竜王と精霊王
早めのペースで投稿。
この世界に生まれて、早くも300年の時がたった。
魔法の研究や練習、魔石で道具を作ってみたりと、色々しながら過ごしていたある日の朝。
俺は朝日の昇る数分前に起き、日課の毛づくろいをしながら、洞窟入り口のいつもの場所に座わり日の出を眺めていた。
だがその日の日の出は、いつもと少し違っていた。
日が出た瞬間、とても巨大なマナが動いたことを、すごく遠くに感じたのである。
今まで空気中のマナを感じてはいたが、こんなに大きなマナを感じたことはなかったので少し驚いた。
(……とても強いマナを2つ感じる……今までこんな大きさの感じたことはなかったし、気になる……見に行くか)
俺は空を駆け、力を感じた方向へ全速で走った。
俺は、目的地に1時間もかからずについてしまった。
目的の場所は、光を放っていたので分かりやすかった。
とりあえず地面に降りて光に近づく。
鼻先が微かに光に触れた時、光は一瞬にして消えて2つの小さな
物が残った。
一つ目の小さな物は竜だった。
紅の鱗に体長と同じ位の翼が生えたドラゴンが横たわって寝ている。
ドラゴンの隣に寄り添うようにいた、二つ目の小さな物は、人のような姿をしていたが人ではない……多分精霊?だと思う。
透明感のある透き通るような長い白い髪を、顔の左右に一房ずつ残して、後ろの髪は腰の辺りで金色の金属の髪留めでくくられている。そして耳は大きくとがっている。
服はゆったりとした白い服で、いろいろな色の糸で不思議な模様がそここに描かれていた。
神秘的な感じのする3~4歳くらいの少年?……中性的な顔立ちだから分かりにくい。ドラゴンと同じように眠っている。
(どういうことだ?動物が生まれるまでは、後200年はかかる筈だが……とりあえず起こして見るかな)
俺は二人に近寄り、二人の頬を一回づつ優しく舐めた。
そのあと鼻先で少し身体を押して見る。
すると、少年?の方が、
「……う……ううぅん……」
目を覚ました少年?は、目を少しだけこすって辺りを見渡し、目の前にいた巨大な狼に気づいた。
「うわぁ!!でっかい狼!!」
その驚いた若干悲鳴のような声に、隣で寝ていたドラゴンは、
「キュイィ!!」
という声をあげ驚いて跳ね起きた。
「こっちにはドラゴンもいる!!」
少年?は隣で寝ていたドラゴンにも驚いている。
二人は混乱しておろおろと座っている。
このままでは混乱はしばらく収まりそうにもなかったので、声をかける事にした。
「とりあえず…落ち着け」
すると混乱していた二人は、話しかけた狼のほうを向いて、
「狼がしゃべったぁぁぁ!!」
「キュイィィィィ!!」
と驚きの声をあげた。
そして少したってから、落ち着いた二人に、
「落ち着いたか」
「え、ええ」
「キュウウウ」
「そうか…単刀直入に聞くが…お前たちはなんだ?」
なんだか声が出し辛い。300年人と話さなかった性か?
「なんだとは、種族のことですか?」
「僕は精霊です。」
「ウキュウゥゥクキュキュ」
(この二人はなにか特殊な感じがするが)
不思議な感覚を感じつつ
「精霊と竜か、。……そこの竜……しゃべれ……ない……なら、……念話で……話せる……ように……するが」
「キュイ!」
こくりとうなずく。いいらしい。
僕は竜に魔法を発動した。うっすら竜が光って、その光はすぐに消えた。
「言いたいことを…頭に…思い浮かべて……話したいと……思え。……そうすれば……伝わる」
「キュイ!!」
<これでいいのか?>
「……ああ」
<おぉ~~~!!すっげぇー!>
その様子を見ていた精霊の子は驚きながら、
「あの、そんなこと軽々できるあなたこそ何者なんでしょうか?」
少し悩む。
(……名前をそのまま呼ばれるのはなんだかいやだな。……短いほうがいいか、けどフェンはそのまますぎるし……フェイでいいか。)
前世の世界で、神話に出てくるような狼と同じ名前というのも、なんだか自分には合わない感じがするし。
「神狼……フェンリルだ。……フェイで……いい」
「神狼ですか。それなら納得です。自己紹介が遅れましたね。僕は精霊王シェリトゥスです」
<俺は竜王ドラグレイだ!!レイでいいぜ!>
「精霊王……竜王」
(やはり普通の精霊と竜じゃなかったのか……)
「お前たち……生まれた……ばかりに……しては……成長しすぎて……ないか?」
「それは、僕たちが世界の調和者の一人だからです。調和者は必要な知識をある程度もって生まれると、僕の記憶にあります。調和者といっても、生まれたばかりなので身体は幼いですが、知識があるため精神年齢が高くなってしまったようですね」
