国は60年ほど前まで隣接する軍事大国と戦争をしていたらしい。しかし、それも60年前にはもうすでに軍事力を用いた直接対決には至らず、魔法技術進展の競い合いや一部商業取引の中断、双方の国民の入国制限などだったらしい。表立たず諜報活動に精をだし、裏舞台での暗躍が活発に行われていた。


そのぴりぴりした状況を打開したのは、人間族双方の敵となり得る存在。魔人。魔法の国らしく、様々な人種が取り巻くこの世界で、唯一ほかのどの種族とも馴れ合わない、他の種族からすれば忌々しい存在。


 種族の中でも個体での魔力の保有量はトップクラス。個人主義で快楽主義。主な生息域は天然の魔石発掘場所としても有名な、魔人の国イワラ国が総べる大きな島のアザーニャ大陸。魔力を保持せずとも魔法を行使できる魔石は他の種族からはのどから手が出る宝物なので、一攫千金を狙いアザーニャ大陸に渡るものも昔は多かったらしいが、今では大陸の海に面する陸地にはすべて魔法による侵入不可の仕組みが取られており、そんな命知らずな輩は少なくなった。


アザーニャ大陸から一番近い多種族の住む大陸、グーゾ大陸から、海を渡りイワラ国に密入国しようとする者は皆、今ワタシが住むユディ国の港町から出向するのだ。しかし、魔人の国イワラが密入国者を警戒し侵入不可の魔法をかける前は、アザーニャに踏み入れ、ほとんどがそのまま後退もできずに死んでいったといわれている。じわじわと体を蝕む魔力によって。

 人間にとって100パーセントの酸素が毒であるように、魔石の出来るような魔力の放出量の高いアザーニャの地では、魔力の弱い種族が足を踏み入れるとかなりの確率で人体の魔力保有のキャパシティを超え、人体を動かしている力の源である魔法石が割れてしまうのだ。


 魔法石とは、この世界で生まれた生命体の全てが持っている、生存するために欠かせない石。主に体の外側からは見えぬところに埋まっていることがほとんどで、血を全身に送り出す心臓が急所なのはこちらでもあちらでも同じだが、こちらではその魔法石を打ち砕かれてしまうと同じように死んでしまう。あちらにはなかった魔力というものが常に魔法石を通じ、全身にそれを行き渡らせている。なので、こっちの世界の生物は人間にしろ動物にしろ、すべて少なからずの魔力を保持していることになる。


 魔法を使える、使えないの差は、魔力を持っているか持っていないかではなく、魔力の保有量がどれだけ多いかにかかっているのだ。この世界ではすべての土地に魔力が宿っており、それが途切れず目に見えない泉のように染み出している。その魔力を、魔法を行使する際に吸い出して、体の内に溜め、魔法石を通じ放出することによって、初めて魔法として形をとる。


 その際に、魔法を形作る魔力を一時的に体内に有することのできる、魔力の保有量の多いものが、実質魔法使いとして実力の高いものとしてみなされることになる。


 大多数の人型種族は実際に魔法を行使するだけの魔力を体内に溜めることができず、実質的な意味でいえば魔法使いと呼べるものはこの世界でも数えるほどしかいない。そのほとんどは貴族や王族などの魔力の強いもの同士を掛け合わせた近親婚によって生まれている。なので、魔力を保持するキャパシティの弱いものがアザーニャ大陸に渡ると知らず知らずのうちに魔力を体内に蓄積させ、それを放出する術もなく魔法石が限界を迎え、死に至るのだ。この現象はほかのどの土地にも発生例はなく、通常活動するための魔力しか体には吸収されない。

魔人の魔法使いが多いのも、この環境に耐え、海に隔てられた島国で独自の変化を遂げたのだろうと推測された。


 王族ともども個人主義で他種族に興味のない魔人だったが、ユディ国と軍事大国パラマの戦争のおかげで困窮した国民が一攫千金を狙い、または家族を養うためにラザーニャに訪れ野垂れ死に、または魔法技術向上の為に魔石を欲する両国の魔法使いがこの土地を訪れ、中途半端に魔力の保有量が多いものだから死ぬにも死ねず、数少ない良心のある魔人の厄介になる事態が多発。


 もともと魔石の輸出は国を通じてなされておらず、時たま魔人個人の気まぐれにより裏ルートで売られるのを購入するしか、魔石を手に入れる手立てはなかった。国交さえほとんど経っていたイワラ国だったが、戦争がおこってから密入国が増え、両国の人間族の死体が懲りずに増えることに我慢ならなかったイワラの国王が、自分の息子であり今は臣下に下ったパドゥーヌスに、「ちょっとうざいから喧嘩両成敗して戦争止めてきて(超意訳)」と命を下し、その命の通りパドゥーヌス率いる第三魔法騎士団が、「ちょっとあんたらのせいで迷惑してるんですけど。これ以上無駄な戦争するならイワラが全力で両国潰しにかかるぞコラ」と脅しをかけたわけだ。

その結果、無事、とは言えないがイワラを通じた両国の和解が成立し、イワラ国も自国に一番近いユディ国との国交を通じた魔石の輸出を承諾。ユディ国を媒体とした多種族に向けた魔石の入手が可能になった。


 三国のとりあえずの同盟国入りが決まり、パラマ国との入国制限の解除や商業取引の復活を終え、イワラ国とパラマ国の商業の架け橋ともなりつつあったユディ国。


 大陸に渡ると知らず知らずのうちに魔力を体内に蓄積させ、それを放出する術もなく魔法石が限界を迎え、死に至るのだ。この現象はほかのどの土地にも発生例はなく、通常活動するための魔力しか体には吸収されない。

魔人の魔法使いが多いのも、この環境に耐え、海に隔てられた島国で独自の変化を遂げたのだろうと推測された。


 王族ともども個人主義で多種族に興味のない魔人だったが、ユディ国と軍事大国パラマの戦争のおかげで困窮した国民が一攫千金を狙い、または家族を養うためにラザーニャに訪れ野垂れ死に、または魔法技術向上の為に魔石を欲する両国の魔法使いがこの土地を訪れ、中途半端に魔力の保有量が多いものだから死ぬにも死ねず、数の少ない良心のある魔人の厄介になる事態が多発。


 もともと魔石の輸出は国を通じてなされておらず、時たま魔人個人の気まぐれで多種族に流通するしか魔石を手に入れる手立てはなかった。国交さえほとんど経っていたイワラ国だったが、戦争がおこってから密入国が増え、両国の人間族の死体が懲りずに増えることに我慢ならなかったイワラの国王が、自分の息子であり今は臣下に下ったパドゥーヌスに、「ちょっとうざいから喧嘩両成敗して戦争止めてきて(超意訳)」と命を下し、その命の通りパドゥーヌス率いる第三魔法騎士団が、「ちょっとあんたらのせいで迷惑してるんですけど。これ以上無駄な戦争するならイワラが全力で両国潰しにかかるぞコラ」と脅しをかけたわけだ。

その結果、無事、とは言えないがイワラを通じた両国の和解が成立し、イワラ国も自国に一番近いユディ国との国交を通じた魔石の輸出を承諾。ユディ国を媒体とした多種族に向けた魔石の入手が可能になった。


 三国のとりあえずの同盟国入りが決まり、パラマ国との入国制限の解除や商業取引の復活を終え、イワラ国とパラマ国の商業の架け橋ともなりつつあったユディ国。


 そんなときだ。

ユディ国に、違う世界から来たと主張する人間が現れ始めたのは。


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