初級魔法と刀
今回早めに投稿しようと少し焦って書いたので変な所があるかもしれません。
僕は最初にいた洞窟を、完全に棲家にすることにした。
そこを拠点に魔法研究をやっていこうと思う。
昨日森を散策している途中で引き出した知識や魔法を試すために、僕は今日棲家の洞窟から右側に広がる草原に行こうと思っていた。
(今日は草原に行って魔法を使おうと思っていたんだっけ……魔法か……楽しみだな。どんなことができるんだろう?)
(早く魔法試して見たいし、早速草原に行くか)
僕は洞窟の入り口から飛び降り、空気を蹴って空を駆けながら草原へと向かった。
僕は森の端、草原の入り口に静かに降りた。
草原を見渡すと草しか見えなかった。岩などの障害物は一切なく、ただただ草しか見えなかった。
(本当に広い草原だな……ん?なんだか身体がそわそわする。無性に身体を動かしたい衝動が……)
そわそわする感情の性か、尻尾が少し揺れている。
(……これはあれか……犬かが広い所に出ると、走りたがったりするような、そんな感情か……)
(……ここで耐えているのも意味無いし、習性と思って本能に従いますか)
と、言い訳みたいなこと考えつつ、僕は走りたい衝動に身を任せた。
僕は、元人間だけど人であることに固執してないし、最初の日に狼であることを受け入れていたので、自分の獣的な衝動や行動に対して嫌悪感はなかった。
最初に狼になったことに驚きはしたものの、すぐに受け入れることができたので、本当に自分は元人間かと思うことはあった。人であった頃の記憶は元々少なかったから、狼であることを受け入れられたのかもしれない。
今は、人だった頃の記憶は少しずつ薄れつつある。
そのことに恐怖も覚えない。
人だった時の僕は、死ぬ間際、未練は無かったのだろうか?
未練はあった感じがしないから、無かったのかもな……
とにかく僕は狼として、神狼として、この世界で生きていくことにした。
僕は草原を気持ち良く走っていた。
(……空を駆けている時と違う感じだな……しっかりと地面を踏む感触、空を駆けている時より濃厚な草や地面の匂い。どちらにしても走るのがこんなに楽しいなんて)
走ることが本当に楽しい。このままずっと日が暮れるまで走りたかったが、流石に前回と同じ過ちは犯さない。
(さてと、名残惜しいが、また来れば良いのだし、今回は試そうとしていたこと試さなきゃな)
魔法を森で使わない理由は、障害物が多すぎるのと、火属性魔法で木を燃やす可能性がないとも言えなかったからだ。
そしてここら辺で、安全に魔法の試し撃ちができそうなとこは、草原くらいだった。できれば荒野とか海が近くにあれば良かったのだが、空を駆けて上から見ても、周りは山と森と草原くらいしかなかった。
(さて、呪文を一言だけ唱えてみてできるか試して見よう。あれ?この身体、しゃべれたっけ?……そういえば、最初の遠吠えしか声を出してなかったな…無詠唱でもできないことはないらしいが、最初からは難しいだろうし……まあ声を出してみるか)
魔力に集中しつつ、目の前に魔法が出ることをイメージして、呪文を唱えてみる。
「火よ」
呪文を唱えると、目の前に十センチ位の火の玉が出た。
(……声を出せた。それに魔法できた!こんなファンタジーなことができる日が来るとは……)
続けて魔法を発動してみる。
「水よ」
ジュワっと音をた立てて、目の前の火が消え、水蒸気が集まり、水の玉ができる。
そして、さらに続けて魔法を発動させる。
「氷よ、土よ、風よ、光よ、闇よ、雷よ」
水の玉は凍り、氷の下から土が突き出て氷を壊し、風が土を吹き飛ばし、さらに光の玉ができたら、今度は闇が光を覆って消滅し、最後に小さな雷が落ちた。
(…思ったよりあっさりできてしまった。まぁ魔法の難易度があるのだったら、初級魔法ってとこかな、中級、上級とランク分けしといた方が後々便利かも……大体の基本属性はできるみたいだな……できれば無詠唱でできるようになりたい所だ……後は特殊属性か……)
(特殊属性って言っても、イメージが湧きにくいのが多いな。名前的に凄そうなのが多そうだけど、今の僕にはできるかどうか……まぁやって見ますか)
そう思い、僕は特殊魔法で一番イメージの湧き易そうな『創造』の魔法を使ってみることにした。
(創造か…何かを作る魔法だろうけど……何を作ろうか?……ファンタジーな世界だし剣とか?……剣にしても何を作るか?……元日本人って事で刀とか……剣を使えるなら、刀使ってみたいし。狼だけど……)
(よし、じゃあもう刀でいいや、早速作ろう)
目を瞑って集中し、刀を頭に思い浮かべる。博物館などで何度か見たことがあるし、大丈夫だろう。
「創造・刀」
と呪文を唱える。他に思いつかなかったし、イメージはできるだろうから多分大丈夫。
自分の目の前に光が集まり細長く伸びていく、自分の使い易いような刀が出てくるようにイメージを強く思い浮かべた。
光が一瞬大きくなったと思ったら、次第に小さくなり、造り出されたものが姿を現し始める。
柄から少しずつ見え始め、刀身が全て出てきた。
出てきた刀は、自分に合わせてとても大きなもので、くわえ易いように柄が少し長めだ。それ以上に、刀身が身体の大きさに合わせて造られたのか、すごく長い。
柄は蒼い。
反りは少なく刀の種類でいえば打刀だろうか。
刀身は白銀に輝き魔力を放っていた。
僕自身が作った刀だが、思わず見惚れてしまっていた。
とても美しい刀だった。
我に返った僕は
(これが……僕が造った刀?こんなにきれいな物が……それに魔力も放っているし……魔剣?いや、魔剣てなんか悪いイメージだし、これはなんだか正反対の魔力のような……聖剣?)