「世界の調和者?」
「調和者は、世界が滅びたりしないように、ある程度力の調整をしたりする者のことです。といっても、世界崩壊の危機なんて、起きること自体殆どないですが。基本的には、世界のマナの調整などが、主な役目みたいです」
シェリトゥスは、舌っ足らずではあるが、きちんと説明をしてくれている。レイの方も、子供らしい感じはするが、生まれたばかりとは思えないくらいだ。
(なるほど……だから普通の生き物より早く生まれたのか)
「そこにいるレイも竜王ということは、僕と同じ世界の調和者です。そして神狼のあなたもです」
(俺もか。なんだか納得いくな……神狼って種族だし、普通の狼ではないと最初から思っていたからな。)
「そうか……知識は……どの程度……あるんだ?」
「それほど多くはないですが、世界のマナの調節の仕方とか、この世界で使われる言語とかですけど、あなたも調和者なら知っているはずでは?」
「お前の……ように……最初から……あるわけ……ではなく、……きっかけが……あると……知識が……湧いて……くる」
「そうなんですか。レイはどうなんですか?」
<俺か?俺はシェリトゥスと同じだぜ>
「ということは、生まれた時間でしょうか。フェイさんは、僕達より300年ほど早く生まれてますし」
「知識以外にも…違うところが……ある。身体も……生まれたとき……から、……ある……程度……大きかった。……幼くは……なかったな」
「そうですか。色々と僕たちと違うところがあるようですね」
シェリトゥスは、少しだけ考えた後に、
「お願いがあるのですが、300年生きたのですから色々と知識をお持ちでしょう。できれば僕たちに色々教えてくれませんか?」
<俺勉強はいやだぞ……>
嫌そうな顔している。ドラゴンにも表情があるとは思わなかった。
「まぁまぁ、あなたが興味を引くような面白いこともご存じかもしれませんよ?」
<面白いこと?>
「ええ、だから一緒に教わりましょうよ」
<それなら教わって見るか!>
「というわけで、宜しいでしょうか?」
「別にいいが。……お前たちが……欲する知識を……知ってるかは……分からないぞ」
「なぜか、今はあなたについて行った方が良い感じがするんです。なんとなくですけど、あなたは私たちに足りない知識を確実に持っていると思います。それに私たちの今ある知識は、かなり穴だらけな感じもしますし」
<あ!俺もそんな感じするぜ!あんたについて行った方が良い予感がする。>
(……予感……二人とも同じ様に感じているみたいだ。……しかし……俺なんかで良いんだろうか?……人にものを教えた事とかないんだが)
「そうか」
「あっ!これから教えを請うのですし、名前で呼ぶのもなんですから、あなたのことを師匠と呼びます!」
<じゃ、俺も師匠って呼ぶな!>
(師匠か、……俺、ちゃんと教えられるんだろうか……)
「好きに……呼ぶといい」
棲家に帰るか。と思ったところで二人に質問する。
「棲家に……帰るが、……お前ら……飛べるか?」
「済みません、まだ空を飛ぶ方法は知りません。」
<俺も、まだ羽が丈夫じゃないから飛べねー!>
首を振りながら二人は答えた。
「仕方ない……乗れ」
伏せて二人が乗りやすいようにする。レイが乗りずらそうだったので、シェリトゥスが手伝いながら何とか乗ると、何かに気づいた。
<「ふ……ふかふかだー!!」>
と叫んで毛を触り始めた。
「しっかり……つかまっとけ!」
そう言って、ふわりと空を駆け、棲家の方へ向かう。背中の二人のために、来る時より速度を落とし、風の魔法で二人を風から守った。
背中から下を覗き込みながら、二人は好奇心旺盛に目を輝かせつつ風景を見て、<「うわぁー!」>とか言いながらはしゃいでいる。
その声を聞いて、少し微笑ましく思いながら、
(……久しぶりにたくさんしゃべったから疲れたな……だがこの二人の面倒見るのも悪くはないような気がするな……)
(それにしても、300年の間にずいぶんとコミュニケーション能力が無くなったな……もともと無かったのに、さらに無くなるとは……)
300年間、話し相手もいない静かな森で過ごしていたため、にぎやかになることを嬉しく思う。
そしてゆっくり棲家へ帰った。
ようやく主人公以外の登場人物が出てきました。
強引に次の章に移ってしまった気がします。もっとうまいつなぎ方を書けたらとも思いますが今現在これが精一杯です。今後修正する可能性大
この章から少しづつほのぼのとしていけばなぁと思っています。
では最後に
誤字・脱字・感想・アドバイス等してくれると助かります。