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更新速度をあげると言いつつ、そこまで上がってなくてすいません。夏バテで身体が怠いなーと思ってたら体調を崩してしまってました。

みなさんも夏バテには気を付けてください。

 刃と刃がぶつかり合い、火花を散らしながら高い金属音を響かせる。太刀が剣犬の刃を弾くのと同時に、もう片方の剣が俺に向かって振るわれる。素早く太刀を振ってそれを弾き、そのまま剣犬の身体を斬ろうとするが、二本の剣をクロスさせた状態で防がれてしまう。

 連続する金属音。刃と刃がめまぐるしくぶつかり合い、少しずつお互いのHPを削っていく。刃や防具で防いでもその威力が高ければダメージは喰らうようになっている。

 連続で振られる刃を太刀を斜めに構えて防ぎ、力で強引に弾いて攻撃に繋げるが当たる直前に双剣によって防がれてしまう。

 威力ではこちらが上回っているが、やはり相手は双剣だ。剣が二本あるというのはかなり厄介だ。

 《見切り》や《見切り・改》は肉眼で見るよりも早く相手の攻撃に反応したり、不意打ちを防ぐ為にあるスキルだが、基本的には対モンスター用のスキルだ。剣犬のこの剣の速さでは《見切り・改》を使っても完全に見切ることは出来ない。

 剣で一本を防ぐと、それを避けてもう一本の刃が顔に向かってくる。身体を捻ってそれを回避し、柄を握る力を強めて剣犬を押し、後ろに跳んで体勢を立て直す。剣犬はすぐさま間合いを詰めてきて、剣を叩きつけてくる。

 繰り出される剣犬の双剣による連撃と、俺の一撃がぶつかり合っている。お互いに刃の届く場所に居るため、発動に時間の掛かるスキルは使えない。剣犬なら《双牙・巨獣》、俺なら発動するのに一瞬の溜めがいる《断空》だ。一瞬でも気を抜けば斬られるこの状況でその隙は大きい。

 俺の刃が青く光り、閃光にしか見えない速度で剣犬に襲いかかる。剣犬は恐ろしい反応速度でそれを双剣で防ぐが、俺は容赦なく刃を叩きつけていく。

 四連続攻撃スキル《フォーススラッシュ》。

 連続する四本の青い線が双剣とぶつかり合い、剣犬のHPを削る。そして最後の一撃が叩きこまれた時、剣犬は双剣を弾かれて体勢を崩している。

 勝利を確信し、そこに全力で一撃を叩き込む。


「なん!?」


 そこで剣犬は身体が千切れるんじゃないかと思うくらいに身体を捻り、スレスレの所でそれを避けた。大振りの一撃の後の大きな隙。

 剣犬は半ば倒れる様に俺の方に向かってきた。それを喰らうわけにはいかないので、今の剣犬を参考にして身体を捻って避けようとするが、流石に読まれていたらしい。オレンジ色に光る双剣の一本が完全に躱せない状態の俺に向かってきた。咄嗟に刃で防ぐが受けきれる訳もなく、太刀の刃を滑って俺の脇腹を抉る。抉ると言ってもシールドで防がれているが。

 後ろに吹っ飛ばされ、地面に叩きつけられる。そこを見逃す剣犬ではなく、その状態の俺に向かって素早く接近してくる。


「うおおお」


 俺は強引に立ち上がって後ろに向かって《ステップ》し、地面をゴロゴロと転がってから起き上がり剣犬を迎え撃つ。

 今のはやばかった。死ぬかと思った。

 双剣の連撃を弾いきながら乱れた呼吸を落ち着かせ、意識を鋭くする。

 《ブラッディフォレスト》を思い出せ。森の中を移動する時、周囲に極限まで意識を張り巡らしていた、あの感覚を。

 



 繰り返される剣戟によりHPが徐々に削られていき、遂にお互いにオレンジまで減っていた。剣犬の雰囲気から、そろそろ大技で決着をつけに来る筈だ。俺は反応できるように後ろに下がり、警戒を強める。この間合ならば攻撃を避けきる自信がある。

 そして剣犬が仕掛けてきた。

 姿勢を低くし、双剣を振り上げながら間合いを詰めてくる。

 剣犬が繰り出してきたのは連続攻撃だった。

 威力の高い一撃で勝負を決めに来ると予想していた俺に、しまったという隙も無く刃が襲い掛かってくる。

 恐ろしい速度で振られる双剣。襲い掛かってくる二本の剣は僅かにタイミングが違っていて、どちらかを防いでいたらもう片方に斬られてしまう。だから俺に残された道は防ぐのではなく、躱すことだ。

 目を見開き、二本の刃を見ることだけに集中する。まるで世界がスローモーションになっている様な感覚を覚えながら一本目を躱し、もう一本も躱す。だが攻撃は終わらない。最初に避けた一本が既に俺に向かって振り下ろされている。

 時間が引き伸ばされているような感覚の中、向かってくる刃をただひたすらに躱す。呼吸を忘れ、視界にあるのは二本の刃のみ。それ以外は意識の中から完全に排除されている。かわしきれずに刃が肩や首を抉るが、それを無視して次の一撃を避けることだけに全力を注ぐ。

 どうやら十連続で斬り付けるスキルだったようだ。

 永遠にも思える時間が終わり、振られた一撃で剣犬の動きが止まった。俺のHPはギリギリ、本当にギリギリでオレンジに留まっていた。

 剣犬は驚愕に目を見開いていた。この間合ならば、どれだけ反応速度がが速くても避けられることはない。俺は一歩踏み出し、剣犬の心臓に刃を思い切り突き刺した。もちろんシールドによって阻まれているが、奥へ奥へと刃を押しこむ。

 そして、ようやく剣犬のHPが0になり勝負が決した。


「ありがとうございました」


 剣犬はさわやかな笑みを浮かべながら、転送されて消えていった。

 俺は何も言うことが出来ず、倒れないように太刀でバランスを取って控え室に転送されるのを待った。


――――――――――――


「あー死ぬかと思った」


 控え室に戻ってきた俺は、ドクトルペッパーを飲みながら燃え尽きていた。真っ白にな。

 最後のあの攻撃を躱すのにかなり集中力を使ったからなのが、暫くの間ガンガンと頭痛がして怠かった。

 頭痛がしている間は対戦の様子を見るきになれなかったが、収まったので二本目のドクトルペッパーを飲みながら画面を見てみる。


「え……何だコイツ?」


 画面には、顔に包帯を巻いた男が俺と同じように太刀を使い、らーさんのHPを0にしている所だった。

 

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