イサク・カサブランカの高揚
遅くなってすいません。
こういう話が嫌いでない方は末永くお付き合い下さい。
不明な部分はコメント頂ければ、答えられる範囲で答えますよ。
設定に関しては設定集で順次公開予定なんで今しばらくお待ちください。
それでは、ごゆっくり。
四角い正方形の箱の中を十字に仕切った形の4連装ミサイル「ボム・ボックス」がある。
それをたてに二つ横に二つの計四つのボムボックスが装備されていた。
右肩にはアジア圏で最大の企業、大東亞興業の85ミリ速射砲が鎮座している。
「あー…あれはヤバイ…」
一・五秒に一発を発射、そのまま速射する性能を誇る大東亞興業のイチオシ商品だ。
ボムボックスで気を引いて量腕の銃と機動力とで撹乱し、85ミリ速射砲をぶちこむ。
そんなはらづもりだろう。
そんなことさせるかと俺も言いたいがしかし、後方に控えるはかの月影。
果たしてうまくいくだろうか。
無論、此方が。
月影の装備は左肩に戦闘機等に装備するバルカン砲。
戦車をピザみたいにカットできるスグレモノだ。
右肩にはアームが付いていてその先にはチェーンソーが三つ取り付けられている。
右手には大型のグレネード砲。
気にくわない相手を爆殺させたいときに使いたい一品。
もちろん大扶桑興国の兵器であるのは言わずもがな。
左手には大型のプラズマライフル……え?
「は…はぁ!?プ……プラ……プラズマライフル!?なんで!?」
なぜ俺が驚いたのか…大扶桑興国と大東亞興業は実弾かつ、大艦主砲主義のはず。
生産される兵器も当然実弾系武器、つまりグレネードや戦車砲などの爆砕兵器しか産み出していない。
当然所属オリジナルなども生産兵器で統一される為、興国所属機がエネルギー系武器を使っているのはまずおかしい…のだが奴等には例外がある。
そう、トライデント社。
トライデント社は逆にエネルギー系武器の生産が主だった。
もし。
もし興国がトライデント社を壊滅と同時に接収していたとしたら。
今月影が実弾兵器意外にエネルギー武器を使っているのはなんら不思議ではない。
筈。
「なんにせよ…やることは変わんねえよな」
アルヴァが近中距離からM4アサルトライフルを三点バーストで射撃しつつ、M14EBRを単発射撃でチクチク当ててくる。
俺も回避しながらすかさずP90で反撃。その時、右から異常なモーターの回転音と共に月影がその巨躯に似合わぬスピードで接近してくる。
回転音の正体は、あの肩に装備された三連チェーンソーの駆動音だった。
「そ…れは!ミンチじゃ済まねぇ!!」
アルヴァとの撃ち合いを放棄して回避に専念。
「「危険感知に状況処理能力、判断力も上々。成る程な。月閃が負けるわけじゃ」」
「そいつぁ、ありがとよォ!クソッタレ!」
既に展開済みのレールガンを月影に向け……
「ッッッダラァ!!」
鋭い電気的な発射音を放つも月影は簡単に避ける。
「「兵器の性能に頼りすぎだ。悪い冗談だ。その程度なのか…野犬?」」
「買い被ったのはお前だろうが!」
月影の超機動チェーンソー(イサク命名)を紙一重で回避し、アルヴァの85ミリ速射砲を掠る程度に回避する。
「これはヤバいぜ……」
誰に言うでもなく呟く。
その時…
「ん?」
「「なんじゃ…!?」」
「「あれは……!?」」
三者共に疑問符を浮かべる。
空が光った。
その直後、物凄い轟音を引き連れて青白いそれは目標のミサイルに命中する。
直後、地球が壊れたのかと思うほどの振動と爆風が三機のA・Sを襲い戦場が混乱する。
「「なんと……これでは……」」
「「生き残りなど居ないだろうな……どうする、月影?指示を」」
二機が呆然とするなか、俺は残弾チェックと機体耐久値の確認を行い攻撃の算段をつけるがいい考えがまるで浮かばない。
そこに救世主が現れた。
「こちらフランケンウルフ社、シープイーターだ。クウェイク、無事か?」
「お陰様でなんとかな。成功か?」
「ああ。当該地区の敵施設は完全に沈黙。作戦本部から追加目標もきてない。あとは帰還するだけだが…」「そう簡単に逃げられはしないぞ。てか助けてくれ」
