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決着。

「!?」


 俺の突然の変化に栞が目を見開く。俺の全身を走る赤い紋章に視線が行った。俺は地面を思い切り蹴りつけ、栞に向かって跳ぶ。ロケットの様に栞に一直線に突っ込んでいき、太刀を叩きつける。

 流石と言うべきか、栞は隙を突いたその一撃を辛うじて受け止めた。だが、俺は刃を受け止めたバスタードソードごと、栞を後ろに吹き飛ばす。


「っ!?」


 栞が体勢を立て直す前に、次の攻撃を叩きこむ。太刀がバスタードソードにぶつかり、甲高い音を立てながら火花を散らす。蹌踉めく栞に連続で斬り付ける。

 栞はバスタードソードで防ごうとするが受けきれず、HPが少しずつ削れていく。今まで躱され、弾かれていた攻撃が入り始めている。

 俺の突然のパワーアップに栞はまだ対応出来ていない。勝負を付けるなら、【赤き紋章】に戸惑っている今しかない。


「っ」


 栞が俺の太刀を躱した。いや、躱しきれずに刃が掠めたが、栞は構わずに体勢を立て直した。そしてスキルを発動して連続で突きを放ってくる。突きを躱すには近すぎる間合いだった。

 光を纏った剣先が高速で向かってくるのを、しかし、俺は身体を少し動かして躱す。栞の突きはシステムのアシストによって当然、突きは速くなっているが、それだけではない。栞の持つ実力がスキルに合わさり、より速く、そして重くなっている。虚空の突きなんて話にならないほどだ。

 三発、四発、と栞の突きが続く。しかし、俺はそれを全てギリギリの所で躱していく。突きが放たれるのを待っていては間に合わない。どこに来るのかを予想し、突きが来る前に既に移動する。今までの戦いで栞の動きは大体分かったし、それが無くたって俺と栞は兄妹だ。あいつの動きは読める。まあそれでも【赤き紋章】が無ければ避ける事はできなかったと思うが。

 六発目を回避した辺りで栞の表情に焦りが滲み始めた。俺の直ぐ横を通り過ぎる刃を感じながら、次に突きが来る場所を読んで動く。

 そして、十発目。

 肩を掠る刃にヒヤリとしながら、バスタードソードを突き出した状態で動きを止めた栞に向かってお返しに突きを打ち込む。太刀が右肩のシールドに突き刺さり、激しい音を立てる。栞のHPが大きく削れてオレンジ色に染まった。

 

「くッ!」


 栞は苦悶の声を漏らしながら、太刀の間合いから《ステップ》で抜けた。息を荒くして肩を上下させる栞。

 終わりが近付いてきている。

 栞もそう感じたのか、バスタードソードを握る力を強くし、呼吸を整えた。

 


 行くぜ、栞。


 

 俺と太刀と栞のバスタードソードが銀色の光に包まれる。



 《オーバーレイスラッシュ》。


 流星の様に煌めく刃が連続でぶつかり合い、銀色の光を周囲に激しく撒き散らす。現在発見されているオーバーレイ系最強と言われる銀色の光を纏った刃が交差する度、周囲に激しい衝撃を撒き散らす。俺達の周りには銀色の粒子が舞っており、どこか幻想的な雰囲気を出している。

 システムアシストで加速した腕を操り、栞に太刀を叩きつける。ほぼ同時に発動した《オーバーレイスラッシュ》だったが、僅かに俺の方が速く刃を振るっていた。左斜め上から振り下ろされる刃を、栞はバスタードソードで撃ち落とす形になる。タイミングをズラしながら左右斜めから振る太刀を正確に撃ち落としていく栞だったが、少しずつ後ろに後退っている。それだけではなく、HPは少しずつ減っている筈だ。

 ――――押している!


「おおおおおおおおおおおおおおォォォォッ!!」

 

 更にスピードを上げ、《オーバーレイスラッシュ》を栞に叩きつける。連続する剣戟、そして最後の一撃、太刀とバスタードソードが交差し、そして栞を思い切り後ろに弾き飛ばした。栞は姿勢を低くし、床を滑りながら後ろに下がっていく。

 栞のHPは既に俺と同じレッドゾーンにまで減っている。次の一撃で決めるッ!

 《オーバーレイスラッシュ》で荒れた呼吸を整え、太刀を握り直す。

 前に踏み込もうとした俺より先に動いたのは栞だった。バスタードソードを前に突き出しながら俺に向かって突っ込んでくる。重心が僅かに傾いており、体勢が崩れている。

 終わらせる。

 向かってくる栞に向かって太刀を大きく振りかぶり、そして振り下ろす。栞の刃が俺に届く前に、太刀が栞を上から両断して――――


 太刀が栞を斬り裂く事は無かった。

 刃が栞をすり抜けたからだ。当たったと確信していた俺は太刀を振りきってしまい、刃は地面にぶつかる。そして、太刀がすり抜けた栞からバスタードソードが飛び出してきて俺の胸を貫く。

 

 《幻影》。


 そういえば。

 栞は俺と同じように稀少スキルを持ってたんだっけ。

 


 俺のHPが削られ、そして0になった。

 突きの勢いで後ろに弾き飛ばされ、地面に倒れこむ。身体を起こすと、栞が俺を見下ろしていた。


「私の、勝ちですね」

「ああ。やっぱり強いな、栞。俺の負けだよ」

「…………」

「次、決勝か。頑張れよ」


 俺の身体が緑色の光に包まれていく。勝者よりも先に敗者は転送される様になっている。


「……ッ! 私はッ!」


 俺の視界が緑に染まった瞬間、


「……くない…………ちゃ……ちが……ッ!」


 栞が何かを叫んだが、俺は最後まで聞くことは出来なかった。





 そして決勝戦、《流星》対《震源地》。 


 勝ったのは、俺の妹だった。

後数話でイベント編も終了です。色々グダってしまいましたが、次章からはしばらくまったりするかもしれません。

イベント後の暁やリンの生活、《不滅龍》やガロンとの絡み、そしてエリアの攻略などを書く予定です。

そして何事も無いようで、全ては水面下で動き始めている。《目目目》《屍喰らい》《運営》。


これも予定ですが、登場人物やモンスターなどをまとめた物を投稿するかもしれません。


全部予定ですいません。

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― 新着の感想 ―
自分の出来ることは相手も出来る。 ましてやゲーム。唯一なんてあり得ない。 出来ないはず、なんて思考は甘過ぎる。
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