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久々の更新なのに短いです。すいません。忙しくてなかなか小説を書いている暇がありませんでした。次は出来るだけ多めにしたいと思います。

 カタナと別れ自分の控え室に戻ると、丁度自分の前の試合が終わり、二人のプレイヤーが消えていく所だった。確か《照らす光》のギルドマスター《流星》が出ていた筈だ。この勝負を勝ち上がれば戦う相手だから《流星》とやらの実力を見てみたい所だったが、まあ仕方ないだろう。ドクトルペッパーの話となれば盛り上がらずを得まい。ふぅはは。

 そうしている内に俺の身体が緑色の光に包まれ始めた。フィールドへの転送が始まった。

 さて、今回の試合には一応勝算はあるんだが上手くいくかな。



 準々決勝ともなれば当たる相手も相当の実力者。事前に情報を得ているとはいえ全く油断は出来ない。そして今回の相手は油断なんかしていたらあっという間に負けてしまうと言える程の実力者だ。

 《移動城壁パーフェクトウォール》。《不滅龍ウロボロス》のサブマスター。

 俺と同じ位の身長の女性だ。装備しているのは頑丈そうで身動きの取りやすそうな白い鎧、そして左手に構えられている鏡の様に風景を反射している大きな盾と剣。つまり片手剣使いだ。

 彼女が《移動城壁パーフェクトウォール》なんて大仰な二つ名を持っているのは、その左手の盾に起因している。あの盾は装備する事でスキルを得られる装備スキルを持っている。その効果は盾で受け止めた攻撃の半分の威力を徐々に蓄積していき、そのダメージを相手にぶつける事が出来る。恐ろしいスキルだ。スキル無しでも十分な実力を持っている彼女の攻撃を凌ぎながら、盾による攻撃を警戒しなければいけないのだから。だが俺にはこのスキルを無効化し、反撃する方法がある。タイミングさえ間違えなければ、だが。

 《移動城壁パーフェクトウォール》に表示されている名前はルークだ。大会に参加する為に作った名前かもしれないが、取り敢えずはこの名前で呼ぶ事にしよう。

 ルークの視線は俺の頭上に向いている。つまり俺と同じように名前を見ているという事だ。彼女はしばらく俺の頭上を睨んだ後、俺の方を向いた。鋭い視線。ズッシリとしたプレッシャーが身体にのしかかってくる。彼女はまだ何のスキルも使った素振りはない。つまりこの女は睨んでいるだけでここまでのプレッシャーを相手に掛けられると言う事だ。

 ああ……現実にもいたな……。不良のトップになってる奴に睨まれた時もこんな風に視線でプレッシャーを掛けられた。

 勝算があると言ったが、俺はこの女を舐めすぎていたのかもしれない。


 だけど、俺も今までただ何もせずに過ごしてきた訳じゃ無い。俺はあの森で死に物狂いに、必死に生きてきた。ただ家の中でゲームをしていた訳じゃ無いんだ。それに俺にはこいつに、こいつらに言わないといけないことがある。

 身体にのしかかる重圧を振り払い、俺は一歩前に踏み出してルークを睨み返した。するとルークはほう、と関心したような表情を浮かべた。


「私はルークという。《不滅龍ウロボロス)》のサブマスターをやっている。君の名前を聞かせてくれないか」

「暁。無所属の太刀使いをしている」

「暁か。無所属ね……。良かったら私達のギルドに入らないか?」

「断ります。それより俺は《不滅龍ウロボロス》の人間に言いたいことがあって来ました」

「言いたいこと?」


 脳裏に焼き付いたあの光景がフラッシュバックする。

 胸を貫かれたリュウの浮かべた笑みと言葉。

 醜悪な笑みを浮かべた奴ら。

 それらを思い出して胸の中で燃え上がるどす黒い殺意を飲み込み、俺は奴の名前を口にした。

 

「虚空という男を知っていますか」


 その一言で彼女は目を見開く。そして大体の事を悟ったようだった。

 《槍騎士ランスナイト》。《不滅龍ウロボロス》の幹部候補にして二つ名持ち、そして《目目目ブラッディアイ》に所属していた最低な男の名前。あいつの事を思い出すだけで怒りと胸に渦巻くような気持ち悪さを感じる。


「まさか君が虚空君達を……?」

「そうです。そして俺と共にしていた兄妹の兄が奴らに殺されました。殺したのは《目目目ブラッディアイ》の人間だが、奴らは《不滅龍ウロボロス》に潜り込みそこに隠れてPKをしていた」

「……すまなかった」


 ルークはそういうとその場で深く頭を下げてきた。その潔さに拍子抜けしてしまう。だが頭を下げられた所でリュウはもう戻ってこない。

 

「……玖龍には私から直接伝えておく。この大会が終わったらもう一度会ってくれないか。落ち着いた場所でもう一度謝罪させて欲しい」

「……ええ」

「試合が終わってから私の連絡先を君に渡しに行く。本当に済まなかった」

「……じゃあ、取り敢えず勝負を始めましょう。言いたいことはその後でもう一度言わせてもらいます」

「分かった」


 頭を下げていたルークは元の体勢に戻って頷くと装備している剣と盾を持ち直す。俺も背中の太刀を抜いてルークに向けて構える。お互いに向き合い、ピリピリとした殺気がフィールドに充満し始める。勝負開始のタブはとっくに出ていたが、俺達はそれらを無視して話していた為、観客達の不満の声がさっきまで響いていた。だが俺達が向かい合い、武器を構えた途端にそれらは静まり返った。フィールドに広がるのは張り詰めた緊張感。


「それとルークさん。俺に手加減はしなくていいですよ」

「……悪いが言われなくてもそのつもりだよ」


 お互い同時に走りだし、そして二本の刃が重なりあい激しく火花を散らした。

 

《移動城壁》さん女だったんですよ

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