「はぁぁ……」
マリアナ海溝よりも深い溜め息を吐き出し……
「わかった。三十秒持ちこたえろ、すぐにいく」
「助かる。先に仕掛けているぞ」
とだけ俺は告げ、再び接敵。
「「月影!!」」
「「判っておる」」
反応が早く、不意打ちの隙すら貰えない。
「流石は歴戦の戦士ってか?」
やはりアルヴァから先に倒さなければまずい。
恐らく、アルヴァは索敵なども兼任しているはずで、アルヴァの機動性を生かして先行強襲、更にアルヴァがてこずるようであれば後詰めとして待機している月影も前に出る。機動力があり、撹乱しつつ致命的なダメージを放てるアルヴァを先に倒しさえすれば、月影と戦うのは楽になるはず。
重量機体にしては尋常ではないスピードだが所詮重量機。
月影の放つプラズマライフルを回避し、拡散榴弾砲も回避する。
二つともとにかく威力は高いがリロードは長い。
インターバルは二秒。
その隙に85ミリ滑空砲を展開しつつ、アルヴァへレールガンを向ける。
レールガンの銃口がアルヴァへ向いた瞬間……
「「遅い」」
アルヴァが射線から逃れる。
あぁ、予測通りだ。
残り一秒。
アルヴァが回避した先には85ミリ砲の銃口が向いていた。
「「しまっ……」」
「遅いぜ、気づくのが」
85ミリ砲が火を吹く。
ドンカッ!と言う鈍い、それでいて重い音が響き、着弾地点を衝撃で巻きおこった砂煙が包む。
あと0.5秒。
更にブーストを瞬間的に吹かし、動きの止まったアルヴァに近づく。
そして加速された機体から放たれるレールガン。
放たれた飛翔体は機体の加速に伴って更に加速。
アルヴァの頭部に吸い込まれてゆく。
「「すまん、月影……!!」」
風船が割れたようにアルヴァの頭部が破裂した。
俺は月影のほうへ向き直り「次はお前だ」
またしても動きの止まる月影。
「「月閃に続きお前さんまで逝ったか……アルヴァ。潮時だな……よかろう。儂も直ぐにそちらへ行く。その前に……」」
月影も改めて俺を敵だと確認したようで、こちらを向く。
ソーブレードの音だけが鳴り響く。
「「おまえさん方に土産物の一つや二つ、買っていってやらんとのぉ!!」」
再び超機動チェーンソーによる超速接近。
しかし、違った。
速度が先程の倍ほど速い。
更にプラズマライフルや拡散榴弾を同時展開し、こちらに向け放ってくる。
「悪いがこれも仕事なんだ。腐るほど見てきたろう!?アンタなら!」
「「そうだのぉ。しかし、するのとされるのではやはり感じ方が違うものだろうて?小僧」」
「ハッ!そりゃあ大層便利な考え方だな!ご丁寧にリミッターまで解除しやがって!老体に鞭打ってご苦労なこった!」
「「なに、他ならんあやつらへの弔いだ。儂も命を賭けようぞ」」
モーターの異常な駆動音。
来る。
月影はブーストでの横移動をしつつタイミングを図ってくる。
しかし月影が攻撃することは二度となかった。
横合いからの榴弾砲による攻撃。
俺の方に意識を集中していた月影はそれに対応できず、直撃。
「「ぐぉっ……!!」」
衝撃によって硬直したところをすかさず俺がレールガンの洗礼。
いくら重厚な装甲を持っていようとも、A・Sを壊すことを意識されて造られた兵器の攻撃をこれだけ浴びせられて、動けるA・Sなどいなかった。
「「抜かったか……」」
最期にそれだけを呟き、爆散する。
「悪いな、邪魔をして」
横合いからの攻撃の正体はシープイーターだった。
「別に。それに援護を頼んだのは俺だからな。感謝こそすれ文句を言うようなことではないだろう」
「もっともだ」
シープイーターは喉の奥でクククと小気味良く笑うと
「ミッションは完了した。帰還しよう。噂通りの活躍だったな」
「どんな噂かは知らないが次があればよろしく頼む。まぁ、次は敵かもしれんがな」
かなり遠くから迎えのヘリの音が聞こえてくる。
穏やかな俺の気持ちとはしかし裏腹に、深刻な事態が俺を待ち受けているのも知らずに俺は輸送ヘリのベッドで眠りについた。