(自分で作ったとは思えないな……けどきれいなだけで、切れ味が無かったら観賞用になってしまうな。観賞用でも十分なほどきれいだけど……まぁ試し切りするかな……)
そう思い刀をくわえて、試し切りに良さそうな物を探す。
草原の端まで来たが、ようやく大きな岩があるだけだった。
(これはもう、この岩で試し切りしろと言う事か……)
他に何もないし、岩の向こう側は岩山になっていた。木などは近くに生えていないようだ。
(刃こぼれしたり、折れたりしても、魔法で直せば、それで魔法の練習にもなるし、これで試そう)
そう思いつつも、やっぱり刃こぼれや折れたりするのがいやだったので、軽く刀を振るった。
すると数秒してから、岩がずれ始め、ずううぅぅぅんという音をたてて地面に落ちた。
(何これ、怖い……)
何かがおかしかった。岩にはじかれると思ったのに、刃がするリと岩に入っていったのである。
何かを斬った感触は無かった。
恐る恐る岩に近づいてみると、きれいに斬られていた。前足でぷにぷにと肉球を当てて、斬られた断面を触るとつるつるとしていた。
岩の向こうを見ると、岩山にも岩と同じ角度で線が入っていた。
(切れ味良過ぎだ……いや切れ味って問題じゃない気が。岩山まで斬れているし……とりあえず鞘作って厳重に保管だな)
さっきと同じ要領で鞘を作る。
刀と同じように魔力を放つ黒い鞘で、下緒(鞘についてる紐)は朱色だった。
(鞘もきれいなのができたな。やはり、見た目以上に頑丈なんだろうな…)
と思いつつも、ふと気づく。
(鞘に収めるにしても、この姿じゃ使いづらいな……人の姿になる魔法ができないかな?……人化の術みたいな……まぁやって見るか)
物は試しにやって見ることにした。
(人だった頃の姿は思い出せないからな……まぁ容姿なんてどうでもいいか、自分に一番合う姿と思って、人の形を思い浮かべればできるだろう……多分)
(変身して裸はさすがにいやだから、適当にこの世界に合う服と、イメージしとくか)
そうして集中し始める。
徐々に体が光り始め、少しずつ体が変わっていくのを感じた。
変化が終わると同時に光は弱くなり消えた。
そして、そこには狼ではなく人がいた。
白い服を着て、腰のところを青い腰紐で留めて、黒いズボンを穿いている。狼の時の毛と同じ色の一房の後髪を、膝まで伸ばした、つり目気味の金色の眼をした17か18歳くらいの青年がいた。
(成功した?)
自分の身体が、ちゃんと変わっているか、見たり触ったりして。
(狼の耳や尻尾とかを残した、中途半端な変身じゃなくて良かった…)
と、ほっとした。
(とりあえず、ちゃんとした姿の確認は、明日にでも泉に行って見てみるか。今はまず刀を鞘に納めないとな)
慎重に刀を鞘に納めて考える。
(棲家に保管するのもなぁ…何が起こるかわからないし、危ないよな。…魔法でしまう場所を作れるかな?たしか空間って属性があったし、やって見ようか)
広く黒い空間で物を収納でき、なおかつ呼び出すと収納されている物が出てくるような、出し入れのしやすい便利なものをイメージして、
「空間・収納」
と呪文を言うと、目の前に黒い空間が出現した。
試しに刀をちょっと入れてから、出す。
何も起こらなかった。
(大丈夫そうかな?)
と思い、刀を入れて、一度空間を消す。
その後で刀を呼び出す。
「刀よ」
すうっと、地面より少し上の空中が歪み、刀が音も立てずに出てくる。
(成功した!便利だな、この魔法)
また出した刀を、何も無い空中に、あの空間に入るように念じながら動かすと、刀はずぶずぶと空中に消え始め、そして完全に消えた。
(さて、今日はこの辺で帰るかな、色々試せたし草原も走れたし)
僕は元の姿に戻り、満足そうに尻尾を少し揺らしながら、空を駆けて棲家に帰った。
色々説明したいことが多く1章はプロローグのようなものに…まだ説明?のための寄り道は続きそうです。2章はまで今の時点で2~3話続きます。増える可能性ありですが。
では誤字・脱字等のお知らせ、感想・アドバイス等お待ちしております。