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《Blade Online》  作者: 夜之兎/羽咲うさぎ
―Bloody Forest―
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12

 宙に浮いた大量のスクリーンが暗い部屋を照らしていた。画面にはプレイヤーやモンスター、街やエリアの様子が映し出されている。

 スクリーンの前には椅子と机が置いてあり、何十人もの人がスクリーンを見ながら手元のキーボードをカタカタと打っていた。

 スクリーンの一つに熊に押しつぶされる暁が映し出されていた。それを眺めていた男はククッと子供のように顔を崩し、笑みを浮かべる。手元のキーボードを打つ様子はない。男は三十代前半ぐらいの容姿をしている。


「おい浦辺」


 隣に座っていた女が顔を顰めながらスクリーンに見入っていた男に声を掛ける。浦辺は面倒臭そうに女の方を向いた。


「スクリーンを見ているだけじゃなくてちゃんと仕事をしろ」

「分かってる。今はやることがないから見てるだけだ。朝倉こそキチンと仕事してろ」


 浦辺は不機嫌そうにそう言うと再びスクリーンを覗く。その様子が頭に来たのか、朝倉と呼ばれた女は浦辺の太い腕を掴んだ。そのままグイッと引っ張って引き寄せる。浦辺は「んだよ」と朝倉の手を振り払う。


「ちゃんと仕事をしろ。万が一の事を考えろ。分かっているのか? “あの場”で不用意に太刀を貶すしバグを起こしてプレイヤーを隠しエリアに引きずり込むし、お前は何がしたいんだ? お前がここを任されていなければ、拘束してボスモンスターの前に放り出している所だ」


 浦辺はこいつ何を言ってるんだ? といった顔をした後何かに納得したのか大きく頷いた。それからニヤリと厳つい顔を笑みの形にする。それを見た朝倉は顔を歪めた。


「この退屈な仕事の中に少しくらい娯楽を混ぜたって罰は当たらないだろう? 俺はな、昔から、みんなに仲間はずれにされていた主人公が無双する小説とか、弱いと言われていた武器は実は強かったみたいな小説が好きなんだ。そういう系の小説を良く読むし自分でも書いてた。だから武器の中でずば抜けた所が無い太刀を貶してやったのさ。それにあの場はあの人も見ていたんだろ? 俺が台本に書かれていない事を言っても何のお咎めもなかったんだから良いじゃねえか。」

「訳が分からん。滅茶苦茶だ……。餓鬼じゃあるまいし……。それなら攻略WIKIに太刀をハズレ武器だと書いたときの様に、プレイヤーのための掲示板で太刀は弱い弱いと書き込めば良かったじゃないか。……プレイヤーの大半は混乱して真に受けていたが違和感を感じた者も少なくないはずだ。何も言われなかったとしても、やって良いことと悪いことがある」

「分かってねえなあ。それじゃ即効性がないだろうが。俺が見たいのは仲間はずれにされて仕方なくソロに行った主人公が帰ってきてみんなを見返すって言うシチュエーションなんだよ! 他の太刀使いはすぐ死んだり、引き籠もったり、何だかんだでパーティーに入れたりと思い通りにならんかったが、こいつは今のところ俺の求めたシチュエーションを突き進んでる。だから何か起きても俺が責任取るから口出しするな、朝倉彩花あさくらあやか副管理人さんよ」

「そのためにその暁とか言うプレイヤーを……。……取り敢えず、あまりゲームのバランスを崩すような事はしないでくれ。浦辺健正うらべけんせい管理人さん」


 朝倉は頭痛を堪えるように頭を押さえた後、再び自分の前にあるスクリーンを見ながらキーボードを叩き始めた。


「へいへい」


 浦辺は適当に返事を返し、スクリーンを見ることを再開した。四角いスクリーンの中に移る暁は緑色に輝く門のような物を潜り、《ブラッディフォレスト》から姿を消した。


「へえ……行き先はそこにしたのか」


 浦辺は再び顔を笑みの形に崩した。

 



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男主人公に男ストーカーがついた! ………キモ!
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